2017年7月7日「花の感性」

 五月と六月は近所でイングリッシュガーデンが流行っていた。玄関先のアーチにはオレンジや白の蔓バラ、フェンスを覆うような小ぶりの花々が目を楽しませてくれた。


 今は散歩へ出た先の空き地に、誰が植えたかバナナの木と柿色の南国風の花が咲き乱れている。


 実家はというと、まだまだ。いつの間にか咲いていたイチゴの花が、梅雨の雨をうけて盛大に広がった葉の下で、赤い実をつけている。


 去年、枝を大々的に切られたプラムは、今年は花をつけなかった。甥っ子が青紫の実をもいで食べるのを楽しみにしていたというのに、残念であることこの上ない。


 甥っ子は期間限定の(特に年齢が四歳とあってか)食物を喜ぶ。おもちゃなんかではあまりおどろきもしない。


 ガーデニングは近所で義務付けられているが、父が、実験といっては果実のなる木をあちこち植え替えるので、年々花も実もなかなかつかなくなっている。


「人間もひとところに落ち着かないと、ろくな成果、上がらないよね」


 ジト目で言うと、返事が力強く返ってきた。


「失敗はなるべく多くしておいた方が、いざというときの被害が少ないんだ。データが必要なんだ」


 なんのこっちゃ。


「なんのデータ? ていうか、わけわからない」


「妹たちも、おまえで実験したおかげで、スクスク育った」



               END

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