第39話
「ほら、タケオ君たちも触ってごらんよ。かわいいよ」
かわいいって言われても、いきなり触るとか無理なんですけど。
しかしここで尻込みしたら男がすたるのでおれは平静を装ってクロのそばへ寄り、オトタチと並んだ。理子と善太は少し後ろで様子を伺っている。オトタチは俺の手を取り、クロの頭へと持っていく。オトタチの少しひんやりとした手の感触でおれの恐怖心は薄らいだ。おそるおそるその頭に触ってみた。おお、フサフサしている。気持ちがいいし、手触りはまるで絹のようになめらかだ。
クロはそのままおれを見上げてグウグウ言っているので今度は首に手を回してみた。ゆっくりとマッサージするように撫でてやるとクロは目を目を閉じてもたげていた首を両前足のあいだにうずめた。俺はそれにつられてしゃがみこむことになったが、クロは相変わらず機嫌が良さそうなのでおれは後ろを振り向いて理子と善太にこっちへ来い、と目で合図した。二人はおれがクロに何もされなかったので安心したのか、特に理子の方はクロに近づくと背中や肩も撫で始めた。
「お兄ちゃん、おとなしいね。最初はビビったけど、こうして見ると結構可愛いね」
理子は大胆にもクロの背中に上半身をもたせかけるようにして撫で始めた。クロは相変わらず目を閉じてグウグウ言っている。内心おれは恐れを知らぬ理子の行動に驚きつつ「そ、そうだね」と答えた。
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