-3-「ボクはボクのままにソンザイしているんだヨ」
③
「‥‥うっ…あ‥‥んっ!?」
ヒカルは目を覚ましたと同時に、まるで
おそらくツヨシは車酔いをしないタイプなのだろうか。
「おい、大丈夫か?」
ピンピンとしているツヨシがヒカルたちの身を起こして
「だ、大丈夫‥‥。じゃない、ね、これは‥‥」
最悪の気分だった。
頭や身体の中がフラフラグラグラする中、ヒカルは辺りの様子を伺うと――そこには色とりどりの花が咲き乱れていた。
どこかで見た光景。
「ここって、あの
だが、
どことなく不自然さを感じていると、
「な、ナツキちゃん?」
自分の名前を呼ばれたナツキ、そしてヒカルたちも一斉に声がした方を振り返ると、パジャマを着た
すぐにナツキがアヤカの元に駆け寄って案じる。
「アヤカ! 起きて、大丈夫なの?」
「え、どういうこと? それに、なんで
ナツキの他にヒカルやツヨシが視線に入ると、急に赤面するアヤカ。しかも今、自分がパジャマ姿なのも
「何でここに、って言われても気がついたら、ここに居たとしか‥‥。ねえ、アヤカ。ここは一体どこなの?」
「え? それは‥‥」
どう説明しようかと言葉に
すると突然辺りに声が響いてきた。
『ソレは、ボクが、ヨんでアゲタんだヨ』
アヤカの部屋で聞こえてきた声だ。
ヒカルたちは辺りを見渡したが、その声の主は
『キィヒヒ‥‥。ウエだよ、ウエ!』
小馬鹿にしたようなあざ笑う声が上空から聞こえた。
ヒカルたちが空を見上げると“黒い
『アヤカがヒトリじゃ、サビしいとイうから、アヤカのおトモダチをツレテきてあげたんだヨ。それにキミたちもアヤカにアイタかったみたいだしネ』
謎の生き物はゆっくりと降下していき、ヒカルたちの前へと降りてきた。
それは――丸いフォルムで可愛らしい二頭身。大きな頭、大きな白目、大きな口。頭部には二つの角のように
その
「あなた‥‥一体、なに?」
ナツキは心に浮かんだ感想を、そのまま言葉にした。
『キィヒヒ‥‥。ボクのナマエは“ティルン”だヨ。ボクがアヤカのクルしみからタスケてあげたんダ』
「助けた?」
『そう。アヤカがクルしんでいたから、ボクがこの“セカイ”にツレテってあげたんダ。ココにクれば、スベてのクルしみから、カイホウされるからネ』
ナツキは横に居るアヤカを見る。
さっきまでベッドで苦しい顔で寝ていたアヤカが、こうして何事も無く
このティルンという生物が言っていることは正しいのかな
「アナタ‥‥。もしかして、
ナツキの問いかけにヒカルも
“不思議”と“不気味”似て非なるものである。
『マギナ? ダレだいそれハ? ボクはティルン。ボクはボクのままにソンザイしているんだヨ』
「え、そうなの」
素っ気ないナツキの
「だったら、悪いけど私たちを元の世界に戻してよ」
『エっ~! イマ、キミたちのセカイにモドったら、またアヤカがクルしいオモいをするじゃないか。ここに居ればエイエンにクルしみをアジわうことナいヨ。それに、タノしいこともイッパイだヨ!』
ティルンが手をかざすと、遠くに
しかし、それらをよくよく見ていると
「なんだあれ? あんなショボイもので遊べって言うのかよ」
ツヨシが
「別にこんな所で遊ばなくても良いから、元の世界に戻して。アヤカに
ナツキたちの言葉に、
『ム~! モンクをイうなヨ! セッカク、ボクがクルしみからスクって、タノしませるタメに、キミたちをここにツれてきたのニ!』
ティルンは
『モウイイ、キミたちなんてコウだ!』
ティルンは大きく息を吸い込み、
「「「うわわぁぁぁーーー!」」」
しかし、
おそるおそる
「なんだ、コレ?」
ツヨシが
光の球は
その光源は、ヒカルたちの真ん中にいたツヨシのポケットから強い光が発せられていた。
ツヨシはポケットの中を探って取り出したのは、昨日
ふとナツキは思い出す。
「そういえば魔女さん。それをお守りとか言っていたよね。それで‥‥」
言葉の通り、水晶はヒカルたちを守ってくれている。これがあれば、この状況でも少しは安心出来ると思った。
「そうだヒカル、魔女さんから貰った水晶は?」
「え、持ってないけど‥‥」
「なんで?」
「えっと、帰ったら机の引き出しの中にしまったけど‥‥。そういうナツキちゃんは?」
「私も‥‥」
ヒカルとナツキは
ツヨシが持っていた理由は‥‥昨日と同じ短パンを
何はともあれ――そのお
まさに手も足も出せない状況だった。いつまでも、この中で
たまらずツヨシが、この
「おい!あいつをなんとかしないと、このままじゃ俺たちがヤバイぜ!」
「なんとかするって、どうするのよ!?」
「なに言ってるんだよ。こういう時にこその魔法を教わっただろう!」
ツヨシはこれ見よがしにドヤ顔を向ける。
「ああ、悪いヤツとかに襲われた時に‥‥」
「よし、だったら行くぞ! 水原、ヒカル!」
ツヨシたちが魔女から教わった電撃の魔法を唱えようとすると、ティルンは炎の息を吹けども吹けどもヒカルたちに届いていないのを見て、
『さっきからナントモないなんて。クソ~! なら、コレはどうダ!』
ティルンがガバっと大きく口を開くと、口の周りに炎が
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