第35話 卒業 R15

「ところで瑞菜さん。何本飲むんですか?」


「あれ? そう言えば、結構飲んでるよね……」


「ええ、それが最後の一本です」


 プシューっと炭酸が抜ける。

 そのままグラスに注いで飲み始める。


「ぷはー。もうそんなに飲んじゃったかー。

 ほら、なんていうか? 告白するから緊張した的な?」


「緊張してると言う割には満面の笑みで唐揚げをほうばってますよね」


「だって店長のおつまみほんとに美味しーんだもーん」


 そう言いながらもチーズとトマトのカプレーゼを口に放り込む。

 本当に幸せそうに食べるなぁ……


「琉夜君もう飲まないのー?」


「もう買ってきたの無くなっちゃいましたよ……」


 時刻は10時。飲み会始めてから3時間ほどが経過している。


「えー、つまんなーい。よし。うちに取りに行こう。

 琉夜くん、琉夜くん。手を貸して」


 両手をこっちに伸ばして立たせてーってやってくる。

 いちいちかわいいなこの人は。

 両手をもってぐいっと引き寄せる。


「おっとー」


 足元がふらついて俺に抱きついてくる。受け止めた身体に瑞菜さんのボディーラインがぴったりと密着する。なぜかそのまま瑞菜さんは抱きついてくる。


「んー、あったかーい」


「瑞菜さんクーラー入ってるのにそんな薄着だから……」


「お酒飲むと熱いんだもーん」


「瑞菜さん、部屋に行くなら離れてくださいってば」


「んー……なんか琉夜くん紳士過ぎてつまんない……」


「えっ、うわっちょっと!」


 こっちにかかっていた体重がいきなり離れて引っ張られて思わずベッドに押し倒すように倒れてしまう。

 慌てて手をついて下敷きにするのは防いだけど、しっかりと抱きついて離れないせいで身体はピッタリと密着してしまう。

 否が応でも自分の体に当たっている柔らかな二つの膨らみ、足に当たる太ももなどを意識してしまう。


「み、瑞菜さん……?」


「……私だって……ドキドキしてるの……わからない?」


 密着した状態でドクドクと早い速度で脈打つ心臓が感じられる。

 それを意識すると妙に、恥ずかしくなってくる。


「わ、わかります……」


 ニッコリと嬉しそうに笑って目を閉じる瑞菜。

 流石に今度は、ちんたらと躊躇はしない。

 優しく唇を重ねる。

 背中に回された腕の力が緩み、俺の身体を優しく触れながら首の後ろに巻き付いてくる。

 やさしいキスは少しづつ濃度が濃くなり、本能が唇をこじ開ける。

 お互いが相手を確かめるように絡みつき、脳を蕩けさすような快感が身体を突き抜ける。

 クビに回された手が後頭部を激しく寄せ付け、どこからが俺で、どこからが瑞菜かわからないほどに身体を密着させている。

 激しい口づけだけでも、身体が破裂しそうなほどに興奮している。身体が熱い。

 それは自分だけではないことがはっきりと分かる。


「はぁ……ねぇ、少し……暗くしよ……」


 長い口吻を終えて、酸素を取り込んだ瑞菜の口が、吐息混じりに言葉を吐く。

 いつもの元気一杯の瑞菜とは別人のようなねっとりとした色気を含む声。

 俺は静かに立ち上がり、部屋の明かりを落とす。

 窓からわずかに差し込む街頭の灯りがベッドの上に座り直した瑞菜のシルエットを映し出す。表情は読み取れないが、やや早く揺れる肩、シャツだけの影は彼女のスタイルの良さを強調させる。


「綺麗だ……」


 その光景に思わず自然と言葉が漏れた。

 彼女はこちらを見ると淡い光で嬉しそうに笑っているのが見える。

 両手を差し出し、俺に近くに来るように命令する。

 俺はその命令に逆らえない。

 彼女に飛び込むように抱きしめる。

 そして、再び激しく舌を絡め合う。


 彼女の背から手を素肌に滑り込ませる。

 うっすらと汗をかいている背中を掌で感じながら、ゆっくとシャツをまくり上げていく。背中を手が通ると首に抱きついて俺の首筋にキスをしていた彼女の口から淡い吐息が漏れる。耳に届くその吐息はまた俺の脳を痺れさせる。

 胸のあたりまでシャツが持ち上がると、彼女は少し身体を離し、自らシャツを脱いでいく、一瞬でも彼女の身体が離れることがこれほど寂しいと思うとは……

 シャツを脱ぎ、胸を隠す下着を止めている金具も外す。

 その美しい体と、動作に呆けたように見ていると。


「脱がせたい?」


 小悪魔のような微笑みで彼女がホックが外れた状態で抱きついてくる。


「瑞菜さん、なんか、エロいですよ……」


「さんはいらない。瑞菜って呼んで……」


 そうつぶやきながら俺の耳を齧ってくる。

 ぞわぞわと背筋が震える。気持ち悪い気持ちいいというわけのわからない感覚だ。

 俺は背中に回した手でブラを外す。

 目の前には形のよく豊かな二つの膨らみが顕になる。

 

「凄く綺麗だよ……瑞菜」


「ありがとう……琉夜」


 俺は優しく彼女の口付けをして、首元に唇を這わせていく。

 首筋から肩、肩甲骨、そしてその豊かな丘へとゆっくりとキスをしていく。

 優しく手で愛撫しながら唇をその頂上にそっと触れさせる。


「あっ!」


 ビクンと彼女の身体が跳ねる。

 そのまま手と唇を遣い、優しくその柔らかい物を感じていく。

 大きく柔らかい、そして温かい。握りしめたら抵抗なくちぎれてしまうんじゃないか? そんな不安になってしまう様に俺の手を包み込んでくる。

 女性を扱う時は優しく、自分の力で傷つけないようにそっと……

 彼女の身体は俺の手や唇が触れると時折激しく跳ねる。


「ちょっと、もう……だめ……なんか、慣れてない?

 やだっ! あっ! き、気持ちよすぎて……声でちゃう……」


 ぐっと口元にタオルケットを掴んで我慢している彼女の姿を見ると、俺の中での雄がムクムクと湧き上がってくる。

 胸への愛撫は維持しながら少しづつ唇を耳元へ近づけていく。

 

「声、出してもいいよ?」


 囁く様に耳を軽く噛む。同時にすっかりと立ち上がった丘の頂上を指で軽く挟む。

 

「やんっ!!」


 今までで一番の衝撃が彼女の跳ねた身体から伝わる。


「もーーー! 琉夜のエッチ! 馬鹿!」


 ポコポコと俺の胸板を叩いてくる瑞菜。


「怒った。脱いで!」


 俺の上に馬乗りになってきた瑞菜は俺のシャツを脱がせて、そのまま下半身も剥ぎ取ってしまう。

 すでに俺の方も凄いことになっていた。


「すご……こんなになってるんだ……先に言っとくけど、たぶん下手だからね、初めてなんだから……」


「な、なにをおおおおおお!」


 変な声が出た。

 強烈な熱と快感が身体を突き抜ける。


「あ、やばい、これ、まずいよ……」


 我ながら情けのない声が漏れる。

 完全に形勢が逆転したことを悟った瑞菜は俺自身を嬲りながら嬉しそうにニヤついている。そして更に動きを激しくしてくる。

 同時に快感の波が怒涛の津波のように連続して襲い掛かってくる。

 一体何がどうなっているのか想像もできないようなモノが、俺を包み込んで激しく動き回っている。動きに合わせた擦れ合うような音も耳を支配していく……

 初めてのことに極度に興奮していた俺は、為す術もなくその動きに敗北をする。

 

「あ、ごめ、もう、無理……」


「……ふふん、いいよ」


 完全に勝ち誇った嬉しそうな表情で一言そういうと、今まででいちばん激しい動きで俺を攻め立ててくる。

 すでに敗退しかけていた俺はその攻撃によって完全な敗北をきたす。

 凄まじい快感が脳天を叩きつけ、同時に脈動する衝撃が弾け飛ぶ。


「あ”あ”あ”……」


 体全体が心臓みたいに脈打っていく、その度に快感が襲い掛かってくる。

 こんな快感がこの世にあるなんて、この瞬間まで俺は知らなかった。


「む、無理……テッィシュー……」


 瑞菜はたまらず俺を開放するとティッシュに俺の欲望を吐き出していく。


「こ、こんなに出るものなの? 友達の話とぜんぜん違うよ……

 あああ……こ、溢れる……」


 慌ててベッドにまで零れそうな欲望を拭き取っている。


「ご、ごめん……気持ち、良過ぎて……」


「な、なんか加減わからなくてごめん。でも、気持ちよくなってくれたのは嬉しい」


 あんな情けない姿を見ても優しく笑いかけてくれる瑞菜。


「てか、瑞菜負けず嫌い?」


「……はい……」


「結構凄い負けず嫌い?」


「……はいそうでございます」


「ちょっと意外だった」


「琉夜だって、あんなに意地悪だと思わなかった……」


「いやだって、俺もどうすればいいかわからなくて、瑞菜気持ちよさそうだったから、可愛いし、つい……」


 あれ、思い出したらまた元気になってきちゃった。


「……もう……馬鹿……」


 恥ずかしそうにはにかんだ瑞菜を見たら、もう止まりませんでした。


 こうして、俺は卒業した。



 


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