第36話 休日

 カーテンの隙間から太陽の光が差し込んで来る。

 身体を起こそうとすると、なんだか身体が重い。

 ふと見ると瑞菜が俺の身体に抱きついている。

 

「ああ……そうか……」


 昨日の夜の思い出が蘇る。

 

「ん……琉夜おはよー……昨日あんなにしたのに、朝から元気だねー……」


「ち、ちがう。これは朝だからだぞ」


「んふふふふふ、いてて……」


「だ、大丈夫?」


「はは、大丈夫。ちょっと一回帰るね。朝ごはん食べるでしょ?

 作ってくるよ」


「え? いいの?」


「うん、作りたいし。待ってて。でもシャワーも浴びるからちょっとだけ待ってて」


「あ、俺もそうする。じゃぁ待ってるね」


 軽くキスをして瑞菜がベッドから立ち上がる。

 朝日に照らされる瑞菜の姿は本当に綺麗だ。


 着替えて出ていった瑞菜を送って俺も部屋の片付けをする。

 昨日の俺の暴走の痕が酷いので大きなゴミ袋にまとめてゴミを出そう。

 結局あのオードブルも綺麗サッパリ食べてしまった。

 そういえば二日酔いもないな……


「俺は酒に強かったんだな……瑞菜……瑞菜……彼女……脱童貞……

 ふひ、ふひひひひひ……」


 リア充じゃないか俺!!

 ひゃっほう!!

 

「アデーーー!!」


 調子に乗って小指をベッドの角に激しくぶつけて悶絶する羽目になった。


 その後痛みに耐えながら片付けをしてシャワーを浴びる。

 背中がヒリヒリすると思ったら、傷だらけだった。

 

「最初、痛そうだったもんな……」


 また昨日を思い出してしまう。


「ちょ、まて、せっかくおさまったのに……」


 四苦八苦しながらもきちんと身支度は整える。

 洗い物をしているとチャイムがなって瑞菜が戻ってきた。

 

「簡単な物しか無いけど……」


 オニギリ、焼鮭、目玉焼きと煮物に保温容器には味噌汁。


「完璧じゃないか!」


 俺が思い描く理想の日本の朝食だ。

 料理を受け取ってテーブルに並べる。

 その間にお味噌汁を瑞菜が器によそってくれる。


「「いただきまーす」」


 手を合わせていただくことにする。

 

「美味しい!」


「よかったー。琉夜はいつも店長のお弁当食べてるから結構不安だったんだよねー」


「お米とかお店よりも少し硬めでこっちのほうが好みだよー」


 それから二人で朝食を堪能する。

 瑞菜は料理も好きで結構自炊しているそうだ。


「料理かぁ……家事とか洗濯と掃除しか出来ない……

 ちゃんとしないとなぁ……」


「ゆっくり一つ一つでいいと思うよー。それに今だって食器一緒に洗ってるんだからこれもちゃんとした家事だよー」


 ニコニコしながら隣で食器を拭いてくれている。

 

「幸せだなぁ……」


 思ったことが口をついて出てしまった。


「うん……私も……」


 瑞菜が可愛かったからキスしといた。



「さて、お腹も満たされたし……」


「いちゃい「リフクエ入ろう!」」


「あ、そうだった。今から入る?」


「うん、向こうで会おう! さらばだー」


 食器を集めてそそくさと出ていってしまった。

 楽しみにしていたもんなー。うん、確かに楽しみだ。

 俺もパソコンを立ち上げてリフクエを起動する。

 アップロードが結構時間かかりそうだ。

 しばらく待っていると部屋のチャイムが鳴った。


「あれ? どうしたの?」


「アップロードが結構掛かりそうなのと、忘れ物」


「あれ? 何忘れた?」


「連絡先!」


「あ!」


 まったく、あんなことしておいて、お互いの連絡先も知らなかった。

 無事にお互いのメールと電話を交換する。

 

「ああ、もしウチの部屋入るなら外の消化器入れの下に鍵あるから」


「え、なんでそんなとこまで一緒なの琉夜! 気が合うんだねー」


「そちらの鍵も把握した」


「アップデート長そうだね……」


「内容凄いもんねー、仕方ないよ」


 今のところ50%まで終了している。

 このメーターってやつは数字が一定に減らないのが腹立たしい、なんで50%で止まるのか……


「このメーターって全然意味ないよねー」


「そうだよね……98%とかで固まると本当に腹立たしい……」


「わかる。……琉夜くーん、その手はなんですかー?」


「え……瑞菜が可愛いから……」


 腰に回そうとした手をつままれた。


「だーめ。ちゃんと言っておくと。ちょっと痛いから今日は駄目」


「え、大丈夫? ごめんなさい……」


「あ、大丈夫。でも、流石に昨日は……ね?」


「あ、うん。はい」


 若返った気分でございました。


「……琉夜、怒らないから答えて。ホントに初めてだったの?」


「え!? なんで? 初めてだよ!」


「……なんか、すごく上手くて……やだった……」


「よ、よくわからなかったから無我夢中で……

 そ、それだったら瑞菜もあんなにすごいことなんで出来るんだよー」


「あ、あれは……友達にいろいろと聞かされてて……

 結構女同士ってエグい話もするから……

 ほんとに凄いんだなーって、可愛いからつい、頑張っちゃったぜ!」


「頑張っちゃったぜ! って……。

 とりあえず。私は昨夜、瑞菜様のお陰で童貞を卒業いたしました」


「あ、は、はい。私も琉夜様のおかげで、その処女バージンを捧げました」


「末永くよろしくお願いします」


「こちらこそよろしくお願いします……プッ……何なのこれー!」


 二人で大笑いだ。なんかそんな感じでふざけていたらダウンロードが終わっていたので、向こうでの再会を約束して瑞菜は帰っていった。






 



 

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