第22話

「皆、同士よ! 我らを裏切りし蛇神はもはや必要ではない! 影族ごと滅してしまおう!」

「へえ? それはお前は俺の敵ってことでいいのか。ふーん」


 興味なさそうにツァルツェリヤの腕の中であくびをする蛇神。つまらなそうに、退屈そうに、自分の言葉を歯牙にもかけないようなそんな態度に、風紀委員長は苛立つ。

 こきんこきんと長く地に蹲る髪を揺らしつつ首を鳴らした蛇神は、振り返ってツァルツェリヤをぐいぐい押す。


「いつまで抱きついてんだ。暑苦しい」

「えー、だってみかちゃん」

「お前の隣に戻ってくるから、いい加減放せ。っていうか、俺の名前は螢丸じゃねえ」

「え」

三条亜芽みじょうあめってんだ。まあ螢丸でもいいが」

「じゃあみかちゃん!」

「……別にいいけどな」


 照れたようにはにかみながら、亜芽は白い頬をわずかに赤く染めながらぷいっとそっぽを向いた。その様子が婀娜っぽい外見に反して子どもっぽくて、ツァルツェリヤは笑った。笑われたことにむっとしながらも、ツァルツェリヤが離れたので満足する。家族だから恥ずかしいわけではないが、あまり大勢の前でべたべたされると照れ臭い。

 どこかそこだけほのぼのとしている2人に頬を引きつらせながら戦闘態勢に入った人間たちに影族も戦闘陣形に入ろうとしたが、それよりも先に。


「おい、退け」

「え、あ」

「なんだ、裏切り者の蛇神が。いまさら命乞いなど」

「ちょうど腹も空いてたし、俺が相手になってやろう」

「は」


「歓迎しよう、生命たち」


 亜芽が影族たちの先頭に出る。なにも武装もしていない、対影族の風紀の軍服しか着ていないのにもかかわらず。腰に佩いている鍛を抜くわけでもないのにその姿はまるで絶対防御をしているみたいに堂々としていた。

 そして、亜芽がうっそりとハグする寸前のように両腕を広げて呟いた時のことだった。

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