5


握られた手首が強く軋む。


先日、ずっと頑張っているんだけどどうしても開かないのとりんごジャムの瓶を渡してきた君は、僕が思っていたより力が強かったようだ。


「何でなの」


こんなに真っ赤にした顔を、僕は見たことがない。

閉じてしまいそうなほどに力が入り、なおかつ僕から視線を外そうとしない君の瞳は、涙腺が圧迫されているためか潤んでいる。


「なんで...なんでなの...」


刺さる視線が強すぎてこぼれ落ちる涙にさえ僕が写っているように思える。


うれしいね。


僕は僕しかいらない君しかいらないんだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る