第35話 ヤヨイ対レオン

「あ。格好かっこういい人」

「俺が格好良くないみたいに聞こえるから、やめろ」

 模擬戦が終わって呟く、スズネとタクミ。

 レオンとエミリに近付いて挨拶した。

 能力バトルをすると言うヤヨイ。力が回復していないことは明らか。

「一時間ぐらいしか経ってないだろ。俺の力を使え」

 タクミが、ヤヨイの手を握る。

 何が起こっているのかは、カケルが説明した。

「申請すればいいのにね」

「本人が決めることだから、強要するなよ」

 美しい姿態のエミリに対して、優しくさとすレオン。細身ながら、いい体つき。

 すぐに、ヤヨイがタクミから手を離す。

「もう全快? 全部吸ってもいいのに」

 明るい雰囲気のスズネは、ひどいことを言った。


 ヤヨイとレオンが、能力バトルを開始する。

 広がる円形のドーム。二人が精神体に分離して、広場のまんなかへ向かう。

 むかい合う、白と濃い黄色。

 前回、スズネと連携して倒した相手。しかし、ヤヨイに恐れはなかった。

 レオンが短剣をにぎり、すこし背の低いヤヨイが剣をにぎる。

 身体からだのあちこちから光が噴射。

 精神体の二人は、不規則な動きをしながら、刃を交える。

 ほとばしる光が推進力として作用し、肉体では不可能な動きをする。高速で動いても、ロングヘアやスカートは風の影響を受けない。

 レオンは全力を出していた。機敏に駆けめぐる。半径、約50メートルの広場がせまく感じられるほどに。

 力の節約を考えていない。

 高速移動は力の消費が激しいため、防御に徹していれば相手の自滅を狙える。

 が、ヤヨイは、相手と同じく全力を出す。

 濃い黄色の服ごしに躍動する筋肉。レオンが戦いながら笑うのを、ヤヨイは見た。

 白い服の少女も、笑っていた。

 お互いに、大きなダメージを与えられない。高速移動をつづける二人は、どんどん力を消費していく。

 互角に見えた。

 そして、先にゲージがからになったのはレオン。

 肉体に戻ったヤヨイは、納得いかないような表情。相手にお礼を言った。

「回復してあげる。全員でバトルしようね」

 エミリが提案して、3対3に分かれる。ふたたび精神体に分離。

 レオンとヤヨイのゲージが半分ほど回復して、エミリのゲージが半分ほど減る。

 エミリたちが降参。広い戦闘空間が消えた。

 タクミは感心している。

「うーん。吸収きゅうしゅうする力も凄いけど、回復能力かいふくのうりょくも凄いな」

「バトルで二人が組めば、無敵じゃない?」

 嬉しそうな顔のスズネ。

「吸収は、バトル中できないでしょ?」

「えーっと、多分」

 カケルの問いに、ヤヨイはあやふやな答えを返す。考えたこともなかった。


 見物人に取り囲まれた、ヤヨイとレオン。

 凄まじい人気で、たくさんのお金を渡される。

 ほかの四人で、雑談が始まった。

 周りの人たちが次の戦いを見せてくれと言ってから、レオンが話し出す。

「そうだった。カイリとコスミから聞いた。強いチームがいるって宣伝してる」

「宣伝?」

 ヤヨイは驚いた。もちろん、頼んでいない。

「いつでもかかっていらっしゃい、だっけ? 凄い自信だったよ」

「なんで、あいつらが偉そうなんだよ」

 エミリの言った宣伝文句に、タクミが突っ込みを入れた。

「誰か模擬戦して、見物人を黙らせましょうよ」

「そういう言い方はどうかと思うけど、僕がやる」

 スズネが模擬戦を提案して、カケルが了承した。

 近接戦闘をはじめる二人。周りの人たちの興味は、そちらに移っていく。

「今まで、何チーム返り討ちにしたの?」

 おっとりとした雰囲気のエミリから、するどい質問。

「返り討ちっていうか、知り合いとしか戦ってないぜ。なあ?」

「どこかに戦いたい人がいても、分からないし、私」

 長身のタクミは、リーダーに聞いた。ヤヨイは、まだ相手の強さを感じ取れない。

 模擬戦のほうはカケル優勢。

 スズネも、以前よりは差を縮めている。

「この町で最強の人物でもないと、挑まないかもしれないな」

「詳しく話してください!」

 冗談のように言ったレオンの言葉に、ヤヨイが食いついた。

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