第26話 模擬戦と心の強さ

 スズネとタクミが模擬戦をしている。

 ヤヨイとカケルは、カイリとコスミの連絡先を教えてもらった。

 そのあと、二人でヤヨイの部屋に入るカケル。靴を脱いだ。

 壁は白を基調としていて、家具は黄土色。木製でフローリングの床には、あまり物は置かれていない。

 料理の勉強をしたカケル。奥義を習得するにはほど遠い腕前を露呈ろていする。

 テーブルに向かい合う二人は、はしで和風の晩ご飯を食べた。

 片付けのあとで再び広場に出る。カイリとコスミはすでに帰っていて、スズネとタクミは自室で食事中。

 ななめからの日差しが辺りを照らす。

「次は剣で模擬戦やろう」

「うん。伸ばさないでよ」

 ヤヨイの言葉にカケルが同意した。戦闘空間が広がっていく。

 光の壁に包まれる二人。白い服のヤヨイと、緑の服のカケルが現れた。緑の広場のまんなかへと向かう。

 戦闘空間が広がるのを止め、剣の戦いが始まった。

 ガードはほとんど使われない。

 剣と、細身の剣がぶつかり合う。真剣な表情だった二人が、いつしか微笑んでいる。

 2回攻撃を与えたあとで、分離が解除されたヤヨイ。赤い服に戻った。

 剣で火花を散らしながら話す。

「そういえば、さ」

「何?」

「あのとき、発条ばねを使えば避けられたよね?」

 ロングヘアをなびかせるヤヨイは、草原でカイリ・コスミと2対2で戦ったときのことを言っていた。

「連携の大切さを、分かってもらおうと思って」

「ありがとう」

 怒られると思っていたカケルは拍子抜けした。なぜか、お礼の言葉が発せられた。

 細身の剣は動揺どうようの色を見せない。

「結果的には良かったけど、あれは、ごめん」

「謝らないといけないのは、わたしだから。気にしないで」

 カケルとヤヨイは、他者を思いやる心の強さを手に入れていた。


 なかなか終わらない模擬戦を見かねて、タクミが声を掛ける。

「歯、磨けよ」

「そんなに時間経ってないでしょ」

 スズネはあきれていた。

 不意打ちの形になり、カケルが勝利する。

「まだ、三十分経ってないよ」

「どうぞどうぞ」

 ヤヨイは広場をゆずった。悔しそうな表情ではない。

 いつもの棒を使った模擬戦が始まり、少女と少年は観戦した。


 歯磨きが終わる。

 そのあとも、模擬戦がおこなわれた。

 徐々に増えてきた、見物人の数。

 スズネがぼやく。

「近接戦闘では、勝てそうにないわね」

「遠距離だと勝てないから、おあいこだよ」

 細身の剣で軽々と棒の軌道をそらしながら、カケルが相手を認めた。

「俺ともやろうぜ」

「分かった」

 次の模擬戦が始まる。

 スズネとタクミは、苦手な接近戦に正面から立ち向かっている。

「よし。遠距離戦しよう」

「基本の弾だけにしてよ」

 戦いが終わったあと、ヤヨイが遠距離戦を望む。カケルが了承した。

 足を止めずに撃ち合う二人。

 基礎練習にもかかわらず、見物人は沸いていた。

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