第四章 切磋琢磨

第23話 能力者のランク

 能力者のうりょくしゃ聖地せいちと呼ばれる町。

 背の高い、四角い建物が立ち並ぶ。

 広場は、まるい形が多い。能力バトル用なのが一目でわかる。

 ヤヨイたちの故郷から海をはさんで東に位置する、10倍以上の面積をほこる国。道は広く、場所に余裕があるため街路樹が多い。

 緑あふれる公園のベンチに、ならんで座る四人。昼下がりの日が差す。

「一番強い人って、どこにいるのかな?」

 すこし前に戦ったばかりのヤヨイは、戦う気満々だ。

 タクミが爽やかに笑う。

「まずはランク付けだ。やらないと見向きもされないぞ」

「説明しないと。知らないでしょ?」

 ランクについて、スズネが説明し始めた。

 一番下がZで、上がA。

 Zは能力がないどころか、触れるだけで相手から精神力をいとる。逆向きにすごい力。現存する人はいない。

 つづいてカケルが説明。一番多いのは、U。普通の人に長時間のバトルは難しい。強さをみがく特訓が必要。

「聖地では、ランクが高いと町の施設が格安で使える、広場を借りられるなどの特典が」

「ふーん」

 ロングヘアの少女は、カケルの言う特典に興味がないらしい。

「だと思って、すでにランク付けの申請をしておいた。行こう」

 短髪の少年は手際が良かった。

 荷物を背負った四人は、能力者協会を目指す。


 ランク付けをおこなうべく移動する、ヤヨイたち。

 バスに乗り込んだ。地下鉄を利用する人が多くて車が少ないことを、カケルが説明する。

 街の中心部で降りる、赤、深緑、橙、紺。

 ひときわ立派な、ガラス張りの大きな建物に到着。自動ドアを抜けて受付へと向かう。天井に柔らかな照明がともるロビー。

 大勢の人が並んでいるということはなかった。高級な椅子で待つ者もなし。

 理由は、完全予約制だからではない。

 すでに能力バトルが広まって長い時間が経っている、ということが要因。おおくの人は身の程をわきまえている。

 つまり、強豪ひしめく町で、新しく登録する人は少ないのだ。

 三人から預かった料金を支払い、受付で話をしたカケルが言う。

「今、誰かいるみたいだから、少し待とう」

「おう、悪いな。いつも」

「助かるわ」

 長身の少年とミドルヘアの少女は、ノリが軽かった。

「ありがとう!」

 すこし背の低い少女は、心からお礼を言っている。まぶしい笑顔。

 ヤヨイの心に嘘はない。


 ランク付けは手作業。1対1。

 正確には、判定する人と模擬戦をおこなう方法。勝てば、さらに強い人とバトルして判定。飛び級もある。

 一人では戦闘空間を生成できないため、仕方がない。別々の部屋のドアが開く。

「最後の人、強かったね。さすが聖地だよ」

 カケルはBだった。

「相性悪かったわ、私」

 スズネもBだった。

「まあ、こんなもんだろ」

 タクミもBだった。

「みんな、終わってたんだね。疲れてたから、ちょっと調子悪かった」

 すこし浮かない表情で、ヤヨイが遅れて出てきた。

 カケルも表情をすこし曇らせる。

「え? まさか」

「負けちゃった。Aだって」

 ヤヨイはAだった。

「負けてAって、さらに上があるのかよ」

「でも、思ったよりも、ヤヨイに離されてなくてよかったわ」

 タクミとスズネは別々の感想を述べた。

「僕たちには、まだ成長の余地がある。タクミ、スズネ、一緒に上を目指そう」

 カケルは前向きだ。

「てことで、まずはチーム名を考え直そうぜ」

「全員B以上だし、格好いいのにしましょうよ」

「何か、いいのあるかな」

 三人がチーム名を考え始めた。

 ヤヨイは、渋い表情になる。

「長くなりそう? わたし、飲み物買ってくる」

 ロビーからのびる通路に移動。自動販売機で水を買おうとして、窓の外をながめている銀髪の少女に気付く。

 おかっぱに近い髪型。少女の表情には影がある。

いまだ、ときは満ちない」

 ショートヘアの少女がつぶやいた。くろい服。

 カケルに名前を呼ばれたヤヨイが振り返り、またその場所を見る。誰もいなかった。

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