第7話

「……ぁ……私は……」

「起きたか?」

「っ!」


 ルオラをアジトに連れて行き、ベッドで寝かせて少し時間が経つと、ルオラは目を覚ました。

 俺が声をかけたことで一瞬体を硬直させたが、やがて先ほどまでのやり取りを思い出したのか、体から力を抜く。


「おいおい、どうした? 斬りかかってこないのか?」

「……どうせできないんだろう? それに、できたとしても、貴様に傷を付ける未来が浮かばない」

「ハハハ! まあそう暗い顔をするなよ」


 笑いながらルオラに近づくと、ルオラは真剣な表情で俺に訊いてきた。


「それで、私を隷属させてどうするつもりだ? ユースティア大帝国の情報でも聞くか? それとも、スパイ活動でもさせるか? 生憎だが、私は――――」

「はあ? 何を勘違いしてやがる? まずはお前を抱くんだよ」

「なっ!?」


 俺がハッキリとそういうと、ルオラは顔を真っ赤にした。


「な、何を言っているのだ、貴様! よもや、こんな無骨な女を抱くなどと……」

「無骨? どこがだよ」


 俺はルオラの全身を見つめるが、無骨だなんて一つも思わない。

 女にしては筋肉質だとしても、それがまた女性のしなやかさを演出しているし、顔もいい。

 抱かないといった選択肢が出るヤツは、不能なイ〇ポ野郎か男色家だけだろ。


「自分の女としての魅力を理解できてねぇのか? お前、相当な上玉だぜ?」

「じょ、上玉って……だが、筋肉質でごつごつしているだろう? 私なんぞを抱くより、もっと柔らかい女を抱いた方が――――」

「ゴチャゴチャうるせぇな。俺から見て、お前は十分いい女なんだよ。大人しく抱かれてろ」

「なっ……な……」


 俺の言葉に、ルオラは顔を真っ赤にしたまま、口をパクパクさせていた。


「い、いい女って……そんな風に言われたのは……その……初めてというか……」

「……何だお前、めんどくせぇな」

「しっ、仕方ないだろう!? そういう経験はないんだ!」


 俺が思わず半目になると、ルオラは叫ぶようにして言う。


「私を抱きたいなどと言ってくる連中は、だいたい女であればいいと言うような連中ばかりだ。だから、その……そんなハッキリと褒められたことが……」

「はぁ……」


 俺はため息を吐くと、そわそわしているルオラの唇を奪った。


「うむっ!?」

「大人しくしてろ。最高の快楽を与えてやる」


 一度口を離し、笑みを浮かべながらそう言った後、再び口づけをして、ルオラの口内を蹂躙した。


「んぁ……ふぁ……や、やめ……」


 最初は抵抗しようとしていたルオラだが、やがて俺の舌に屈し、徐々に体の力が抜け、キスをやめるころには息を荒げて、必死に何かに耐えているようだった。


「はぁ……はぁ……んっ!」

「どうだ? 俺のキスはよぉ」

「……わ、分からない……その……キスは……初めてだから……」


 おい、マジかよ。

 反応が妙に生娘くせぇとは思っていたが、本当に未だに男を知らねぇとは……。

 俺は自分でも分かるくらい、獰猛な笑みを浮かべ、そのままルオラを押し倒した。


「お前初めてなのかよ。んじゃあ、俺が全部を奪い尽くしてやる」

「うっ……」


 覆いかぶさるようにして、ルオラにそういうと、ルオラは顔を赤くして目を逸らした。


「そ、その……や、優しくしてくれないだろうか……? な、何も知らないから……怖いのだ……」


 ……こんなしおらしいヤツが、無骨とか面白すぎるだろ。

 妙におかしくて、俺は思わず笑ってしまう。


「クククク……まあ安心して身を委ねな。ただ、俺に溺れないようにだけ気を付けとけよ?」

「え?」

「お前を、俺以外じゃ満足できねぇ体にしてやる」


 そういうと、俺はルオラの服をはぎ取り、思う存分ルオラの体を貪るのだった。


◆◇◆


「ぅ……ぁ……」

「……ま、こんなもんだろ」


 俺はベッドに腰を掛け、水を飲んでいた。

 ベッドの上は、ありとあらゆる液体で汚れ、ルオラの体も白濁の液体で塗れていた。

 ルオラの表情は、どこか虚ろで、うつ伏せのまま、未だに体を痙攣させている。

 シーツには、純潔の証である、赤いシミも残っていた。

 そんなベッドを眺めたあと、しばらくの間ルオラが正気に戻るまで待つ。


「……す、すごかった……」


 やがて目を覚ましたルオラは、顔を真っ赤にしながらも、どこか夢見心地でそう呟く。

 しかし、その後、何かを思い出すと、恨めしそうに俺を睨んだ。


「……優しくしてほしいと言ったのだが?」

「あ? お前も悦んでたじゃねぇか」

「そ、それは……!」

「それに、手加減はしてたぞ?」

「アレでか!?」


 ルオラはどこか恐ろしいモノを見るような目で、俺のことを見つめる。


「わ、私の快楽のツボを的確に刺激してきて……なんだか、お前に私の体を作り変えられたような……私自身、知らない自分を知らされたようだ……」

「まあ、手加減したが、お前の全部を開発してやったからな。処女だったくせに、後ろの穴でも悦んでよぉ。お前、淫乱の才能あるぜ?」

「あ、あれは……!」

「安心しろよ。あそこまでお前が乱れたのも、俺が相手だったからだ。他じゃ、あそこまではいかねぇよ。その代わり、もう他の男とじゃ満足できねぇだろうがな」

「……もう貴様に穢された身だ。その上無骨な私なぞ、誰も抱きはせんだろう」


 何というか……ずいぶんネガティブな考え方しやがる。

 めんどくせぇと思いながらも、俺はため息をついて再びルオラの唇を奪った。


「ん!? ん……」


 いきなりのことで、最初は驚いた様子のルオラだったが、すぐに俺に身を委ねてくる。


「な、何故いきなり……」

「お前は俺の奴隷になったんだ。そして、お前の主である俺が、お前の魅力を知っている。だからお前を抱いた。それともお前……俺だけじゃ不満だってのか?」


 どこか威圧するようにそう言ってやると、ルオラは顔を赤くした後、俺に体を預けてきた。


「……そ、そんなことはない。……すまない」

「ハッ。分かればいい」


 仕方なく、しな垂れかかってきたルオラの頭を撫でてやっていると、ルオラは嬉しそうに顔を緩めていた。

 久々にゆったりとしたときを過ごしていると、ルオラは恥ずかしそうにしながら訊いてきた。


「そ、その……男は皆、お前のようにすごいのか?」

「おい、お前は俺の奴隷って言ったよな? ご主人様や旦那様って呼ばされたくなけりゃ、いい加減名前で呼べ。様付けなんざ、ガラじゃねぇから呼び捨てを許してやるよ」


 まあ、ルディアは特殊だがな。

 ふと頭の片隅でそんなどうでもいいことを思っていると、顔をさらに赤くして、ルオラはおずおずと口を開いた。


「あ……う……ヴァ、ヴァイス」

「なんだ?」

「だから……その……男は皆、ああも女を快楽の渦に叩き落とす事が出来るのか?」


 何かに怯えた様子で、ルオラはそう訊いてくる。

 まああんだけ乱され、それが全部の男に可能かもしれないって思えば、女なら怖いだろうな。


「言ったろ? 俺が特殊なんだってよ」

「それは……」

「【色欲の体】――――俺の天賜の一つだ」

「【色欲の体】?」


 聞いたことのないであろう天賜の名前に、ルオラは首を傾げる。


「効果としては、性交渉する相手の体と最も相性のいい体に作り変えたり、相手の感度や性欲を自在に操ったりできる」

「な、何て卑猥な天賜なんだ……」


 俺の口から語られた天賜の内容に、ルオラは思わず顔を引きつらせていた。


「他にも、俺自身の精力を無限にしたりと、何かと便利な天賜なんだぜ? とはいえ、今回俺が発動させた効果は、精力無限だけだがな」

「え……そ、それじゃあ……」

「もちろん、ルオラとヤッた時の快楽は、全部俺自身のテクだけってことだよ」


 意地の悪い笑みを浮かべてやると、ルオラは顔を真っ赤にして伏せてしまった。


「……手加減されてなかったら、どうなっていたんだ……」

「そりゃあ、快楽の奴隷じゃねぇか? それはそれで面白そうだけどよ」

「わ、私は嫌だぞ! そんなのは!」


 必死に懇願するルオラを見て、満足した俺は安心させてやる。


「冗談だ。お前には、俺の駒として動いてもらわなきゃ困るからな」

「そ、そうか……」


 ……ルオラのヤツ、安心したようで、どこか残念そうな表情だな。

 まあそのうち、ギリギリの快楽を攻めてやろう。

 俺とルオラは、この後着替えると、アジトの大広間へ移動するのだった。

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