第38話

 どうみても狛犬だった。神社の入口にいるあれだ。ただ、その大きさは桁外れだった。カバくらいの大きさはある。

 それを認めた俺たちが思わず後ずさりすると突然

 「わ!」

 とオトタチがおれの肩に手をかけた。

 「わ!びっくりしたー!びっくりしたー!」

 おれは右手右足を同時に上げ、思わず信号の「横断歩道を渡る人」のような格好で驚いてしまった。

 オトタチはそんなおれの姿をみてケラケラとお腹を押さえて笑っている。そんな彼女の姿を見たおれは、嬉しいやら恥ずかしいやらで頭をかいて苦笑いするしかなかった。

 「ごめんね、そんなに驚くとは思わなかったから。大丈夫、この子達はおとなしいから。ほら、近づいてごらん」

 そう言ってオトタチはおれ達を倉庫の中に招き入れ、黒い大きなやつの方へとおれ達を誘導した。俺たちは腰が引けながらオトタチの後ろに隠れるようにして近づいた。

 「こっちの黒い子はクロノミハカシ。向こうの白い子はシロノミハカシっていうの。まあ、クロ、シロって私は呼んでるけどね。クロ、いい子にしてた?」

 オトタチは造作もなくクロと呼ばれた狛犬のもじゃもじゃとした頭や首を撫で始めた。クロはオトタチにされるがままでそのうちに目を閉じ、グウグウと低い声を立て始めた。犬猫と同じように、どうやら気持ちが良いらしい。

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