第28話 犯人はこの中にいる

「ちゅうわけで、解明編や」

「どこ向いてるの?イプシロン(仮)」

「モニターの向こう側や」


「さて…あの女性ひとりに罪を被せるのも可哀想ですし、戻りますか」


 。―――。

「ご苦労さまです!!」

「お疲れ様です…皆さん寝てますよね?」

「警備以外は…なにかありましたか?お帰りになったものと…」

「テント片づけちゃいました?」

「いえ、そのままですが…」

「じゃあ、今夜は遅いので、テントで泊まらせてください」

「構いませんが…」


「というわけで、明日の朝食の時にでもネタばらしといきましょう」

「なんや…レイはん性格ババ色やの~」

「いやいや…あの女の人に全部罪を被せるってのはねー、虫が良すぎますよ。それに彼の思いどおりに動かされるってのも、なんかね」

「なんかワクワクしますね、犯人はオマエだ!! みたいな」

「えぇやん、その役ワシやりたい!! 名探偵ポジや」

「アンタ無理よ…アンタUMA枠だから」

「誰が未確認生物やねん」

「アンタでしょ!!」

「そらまぁ…そうやな…でもどうやろか?UMA探偵 四郎左衛門みたいな」

「弱いわね…なんかキャッチ―なコピー的なアレがダメよね」

「なに言うとんや?オマエ、アレか?仕事出来ないクセに部下にダメだしする上司か」

「つっこみが長い…それじゃ笑いは起きないわ」

「せやな…一言でビシッと笑いツボを刺激せなアカン」

レイはん…あっ、寝とる…」

「結構、マイペースな人よね」

「なぁー、まぁ悪魔従えて商売しようっちゅう、お人やからね…凡人の、ものさしで測れんのとちゃうか」

「アンタも充分、凡人の域超えてんだけどね…」

「なんや、コレよりマシやろが」

 イプシロン(仮)がフラスコに入った野槌のづち綺璃子キリコの目の前に突き付ける。

「ギャッ…それは…やめて…生理的にダメなの…」

「うり…うりうり…どうや?気持ち悪いの~綺璃子キリコ…グエッ…ガッ」

「やめてって言ってるでしょ…」


 。―――。

「う~ん…やっぱり寝袋って熟睡できないなー」

「そうですか?よく寝てるようでしたよ、不破ふわさん」

「せやで…ワシなんか息苦しゅうて…息苦しゅうて…」

 チラっと綺璃子キリコを見るイプシロン(仮)


「朝ごはんはなんでしょうね」

「晩御飯はカレーでしたからね、ハムエッグ的なホテルテイストがいいな~アタシ」

「ワシ…みそ汁飲みたい」


「カレーね…とん汁と…」

「まぁ…一晩寝かして美味しくなったカレーと思って…」

「ワシ大丈夫や」


「おや…結局泊まられたのですか」

「えぇ…迷惑でしたか?」

「とんでもない、ただテントは寝れないのではと思っただけですよ、では…」


不破ふわさん、あの人」

「えぇ、ここで一番偉い人です」

「まさか、あの人が?」

「そうです…では綺璃子キリコさん、放送室で準備お願いします。僕は、あの人を放送室へ誘いますから」

 不破ふわさんがイプシロン(仮)にDVDを渡す。


 。―――。

 しばらくすると、不破ふわさんが放送室に入ってきた、もちろん、あの人と一緒だ。

「では…ダンタリアン様、その男の秘密を暴いてくださいますか」

「たやすいこと…」

「なんだ、その化け物は…」

 ダンタリアンと呼ばれた悪魔は、顔が固定しない…老若男女すべてに見え、くるくると表情も…あるいは顔ごと入れ替わる。

「落ち着きのない悪魔やの~、見ているとこっちが疲れてまう」

「黙ってなさい…」


「俺は…」

 放送室の外部スイッチONの状態で…2時間ノンストップで子供の頃からの悪事やら恥ずかしいことやらベラベラ喋りまくりました。


 。―――。

「あの女の人どうなるんですか?」

「あぁ…不問になったようです、まぁ…自衛隊も恥でしょうし、公に被害届は出せないんじゃないですか」

「でも…備品売りさばいてたんですよね」

「それも、あの人に脅されて、お金はみんな持っていかれてたんですし…」

「しかし…可哀想ですね…妖怪に憑かれて食糧泥棒して、泥棒先で転売やらされて…」

「まぁ被害者ですよね」

「摂食障害って…」

「あぁ…あの女性には、私の名刺渡しました、いい薬作る悪魔はいますからね、格安で胃薬作りますよってね、漢方医を紹介しますということで…」

「アフターサービスっていうことやな」

「そうですか…良かった」

「えぇ…コイツのお礼ってことでね」

 胸ポケットからフラスコ野槌のづちを取り出す不破ふわさん。

「ギャァァー…それは…やめてください…マジで…」

「結構、使い道あると思うんですけどね」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る