第4話 異分子

「司令官、今回の作戦についてご説明頂きたい」

「説明はしたんだけどなぁ、聞いていなかったかな。豊洲副司令」


 アジトへ着くなり、バギーを降りた雨儀とトーギに、豊洲と呼ばれた男が駆け寄ってきた。

 雨儀が疑問を音にする前にトーギは、この男、豊洲が自分たち"解放軍"の副司令であることを告げる。


「先の説明が不十分だということを申しているのです。人選、隊の派遣場所、何より司令が現場に向かうなど。自分の身分をご一考ください。

 ――そして、君は何だ。そのふしだらな格好は。司令の側を歩くならそれなりの服装は心得給え」


 雨儀は不愉快を追い越して呆れ、鼻息を漏らす。笑みさえ零れそうになった。微笑みの類だ。トーギはそれを見て、残念そうな顔で渋い声を音にする。


「豊洲副司令。君は何か勘違いをしているのではないか」

「すみません。仰っている意味を理解できません」

「言葉はひとつに集約する。君は、自分の身分をと言ったね。今の君は全くそれができていないよ。言葉をいくら丁寧にしたところで、何でも言っていい訳ではない。僕達は"軍"を名乗っている。だから、階級をつけた。アジトに身分を設けた。それを君は理解していない」


 トーギがあえて"軍"を強調して言っている、と雨儀は感じた。


「身分は弁えているつもりです、司令。ですが、それでは誰も司令に意見できません。また、先の疑問は多くの民が同様に考えていることでもあり……」

「民ではない、このアジトにいるのは"解放軍"所属、つまりすべて僕の部下だ。本来なら、総理大臣に司令官は任せて、僕はもっと別の仕事がしたかったんだけどな。でも、総理はいないし、この立場は"軍"のみんなで決めたこと。僕は忙しい、一日に何度も部下の疑問に答えている暇もない。何かあったら秘書を通してからお願いする。これもすでに繰り返し言っていることだよ」


 豊洲は目を細め、鈍く喉を鳴らした。トーギは、鹵獲した機体を見に行く、と言った。

 雨儀も豊洲の視線に刺されながら、後に続いた。



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