第38話 天使の笑顔
ヤヨイ組が負けた。
情報はすぐに広がった。
しかし、模擬戦の様子を見てなお挑んでくるチームは、少ない。
ヤヨイたちは、それぞれが苦手とする分野で受けて立つ。挑んだチームは対処できず、
「結構、強くなった気がするぞ、俺」
「気のせいでしょ」
タクミは自信をつけた様子。スズネは懐疑的。
「少し早い気もするけど、またランク付けいってみる?」
「私は、まだ無理だと思うから、いかない」
カケルが提案し、ヤヨイが即答。深く考えていないようだ。
ヤヨイをのぞいた三人が、ランク付けの予約をする。
決定が早い。街の中心部にある、
ガラス張りの大きな建物内のロビー。受付で料金を支払い、高級な椅子で待つ三人。
入り口に気配を感じて、同時に振り返る。
誰もいない。
窓のそとには、銀髪ショートヘアの少女が歩いている。
カケルも、スズネも、タクミも、その人物を注目していない。窓の外の、色々な人々を見ている。
三人が顔を見合わせて、何かを話した。
その後、ランク付けが行われた。
ランク付けに行かなかったヤヨイは、暇だった。
一人では模擬戦もおこなえない。
しかし、することがないので広場にいた。白い建物を背に座りこむ。
「誰か来て!」
ヤヨイは願った。
祈りも
「こんにちは」
シララが立っていた。
広場のそばに並んで座る、ヤヨイとシララ。
色々な話をした。そのあいだも、戦いに来る者はいなかった。
「部屋に行ってもいいけど、何もないんだよね」
「彼氏と一緒の部屋なの?」
「何のこと? 一人だよ」
「なんでもない」
シララが、すこし赤くなってうつむいた。ヤヨイは不思議そうな顔をしている。
再び雑談していると、挑戦者が現れた。
ロングヘアを揺らす少女。
相手に相性のいい能力は使わず、実力で
シララが嬉しそうな顔をして、ヤヨイも微笑む。さらに雑談していると、ようやく三人が戻ってきた。
誰も、ランクを先に言わない。
「やったぜ」
「やったわ」
「そうだね」
タクミとスズネは、心の底から嬉しそうにしている。カケルは普段どおりだ。
「こんにちは」
挨拶したシララ。いつもどおり、スズネに抱き締められた。
「どうだった?」
ヤヨイが、緊張した様子で聞いた。胸の前で手をにぎっている。
「A」
「A」
「A」
三人が答えて、ヤヨイが笑う。シララも、つられて微笑んだ。
「Aの上に、AAやAAAがあるってさ」
「ふーん」
カケルの言葉に興味がない様子のヤヨイ。
「もうちょっとで、いける気がするぜ」
「気のせいよ」
タクミとスズネは別の意見を述べた。
「次が見えてきたところで、いつものいっとくか」
「見えたの?」
光のドームが広がり、精神体に分離。長身の少年とミドルヘアの少女は、光の棒を使って模擬戦を始める。
「凄いよ、みんな。僕も負けてられないな」
「うん。わたしも頑張る」
並んで模擬戦を見る少年と少女を、シララが見つめていた。
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