7:大人の夏休み(以下略) まとめ(3)

 10月も目前にせまり、すっかり涼しくなってまいりました。皆様、いかがお過ごしでしょうか。

 私は全くままならぬ再就職活動の最中、迫り来るお祈りメールの弾幕をくぐり抜けたストレスを発散すべく、渋谷のヒカリエで香水のテスターをつけたり、かわいい雑貨を探したりと、つらい現実から目を背ける惰弱で残念な毎日を送っております。


 そんな10月目前の本日、ようやく「大人の夏休み~」の全作品を読むことができました。



 ☆響け/向日葵さん


 学生時代に同じような立場になったことがありました。

 クラスの班分けで「同じ班になった事がある人とは班を作ってはいけない」という担任の勝手なルールによって、一人余ってしまった私はどこの班にも入れなくなりました。

 担任はクラス全員に対して不公平がないよう、例外を認めないという立場を貫くつもりだったようです。

 結局、不本意な班編制となり、私が傷ついたのは言うまでもありません。


 学校という世界は社会性を育成する場でもあるから、何事においても誰かと連携し、グループを作ることを強いられます。

 一人で何かをやりたい、もしくは人との一緒になにかをやるのが苦手な人間に、居場所はありません。

 と同時に、何かのきっかけで集団を離れてしまった人の居場所も、恒常的になくなってしまいます。


 本作の主人公は外的な要因によって、疎外された立場に追いやられています。

 そのつらい心象風景を丁寧で表現豊かな文体で書いています。ゆえに殺伐とした印象はなく、むしろ美しい世界の中にぽっかり浮かんだ、寂寞とした心の風景を思い浮かべました。

 孤独の鎖から解放された主人公に、幸ありますように。



 今回で採点も三回目となりますが、感想をつけていない作品もいくつかあります。

 全て読ませていただいておりますが、感想文がつけづらい等々の理由から、★だけつけているものもございます。ご了承ください。


 13作品提出していただいた本イベント。いずれも力作揃いでしたが、もっとも面白いと思えた作品は、


 甲乙 丙さんの「Afterword ~炊飯器の恋とイワシの頭~」(https://kakuyomu.jp/works/1177354054883834431


 でした。

 存在しない作品の後書きというスタンスも面白いのですが、読んでいて創作欲求がわいてくるのがステキです。思わず長々とレビューを書いてしまいましたが、迷惑でなかったようで幸いでした。


 次点で


 目さんの「くぞちだかさ」(https://kakuyomu.jp/works/1177354054883722352)、梔子さんの「銀うさぎ」(https://kakuyomu.jp/works/1177354054883747317)、

 向日葵さんの「響け」(https://kakuyomu.jp/works/1177354054883293078


 の三作品を選びました。


 各作品それぞれの感想などは、それぞれサマライズしているので読んでいただければと思います。



 現在開催中の「無色な言葉「ルニア」を使って短編を書こう(https://kakuyomu.jp/user_events/1177354054883962716)」も、引き続き募集中です。気が向いたら、こちらもご参加頂けると幸いです。




 以下、余談。



 カクヨムというプラットフォームはKADOKAWAグループが(お金になるような)作品を集めるためのプラットフォームという側面があります。

 カクヨムの先輩にあたる「小説家になろう」も、書籍化した作品がいくつもありますが、こちらは元は小説投稿プラットフォームとして誕生しています。もとより書籍化を目論んで作られたカクヨムとは、プレイアビリティは同じでもビジネス的なロードマップ、そしてマネタイズの方法はまったく別モノです。

「なろう」は広告を主としてマネタイズをしていますが、カクヨムには広告が掲載されていません。これはカクヨムが、ユーザー投稿作品を書籍化することによってリクープするビジネスモデルになっているためです。


 つまり、カクヨムとしては「お金になるコンテンツ」が舞い込んできてくれなければビジネスにならないのです。


 そのため書籍化しやすい長編作品に注目が浴びるような仕組みとなっており、今回募集した短編作品にはスポットが届きづらい仕様となっているように思います。

 これは仕様の話にもなるのですが、カクヨムでは一度投稿した作品が掘り返されません。エピソードが連なり、新エピソードが追加されるたびにトップページに掲載される長編作品に比べ、公開したら公開したきりとなる短編は注目されづらく、非常に冷遇された立場にあると言えます。


 うがった言い方になりますが、運営は短編作品をマネタイズする方法がないため真剣に掘り返しする方法を導入しないのだろうなと思うわけです。


 カクヨムというサービスはボランティアではありません。きっちりとしたビジネスモデルの中で運営されているものなので、利益を出すことを考えるのは当然であるといえます。


 まして今は書籍不況の時代。市井のワナビに夢を見させるWeb小説の書籍化の話も、裏から眺めてみるといろいろな事情があるわけで、そんな中で短編作品に注力している場合ではない…というのもうなづけないはなしではありません。


 しかし優秀な短編作品が集まる中で、これをマネタイズしないのはもったいないと、コンテンツビジネスやっていた(過去形)身からすると思うのです。書籍化まではいかなくても、なにかやりようはあると思うのですよね。


 カクヨムにおける短編がワナビの手慰みで終わらないようになればと願いつつ、終わります。

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