15分Ver.

   お母さん登場。


お母さん

 私はお母さん。赤ずきんのおばあさんが病気になったので、赤ずきんをお見舞いに行かせようと思っているの。

 赤ずきんや。


   赤ずきん登場。


赤ずきん

 私は赤いずきんがとってもよく似合うかわいい女の子。だからみんなが赤ずきんって言うのよ。

 で、なあに? お母さん。


お母さん

 おばあさんが病気で寝ているから、お見舞いに行って来ておくれ。


赤ずきん

 いいよ。


お母さん

 じゃあ、これがお見舞いの品…お薬とブドウ酒とお茶の葉とクッキーと干しぶどうとりんごにみかん…それと新潟魚沼産コシヒカリ。


赤ずきん

 …おかあさん……ムリ。


お母さん

 じゃあ、パンとブドウ酒だけでいいわ。寄り道しないでまっすぐ行くのよ。森の中には怖いオオカミがいるから充分に気をつけなさいね。


赤ずきん

 はぁい♪ いってきまーす。


   赤ずきん退場。

   お母さん退場。

   オオカミ登場。


オオカミ

 場面変わって森の中。オレはハラペコオオカミさん。


   赤ずきん登場。


赤ずきん

 私は赤ずきん。病気のおばあさんのお見舞いにパンとブドウ酒を持って行くのよ。


オオカミ

 いーいこと聞いちゃった。よし、今日のメシはあいつで決まりだ! でもただ食うってのは、芸がないな。うーむ……そうだ! おばあさんのところに行くって言ってたな。グフフフフ……この作戦で行こう。

こんにちは、赤ずきんちゃん。


赤ずきん

 こんにちは、大きなワンちゃん。


オオカミ

 ワン! じゃない! オレはオオカミだ。


赤ずきん

 あら、ごめんなさい。

 で? 何の用?


オオカミ

 お母さんがね『お花を持たせるのを忘れちゃったわ』って言ってたんだ。


赤ずきん

 それは大変。


オオカミ

 この近くにたくさん咲いているから、摘んで行くといい。


赤ずきん

 そうしましょう。


   と、お花を摘み始める。


オオカミ

 しめしめ、うまくいった。今のうちにおばあさんのうちへ行こう。


   オオカミ退場。

   お花を摘み終わった赤ずきん。

   そこに猟師さん登場。


猟師さん

 やぁ、赤ずきんちゃん。


赤ずきん

 こんにちは、猟師さん。


猟師さん

 森の中で道草食ってると腹ぺこオオカミに食べられちゃうぞ。


赤ずきん

 オオカミさんにならさっき会ったけど。親切なオオカミさんだったよ。へぇ、じゃああの狼さん腹ペこだったんだ。


   と、赤ずきん退場。


猟師さん

 そう、あの狼さんは腹ペこでね…って、え? ちょいと赤ずきんちゃん……ああ、もういなくなっちゃった…ま、いいか。


   猟師さん退場。

   場面変わって、おばあさんの家。

   家の中でおばあさんが寝ている。

   オオカミ登場。


オオカミ

 ここだここだ、おばあさんの家。ここでオレが赤ずきんのフリをして、おばあさんに近づき喰っちまう。そして今度はおばあさんのフリをして、赤ずきんを喰うのさ。頭いいだろ?


   赤い布切れをかぶる。


オオカミ

 かんぺきなへんそうだ!

『おばあさぁん♡ こんにちは、赤ずきんよぉ』

 モノマネもかんぺきだ!


   おばあさんは寝ている。


オオカミ

『おばあさん、こんにちは』


おばあさん

 おや、赤ずきんかい? ドアは開いているから勝手に入っといで。


オオカミ

 それじゃあお言葉に甘えて…。


   と、中に入っておばあさんをひとのみ。


オオカミ

 さて、いよいよ赤ずきんを食う準備にかかるか。


   いったん退場。

   ナイトキャップをかぶって戻ってくる。

   赤ずきん登場。


赤ずきん

 おばあさんこんにちは、赤ずきんよ。お見舞いに来たの。


オオカミ

『おお、おお、よく来たねぇカギは開いているから入っておいで』


   中に入る赤ずきん。


赤ずきん

 どうしたの? お声が少し変よ。


   オオカミあわてて口を手で隠す。


オオカミ

『び、病気だからねぇ』


赤ずきん

 あら?


   あわてて手を引っ込めるオオカミ。


赤ずきん

 大きなお耳ね!


   ずっこけるオオカミ。


オオカミ

『それはね、お前の声がよく聞こえるように大きいんだよ』


赤ずきん

 ふううん。そうなんだ。


オオカミ

 それでいいのか?


   と、赤ずきんを指差す。


赤ずきん

 あら?


オオカミ

 ゲッ! やっちまった…。


赤ずきん

 毛むくじゃらの大きな手。爪もすっごい! お口も大きくって牙もあって腹ぺこオオカミさんそっくりね。


オオカミ

 バレちまっちゃあしょうがねぇ。そうさ、オレさまは腹ぺこ…フガっ!


   オオカミの話も聞かずに口にパンをつめる赤ずきん。


赤ずきん

 言ってくれればパンもブドウ酒も分けてあげたのに。


オオカミ

 モガモガ…ごっくん。なにすんだ。オオカミは肉食だぞ、こんなもの食えるか!


赤ずきん

 でも私、パンとブドウ酒しか持っていないわよ。


オオカミ

 オレが食うのは…お前だ!


   と、赤ずきんをひとのみ。


オオカミ

 あー、食った食った。腹いっぱい食ったら眠くなってきたなぁ…ちょうどベッドもあることだし、昼寝でもするか。


   と、ベッドで昼寝。

   そこにやってくる猟師さん。


猟師さん

 お。そういやぁここは赤ずきんちゃんのおばあさんの家だな。最近病気で寝込んでいるっていってたな。どれ、お見舞いでもしようか。こんにちは。


   と、ドアを開ける。


猟師さん

 やややっ! オオカミがベッドで寝てるぞ。 コンチクショウ! ……おや? おなかが妙にでっかいなぁ…ゲゲゲッ! おなかがモゾモゾ動いてるっ! スプラッターか? エイリアンか? ……待てよ? おばあさんの家でオオカミが寝ているってことは、おばあさんはどうなった?


   猟師さんオオカミのおなかを切り開く。

   おなかの中から赤ずきん出てくる。


猟師さん

 うわっ! でたーっ!


赤ずきん

 うらめしやぁ~…そうじゃなくて。


猟師さん

 おや、赤ずきんちゃん。


赤ずきん

 猟師さん! おばあさんが、まだオオカミさんのおなかの中なの。ご病気だから一人で出られないから出してあげて。


猟師さん

 よし、わかった。


   おばあさん出てくる。


おばあさん

 やぁ、助かった。


猟師さん

 やれやれ、これで一件落着だな。


赤ずきん

 まだよ。


猟師さん

 え?


赤ずきん

 オオカミさんのおなかをそのままにしてちゃかわいそうだわ。


おばあさん

 おぉ、おぉ。赤ずきんや、お前はいい子だねぇ。どれ、わたしが針と糸で縫ってあげよう。


赤ずきん

 オオカミさんが起きたとき、おなかが空っぽだったらかわいそうだから、大きな石でもつめておきましょう。


おばあさん

 おぉ、おぉ。赤ずきんや、お前はいい子だねぇ。


猟師さん

 それがいい子のすることか? まぁ、いいや。オオカミがおなかがからっぽでまた誰かを食べても困るから手伝おう。


   石をつめておなかを縫う。


猟師さん

 さぁ、オオカミが起きないうちにこの家を出よう。二人とも赤ずきんちゃんの家に送って行こう。


赤ずきん

 ありがとう!


   と、三人退場。

   間。

   オオカミ起きる。


オオカミ

 ぐぬぬっ。なんだかおなかがゴロゴロするなぁ。喉も乾いたし…裏庭の井戸で水でも飲んでくるか。


   と、退場。


オオカミの声

 よっ、とっ、おっ? おっとっと…うわぁ!


赤ずきん

 こうしてオオカミさんは、井戸に落ちて溺れてしまいました。おしまい。

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