第27話 ただで済むわけがない

「なるほど…この女性が、倉庫から食料を持ち出していたということですか」

「まぁ、そうなんですけど、食糧だけじゃなく色々と持ち出したようですね…横流しして現金収入を得ていたようです」

「まさか、銃火器もか?」

「いえいえ、それはさすがに…キャンプ用品とか制服とか…マニアに売れそうなものですかね」

「しかし…紛失の届は無かったんだが…それはそうでしょう、鍵を渡した人がいるはずですからね」

「内部犯ってことか…」

「こんな格好でうろついて…あくまで幽霊騒ぎで収めようとしたんでしょうけど、まぁ、つい食糧に手を付けちゃったってとこでしょうかね」

「そうでなければ、白い浴衣着て、泥棒しないでしょ」

「警察に被害届を出すかどうかは、コチラで検討します。まぁ一応解決してくれたのだし、報酬はお支払いします」

「どうも…私は、報酬が頂ければ問題ありません」


 。―――。

「というわけで、明日帰ります」

「なんかつまらんのう」

「幽霊期待しちゃったもんね」

「まぁの~、おらんとは解っていても…ちょっと盛り上がってまったの~」

「いないのかな~、見たんだけどな~」

「見間違いやで、そういうんわな自分の記憶の中で都合いいように作りだした幻想や」

「アンタ…それ自己否定にならないの?」

「なんで?ワシ、おるやん、今、目の前におるやん、触れるやん」

「うん・・・いいの、アンタに迷いが無ければべつにいいの」

「迷うって何に?強いて言えばー、カレーの付け合せはらっきょか、福神漬けか…悩んどったけど」

「長生きしてね…」

「したから妖怪やねん! めったなことじゃ死なへんちゅうねん」


「さて…じゃあ行きましょうか?」

「行く?帰るんですよね?」

「いいえ、行くんです」

 不破ふわさんがニコリと笑う。

「どこに?」

「彼女の家にです」

「なにしに?」

「不自然ですよ…毎夜のように、あれだけの食糧を盗むなんて」

「いや~綺璃子キリコも、よう食うで…あの細っこい身体で…のぉ」

「いいから!!」

「しかも、今日なんて、じゃがいもばっかりですよ、変ですよ」

「売ってたんじゃないですか?」

「売るなら別のものがありますよ、事実、時には売れそうなものを盗んでたんですから」

「何があるんです?」

「さぁ…行けばわかりますよ、たぶん」


 。―――。

「ここですか?」

「えぇ…このアパートですね」

「ほな、さっそく…おじゃましま~す」

「えぇー、カギは?」

「さっきイプシロン(仮)に渡しました」

「いえ…そういうことではなく…なぜ鍵を持っているのか?ということなんですが」

「それは、落ちていた財布の中に入ってました」

「あ~、拾得物横領ですね…ワロえない…」


「アカン…綺璃子キリコは見ぃひんほうがえぇ…アレはアカン」

「えっ?」

「やっぱり…なにかいたんですねイプシロン(仮)」

「おった…あんなん飼ったらアカンやつやん」

「どれどれ…なるほど…野槌のづちでしたか…」

「なんですか?ノヅチって?」

「妖怪や…」

「なんだ妖怪ですか、なんでアタシが見ちゃダメなのよ」

「えっ…まぁ…な~」

「男尊女卑よ!! 見る権利を要求します!!」

「どうぞ、綺璃子キリコさん、ただ空腹でしょうから、あんまり近づかないでくださいね、雑食ですから」

「食われる系のヤツですか、まぁ、見るだけ……ギャー!!!!」

「なっ、うるさいと思うたんや…ヌルヌル系やもん…ワーム系やもん」

「足付き巨大ヒル~…キモい~」

「お~よしよし、えぇねんで…ビジュアル、キッツイ系やもん、泣いてもえぇねんで」

 涙目で鳥肌たてて顔面蒼白の綺璃子キリコ

 部屋を指さして泣いている。

「せや…あぁいうのもおんねん、慣れなあかん! けどな、今は、えぇねん、本能的にサブイボでますやん」

「まぁ…ほっとくわけにもいかないんですよね…どうしようかな」


 。―――。

「どうするんです?ソレ?」

「コレですか」

「あ~見せなくていいです…小さくなってもキモさは変わらな~い」

「まぁ…野放しにはできませんからね…しばらくは、飼いましょうかね僕が」

「えっ?店に置くんですか?」

「インテリアにはなりませんけど…野槌のづちは空腹になると無差別に動くモノを飲み込みますからね…」

「なんでこんなもん、飼っとんねん」

「あぁ…たぶん憑かれたんでしょうね、おそらく摂食障害かなんかで、食事を制限されていたところに、たまたま野槌のづちの波長が合ったってとこじゃないですか、強烈な妖気に当てられてってとこですか」


「なんで自衛隊のキャンプなんか…」

「そう、最後の問題はソコですよ」


「なるほど、次回は解明編やな」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る