第8話

「それで、これからどうするのだ?」


 着替え終わり、俺とルディア、そしてルオラはアジトの大広間にいた。

 そして、ルオラがさっきまで俺に散々啼かされていたとは思えないようなキリッとした表情でそう訊いてくる。


「これからねぇ……まあ簡単に言えば、とある貴族の領地を陵辱しに行く」

「とある貴族?」


 俺の言葉に、ルオラは訝し気な表情を浮かべる。

 その様子を見て、俺は過去のことを思いだした。

 静かに瞳を閉じ、少しして再び目を開ける。


「ああ――――俺のすべてを奪ったな」

「!」


 俺の言葉に、ルオラは目を見開く。


「ヴァイスの……すべてを奪った……?」

「……ハッ。こんな話、いくらでも転がってるんだろうが……俺は昔、孤児だった。でも、仲間がいたから一人じゃなかった。みんなが、まっとうに……そして必死にその日を生き抜こうとしていたのを――――そいつは、ただ孤児だから……汚いからという理由で殺したのさ」


 淡々とそう告げると、ルオラは絶句する。


「そんな……バカな……貴族が、そんなことを――――」

「有り得ないって? クソで有名な第三皇子の護衛をしてたんだろ? なら簡単に想像つくだろうが」

「それはっ!」

「世界はそうなってる。貴族共が正義。その他は悪だ。そこに強者と弱者という武力的要素も加わって、世界は成り立ってるのさ」


 何とも分かりやすい世界だ。

 弱いからすべてを奪われる。

 強いからすべてが許される。


「強者が何をしても正義なら、俺がその領地を荒らしに行っても問題ないよな?」

「ヴァイスは確かに強いかもしれない。だが、個人の強さなど数の前では何の意味もないのだぞ!?」

「それは俺を殺せるだけの数を用意してから言ってもらいてぇな」


 ま、何人来ようがザコはザコだけどな。


「ルディア」

「はい。少しずつ情報を集め続けた結果、ようやくかの貴族の屋敷の見取り図を入手いたしました」

「そうか」


 貴族の屋敷には、有事の際に逃げられるようにいくつもの抜け道が用意されている。

 それはその屋敷の貴族にしか知られておらず、そこを使われると面倒だからこそ今まで情報を集めていたのだ。

 まあ逃げられるようなことはしないが、用心するに越したことはない。

 正直逃げられたとしても何の問題もなく捕まえられるが、そんな労力に俺の貴重な時間をくれてやる気もねぇしな。


「んで? ソイツは街にいるんだよな?」

「はい。しばらくは街から出る予定もないそうです」

「そうか……んじゃ、明日からでも蹂躙を始めるか」

「なっ!? そんな簡単に決められることなのか!?」


 俺が軽い調子でそう言ったため、ルオラは絶句していた。


「何言ってやがる。俺が行きたいときに行き、殺したいときに殺す。それだけだ」

「だ、だが……やはり危険だ! どこの貴族を狙うのかは知らないが、やつらが抱える私兵に殺されるのがオチだぞ!?」

「あ? なんだ? ルオラ……お前、俺のこと心配してくれてんのか?」

「あ、そ、その……」


 俺はルオラの顔を掴んで覗き込みながら笑う。

 するとルオラは顔を真っ赤にさせ、俺の手から逃れた。


「ええい、離せ! 心配などしていない! 私はただ、事実を口にしただけだ!」

「ふぅん……まあそういうことにしといてやるよ。でもな、お前は一つ勘違いをしてるぜ?」

「何……?」


 俺の言葉にルオラは眉をひそめた。


「俺がいつ、兵力がないなんて言った?」

「は? な、なにを言ってる? ここにはヴァイスと、そこにいるメイドしかいないではないか!」

「厳密にはもう一人、お前の元飼い主のクソ王子から奪ったエルフもいるんだがな。……ついてきな、面白いもんを見せてやるよ」


 俺は笑顔を浮かべ、ルオラをある場所へと案内した。

 そこは俺たちのアジトの奥で、近づくにつれて独特な異臭が鼻につき始めた。


「な、なんなんだ? 一体、この臭いは……」


 ルオラはその臭いに顔を思いっきりしかめる。

 そんな中を進んでいくと、やがて分厚い鉄の扉が見えた。

 そして俺はそれを躊躇いなく開ける。


「――――さあ、着いたぜ?」

「――――」


 ルオラは、目の前の光景を見て呆然とした。


「ぁ……ぅあぁ……」

「……して……こ……して……」

「ああ……ああああああ……」


 その扉の向こうでは、オークやオーガと呼ばれる魔物たちによって蹂躙される女どもがたくさん存在した。

 女どもの表情にもはや生気はなく、虚ろな目を空に向けている。

 だが、そんなことは関係なしにオークやオーガは、自身の欲望を満たすために女どもを犯していた。

 中には女を頭から齧り、別の女を犯している個体もいる。


「ははははは! 久しぶりに見に来たが、ずいぶんと楽しんでるじゃねぇか! それにまた数が増えたか?」


 俺が近くのオークに声をかけると、オークは俺の存在に気づき、すぐに敬礼してきた。


『ブヒィ。ゴ主人様ノ、オ陰デス』

「そうか。それと、明日から貴族の街を一つ壊しに行く。新しい玩具が手に入るから、期待しとけ」


 俺がそういうとオークやオーガは雄たけびを上げた。

 その様子に満足していると、ルオラが鬼の形相で俺につかみかかってきた。

 掴みかかる前にルディアが止めようとしたが、俺はそれを目で制した。

 まあ、ルディアが止めるまでもなく、隷属化しているルオラにこれ以上の行為はできないんだがな。


「貴様あああああ! これはいったいどういうことだ!? 彼女たちは何なんだ!?」

「あ? んなもん、玩具に決まってんだろ」

「玩具? 玩具だと!? 貴様、人間を玩具だというのか!?」


 俺は掴みかかっていたルオラの腕を難なくほどくと、そのまま壁に押さえつけた。


「ああ、玩具だぜ? 適当に近くを通った商隊から奪った戦利品だ。それをどう扱おうが俺の勝手だろう? んなことより、ここのオークどもは俺が昔ちょっと躾けてやったら大人しく言うことを聞くようになってよ。それに俺に付いてくれば美味しい思いができるぞ? って言ってやると簡単に下についてな。『隷属』の天賜で隷属化してるから裏切ることもねぇ。どうだ? 兵力としては十分だろう?」

「外道が! 私はそんなことを聞いているのではない! 今すぐ彼女たちを解放しろ!」

「馬鹿か? あんなもん、オークやオーガのガキを生む以外に価値なんざねぇが、貴重な苗床だ。解放するわけねぇだろ? ま、価値がねぇのは処女とかそこらへんは俺が食い散らかしたからで……あぁ、結局俺のせいか」

「貴様……!」


 いいよなぁ。泣き叫ぶヤツを犯すのは。すげぇ楽しい。

 そして俺がいろいろとオークやオーガに仕込んでやったら、アイツら隷属化がなくても心の底から俺に敬服するようになったし、本当にいい奴らだよ。

 心の底から笑顔を浮かべる俺を見て、ルオラは血が流れるほど唇をかみしめる。


「悔しいか? ん? ……おいおい、いい顔じゃねぇか。そそるねぇ」

「下種が……外道が……!」

「うるせぇよ」

「がっ!?」


 強く睨みつけてくるルオラの顔を、俺は容赦なく殴った。

 それと同時に拘束していた腕を放してやると、ルオラはその場に崩れ落ちて呆然としながら俺を見上げた。


「そこまで言うなら助けてみろよ。そら、お前の手を離したぞ。んで、俺を含めて全員殺して逃げれるなら逃げてみな」

「う……うぅ……!」


 どうすることもできず、ただ涙をこらえるだけのルオラの髪をひっつかみ、顔を覗き込んだ。


「できねぇだろ? そりゃそれを成し遂げるだけの力がねぇからな。弱いって罪だと思わねぇか? 自分の意思を貫くことさえできない。強ければ、コイツらを助けられたのにな?」


 俺は髪を離すとルオラを見下す。


「そもそも、お前の元飼い主も似たように自分の欲望のはけ口として女を使ってんじゃねぇか。それをなんで俺やオークどもがすると悪いんだ? その無駄な正義感をクソ王子にぶつけてやればよかったじゃねぇか。ま、できねぇよな?」

「やめろ……やめろ……!」

「教えてやろうか? それはお前が卑怯で、弱いからだよ。自分が大事だから、権力者相手に口出しできない。だって弱いから。弱いから、口出しすれば次の被害者は自分だ。だからこそ、お前は見過ごしてきた。お前だけじゃねぇ、この世の人間すべてがだ。んで、俺は一番強い。だから、何をしても許される。好きなだけ犯そうが、殺そうがな。――――お前ごときの『正義』が、俺の『悪』の前に立つんじゃねぇ」


 俺はルオラの腹に蹴りを叩き込むと、ルオラは壁に亀裂を作ってそのまま気を失った。


「んじゃ、ルオラが起きるまで俺も遊ぶかねぇ?」

『オォォ! 主様、一緒ニ犯ス!』

『主様ノ技、見レルゾ!』



 オークやオーガたちに歓迎されながら、俺はただただ性欲処理のために無数に転がる女どもを犯して遊ぶのだった。

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