士魂に生き、士魂に散ったつわもの達の物語

前作に引きつづき、拝読しました。
江戸城無血開城後、官軍に追い詰められていく会津軍と新撰組の物語です。今回も、斎藤一と土方歳三の二人によって、交互に語られていきます。

江戸幕府はなくなってしまったのに、何の為に戦うのかーー。否、何の為に生きるのか。
圧倒的な量の武器と兵力を備えた薩長土肥連合軍に追い詰められていく、会津軍の闘いぶりを読み進めるにつれ、そんな疑問が繰り返し頭に浮かびました。本当に悲惨です。特に、守ると約束したのに守れなかった会津の人々のために、自決の道を選んだ白虎隊の少年たちの断末魔の苦しみは、涙なしには読めませんでした。味方の足手まといになることを避け、自ら死を選ぶ女性や年寄り達の姿にも……。
この時代、身分もあれば言葉も違い、「同じ日本人」という感覚はなかったと思いますが。同じく国を想い親しい人の幸福を願った人々が、殺し合わなければならなかった事実が、胸をえぐります。

相変わらず流麗かつ読みやすい文章で、あやかしの登場する場面も、殺陣もお見事です。
美男で有名だった土方氏の色気と大人の余裕も、斎藤氏の不器用な漢っぷりも、素敵でした。
今回は、女性達にも注目です。会津女たちの毅さには、感動いたしました。

重厚な歴史ファンタジーを求める方に、お薦めします。

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