第4話 チームの始まり

 芝生の公園。カケルは慣れた様子で答えている。

「旅をしているので、ここで見られて運が良かったですね」

 ヤヨイは狐につままれたような顔をしていて、何も言わなかった。

 人々が去った後で、荷物を持った二人は木陰へと移動する。荷物を置き、ベンチに座った。

 カケルが不思議そうに言う。

「能力バトルが人気なのは、知ってるよね?」

「ううん」

「まさか、試合の様子が放送されていることも、知らない?」

「何それ見たい!」

 目を輝かせる少女とは対照的に、短髪の少年は渋い顔。

「単刀直入に言う。僕と一緒に聖地を目指して欲しい」

「……」

「当然、決める権利は君にあるから、僕が言っているのはただの願いで――」

 カケルの言葉をさえぎり、ヤヨイは喋り出す。

「見せてよ、試合。どうやって見るの?」

「見なくていいと思うよ。多分、君のほうが強い」

「それでも見たいの!」

 ヤヨイは頑固だった。

 カケルが荷物を背負って歩き出し、ヤヨイも荷物を背負ってその後に続く。

 二人は駅にやってきた。灰色で民家より横に長い。

 切符を買わず、列車にも乗らない。ガラスで覆われた待合室に直行して、能力バトルの動画が映し出されているディスプレイを見る。

「どう思う?」

「二対二で戦ってる!」

「チームでの戦いも知らなかったのか」

 カケルはあきれを通り越して、声を上げて笑った。


 試合が終わるまでたヤヨイ。

「ずっとひとりで旅するつもりだった」

「実を言うと僕も、自分の技さえ磨いていればそれでいいと思ってた」

 カケルも真情を吐露とろした。

 突然、少女が少年のほうを向く。

「さっきはごめんなさい!」

「え? いいよ別に。お腹が空いてたんだから仕方ないよ」

「色々と教えてもらっておきながら、カケルさんに謝るのを、忘れてたなんて」

「そんな呼び方しなくていいよ。どちらかと言えば僕が、さん付けで呼ぶべきだし」

「呼び捨てでお願いします!」

 なぜか、ヤヨイは頭を下げた。

 カケルはこれまでで一番の優しい顔。

「じゃあ、ヤヨイ。返事はどうなのかな?」

 少女はすこし恥ずかしそうにしながら、言葉を紡ぐ。

「カケル。一緒にチームを組んで、聖地を目指そう!」

 照れ笑いを浮かべたヤヨイが右手を差し出した。カケルも右手を出し、二人は握手を交わした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る