そして、次の日、寺子屋で、花ちゃんと会った。

「どう、進んでいる?」

「うん、すごくいい感じ」

「貸本って表紙とか、絵も描くの?」

「あっ、そう言うのがあるのは、人気があるな、私たちのも、絵をつけられたらいいのにな~」

「無くてもいいんだね」

「もちろん、だって、私もお宮様も絵は描けないでしょう」

「そうなの……」

 花ちゃんは、何か言おうとして、ためらっていた。

(何だろう)

「がんばってね」

「うん」

 そのまま、授業が始まってしまった。


  ☆ ● ☆


 放課後、貸本屋の私の部屋で、お宮様と企画だしをしていた。

「その屋敷は、呪われていて」

「呪いか、いいわね」

四章に、家が呪われていたと書いた。

「増々、面白そうね」

「また、一人で、厠(かわや)に行けないよ」

 私は、身震いしていた。

「大丈夫だって、楽しいよ」

「そうかな?」

 お宮様は、怖い話が平気だけど、私はだめだな。

 改めてそう思っていた。

「さあ、次はどうする?」

「そうだね、女の人に妹がいたとか」

「そうなると、また複雑になるわね」

「話が広げられていいと思う」

「そうね」

 ひたすら二人で語り合っていた。


  ☆ ● ☆


 そのうち、夜になり、別れた。

「明日もがんばりましょう」

「うん」

 手を振って別れた。


  ☆ ● ☆


 その夜は、やはり厠へいけないので、お母さんと寝ることにした。

「本当に、十二才になっても怖い話がダメなんて、本当に青って怖がりさんね」

「だって、怖い物は怖いの」

 実は、寝つけるかどうかも怪しい位怖かった。

(血まみれの女の人が、起きたらいるかも……そうだったらどうする? 逃げるの? 逃げ切れるわけないよ、怖いよ~)

 そう思うと、眠るのすら怖かった。

(怖いよ)

 そう思いつつせんべい布団を被る。

「本当に、大丈夫なのかしら?」

 お母さんは、そうつぶやいている。

「あのね、私、今、すっごく怖い思いをしているわ」

「やっぱり、無理しなくていいのよ、手をつないで寝ましょう」

「うん」

 手をつないでいると、自然と怖さが抜けていく。

(怖くない……)

 その日は、ぐっすり眠った。

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