第39話 七日目の朝

 苦手分野と得意分野の練習を、模擬戦でおこなうヤヨイ組。

 たまにやってくる挑戦者は、返り討ちにした。

 夕方になる。

 色の混じり合った服のシララが帰っていくのを、笑顔で見送る四人。柔らかな白色の建物に戻った。

 あかい服のヤヨイは、深緑ふかみどりの服のカケルを見つめる。茶色の床と白い壁に囲まれ、銀の道具でいつもの料理練習。

 食事のあとで、ふたたび広場へ移動する。

 だいだいの服のスズネと、こんの服のタクミも合流。模擬戦をおこなう。しばらくして、全員で歯磨きに戻る。

 さらに、暗くなるまで模擬戦が繰り広げられ、おおぜいの観客が色々な声援をおくる。

 おなじみの光景だ。

みんな、Aになったし、明日は挑戦者多いぞ、きっと」

 うれしそうに左手を握りしめるタクミ。ほかの三人は、微妙な反応。おやすみを言い合う。

 自分の部屋に入る四人。

 寝支度をすませ、ベッドで横になったヤヨイは、穏やかな笑顔。

 色のついた夢を見た。


 ヤヨイが師匠の家を旅立ってから、7日目の朝。

 薄暗い広場で、少年少女が日課の運動をしていた。

 柔軟体操と筋肉トレーニングをこなし、拳法の型をおこなう。明るくなってきた。

 ヤヨイの故郷にいる師匠へと、お礼を言うことを忘れない。

 二人は、カケルの部屋に向かう。

 和風の朝食を作り、はしで食べる。

 ヤヨイが自分の部屋に戻る。服を着替えて、洗濯物を機械に放り込んで、部屋から出る二人。

 静かな朝だった。観客もいない。

「来ないな、挑戦者」

「まだ早いわよ」

 タクミとスズネは、雑談しながら光の棒で激しい戦いを繰り広げている。

 武器の形を維持できなかったのが、遠い昔のことのようだ。

 二人のあとで模擬戦をする、ヤヨイとカケル。

 通常弾での戦いに慣れていた。カケルが苦戦している料理の上達速度とは、雲泥うんでいの差。

 戦いのあとで、全員が自室に戻る。歯磨きのため。

 白い建物から出る四人。

 緑の広場に、青がたたずんでいた。


「七日目の朝だね」

「アイムさん、おはようございます」

 言葉の意味が理解できず、ヤヨイは挨拶した。十代後半の少女は、嬉しそうな顔。

「忘れちゃったの? 師匠の家を出てから」

「そうだったんですね」

 ヤヨイは、すっかり忘れていた。基本的に年上には丁寧な言葉遣い。

「おい、待てよ。なんで知ってるんだよ、お前」

「ちょっと。やめなさいよ」

 タクミは、何かが気に入らないらしい。スズネは慌てている。二人ともアイムと歳が近い。

「まさか、あなたがコツゴモリなんですか?」

 カケルが聞いた。アイムは、すこし驚いた様子を見せて、笑う。

「知りたかったら、私を倒してね」

「最近、よく言われます。そういうの」

 おさげのアイムが宣言した内容に、ヤヨイは既視感きしかんを覚えた。

 タクミは、やっちまえよ、とは言わなかった。代わりに、カケルが口を開く。

「力を隠すことができるんですか? あなたは」

「強いと、びっくりされちゃうでしょ?」

「ほかにも、こんな奴がいたかもしれない、ってことか。口には気を付けたほうがいいな」

 アイムの力を感じ取った長身の少年は、態度が変わっていた。

「そうね。口の悪さを直しなさいよ」

 スズネは普段どおりである。

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