⒍秋



秋の空に夢想する。


彼岸花は、君自身だ。


真っ赤な花が君の顔で、茎は君の生っ白い首だ。

密集して咲いている花すべてが君なんだ。


「意味も無いが花を手折りたくなることってないか?」


僕は無心に折る。

ぱき、ぽき、と子気味のいい音をたてながら。

目の前に在る君を全て折っていく。

君は満開の笑みを浮かべている。


でも、君は僕の隣でうたた寝をしている。

だから僕は彼岸花の茎が折れる音を、知らない。


暖かな君の髪の毛に、そっと指を差し込んだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ナルシシズムと融合する365の短文 宮部宗介 @ryurokka3

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ