第8話戦闘

 俺が得た肉体の本質だが、見た目は小五ロリ、中身はロリババアだった。年齢は二百五十歳、人間に精神年齢を換算すると、二十五歳のようだ。

 エルフでの二十五歳は、中学生くらいにあたる。

 エルフとしては子供だが、人間社会では十分に大人の扱いを受けるようだ。

 断片的な記憶情報だったが、こっそりと人間の町に行き、酒場でアルバイトをした経験が垣間見えた。

 見捨てた大人の方は、どうやら実の兄のようだ。

 この辺りはグリーン・ドラゴンという強いモンスターのテリトリーに近く、俺が生えていた場所はギリギリ、そのテリトリーの外だったようだ。


 赤い魔力を放つ花は、熱を帯びる薬品の材料で、銀色の魔力を放っていた草は、様々な薬品の品質を向上させる材料の一部。

 このように、植物に少しだけ詳しくもなった。

 今居る森は、ドラゴンだけでなく、様々なモンスターがいる。

 猿や狼、スライム等がいるものの、蜘蛛や蟻等の虫系が多い。その中でも強いのがグリーン・ドラゴン。

 植物系も多いが、棲息域は決まっているので、近付かなければ脅威にはならない。

 たまにゴーレムが自然発生するらしい。

 エルフはこの森の近くに住み、ドラゴンのテリトリーを避けて、森の中で採取や狩りをしているようだ。


 グリーン・ドラゴンが、どの程度強いのかは分からなかったが、概ねファンタジーの世界に準じた強さなのだろう。

 陸の女王とかの親戚なら、装備次第で十分狩れるな。


 俺の肉体を捜すかどうかは分からないが、なるべく人目を忍ぶようにしよう。

 ほとぼりが冷めるまで、森の中で暮らすか。

 下手に動いて、凶暴なモンスターのテリトリー内に入ると、多分負けて死ぬ。

 まずはテリトリーの範囲と、生態系の調査・観察による情報収集だ。

 衣食住はどうにでもなる。

 必要なのは、敵の見極めと自分の戦闘力。

 自分の事は追々でも確認出来るが、敵対するモンスターの事が知らな過ぎる。

 慎重に行動しなければならない。

 できれば植物系モンスターの、テリトリーに向かいたいところ。同族なら、弱点も共通しているので、自分の欠点が分かるはず。

 可能なら、その植物の長所を取り入れたい。そうすれば、不利な地形や環境にも適応出来るはず。

 そう、この森の付近で生まれた雑草である以上、人間のような適応力が無いのだ。

 知識があっても、活かせないようでは雑学止まり、呆気なく終わる。

 身内を知りつつ、虫や鳥と共生する。これなら、ほぼ当初の目的にも沿う。

 では、気配を殺して歩みを進めるか。


 一日辺り十メートル。それが俺の進行距離であり、安全第一を徹底した目安だ。

 周囲を警戒しつつ、魔法陣を足先の根っこで描く。時には安全を確認した木々の幹や、岩にも根っこを伸ばして描いた。勿論、目立つので隠しておく。

 動けなかった雑草の時と比べれば、これでも急いでいると言えよう。

 比較的ザコのモンスターからなるべく見付からず、木々の上に居るモンスターや人の気配に注意し、安全第一で行く。石橋を叩きに叩いて、一度粉砕してから作り直し、また叩く。叩く際に手につられて、体が進んでいるのが現状である。で、また粉砕と修復作業。

 お陰で、ただの一度も不意打ちは食らわなかった。

 常に先手を取れたし、上手く身動きを封じたモンスターを、囮に使ったりも出来た。

 魔法陣が安定して発動するので、望む属性魔法が発現する。

 倒したとしても、養分に変えられるし、スライムのゲルボディを利用した、簡易旅行カバンを作ったりしたので、高価そうな素材は保存している。

 モンスターを養分にすると、残りカスがどうしても出る。その残りカスには、稀に結晶のような石があったりした。

 稀にあると言う事は、それだけでレアなモノかもしれない。それに、結晶を利用出来れば、武器に魔法を籠めたりしたモノや、魔法陣を込めた道具が作れるかも。

 そう、例えばオートマトン。いや、ゴーレムでもいいか。

 科学的なロボットは無理でも、魔法的ならゴーレムとかなら作成可能だろう。

 ソフトの書き込み方法は知らないが、ゼンマイ仕掛けのように、手動操作で操る事は出来るはず。

 ゼンマイ仕掛けが難しいなら、今のように寄生すればいいのだから。


 木々に隠れながら進んで、三日が経つ。

 根っこを先回りさせて、オーラの索敵網を展開し安全確認。勿論、寄り添っている木にモンスターが居ないかの、確認もきちんと行う。

 だが、根っこを後方や広域に伸ばしたままでは、魔法陣の維持管理も大変なので、後方十メートル前後以外の、踏破した部分の根っこは回収したり、他に回している。

 樹木も一々侵食したりはしない。樹木に化けたモンスターかどうか、木の上に鳥や虫の魔物が居るか、その脅威を取り除くべきか、等を調べたり思案していく。

 はっきり言って、根っこの魔法陣で土属性魔法を連発すれば、木を丸々取り除く事だって可能だ。土を残さずどかせば、末端の根っこごと移動するんだし。

 それは障害物を、強制的に排除出来るという事でもある。だが、それはあまりにも目立つ上に、地形の変化が凄まじい。何より、森に住む魔物や動物を怒らせてしまう。

 時間は掛かるが、土と木属性の魔法を行使すれば、森を荒れ地に変える事だって出来るし、森を更に大きくして樹海にする事も可能となる。


 さて、また野生のスライムが現れた。

 見た目は一抱えもあるわらび餅。目や口は無いが、取り付いて直接的に消化や窒息をしてくる。不意打ちによる奇襲が得意。足音もなく忍び寄るので、一人ではほとんど防げないし、咄嗟に正しい対処も出来ない。

 戦ってみて分かったのだが、闇雲な物理攻撃は効果が薄い。拳で殴っても、そのまままとわりつく。枝で突いたり、払ってもムダ。

 炎や氷の魔法に弱いが、魔法陣は威力と範囲がマチマチで、狙撃には向かない。これは単に、技量不足なのだろう。

 毒も消化液で分解されてしまう。が、消化液で消化液の濃度を緩和する事は出来た。

 また、膵臓液と胆汁を含む消化物は、アルカリ性なので中和剤としても使える。そもそも、人間の排泄物はアルカリ性だから、糞食行為は味覚を壊す。

 亜人は人間に近くて遠い別種の存在だが、体内の構造はとても似ている。だからアルカリ性にもなるというだけだ。

 しかし、これも自滅しやすい。酸性とアルカリ性に対する耐性が、まだまだ弱いからダメージを負う。別に、好き好んで耐性をつけたい訳ではないが、自滅技というのは戦術的に幅を狭めるので、どうにかしたいところだ。


 スライムには核となる部分があるので、そこを潰せば形を保ったまま死ぬ。

 試しに網目にした根っこで掬い取ろうとすると、核を奪われまいと抵抗してきた。まぁ、消化液は根っこを通して、別の場所から捨てる事で対処しておく。

 すると、水も滴る餅ボディは、ゼラチンやゼリー体のような、弾力があるモノに変化した。余分な、というか、本来あるべき保水性すら、消化液として使ってしまい、乾燥っぽくなって固まったのだろう。死因は脱水と思われる。

 単細胞はまるで暴走エンジンのように、こうと決めたら行動を省みない。その本質が、ザコと馬鹿にされる由縁でもあるのだろう。


 残ったわらび餅は中身を中和して、根っこの魔法陣を仕込み、アイテム・ボックス代わりへと加工する。

 収容できる容量は、だいたい一キロを目安にしている。スライムだった時のサイズより小さいし、材質が水分を抜いたゼリー体なので、収縮性や強度が心許ないのだ。

 結晶や砂鉄を入れるので、角や毛皮を入れる訳では無いし、今はこれで十分。

 それに、荷物は嵩張ったり、少ないほどいい。機動力を阻害しにくいから。


 砂鉄は、木の棒に雷属性の魔法陣を刻む事で、電磁力のようにして集めている。

 一回では取れる砂鉄も微々たるモノだが、回数をこなして、砂鉄を山盛りにしていく。

 今度は砂鉄を頑張って熱して、重力の魔法陣の上に置き、結界で包み込んで、徐々に結界を小さくしながら圧縮する。

 併用するのは、片方だけでは圧縮する威力が弱いからだ。結界を小さくしていくと、ふとした拍子に中の物質がはみ出てしまう。これは結界が移動する際に、結界の強度が脆弱になっているようなので、改善の余地がある。

 硬いままだと動かない、動かないと包めない、上手く包めないと圧力が分散してしまう。このような感じなので、重力による圧力の補助が必要となってくるのだ。


 ブラックホールという、超重力を発する天体がある。その重力は光すら逃さない。光速というモノでも捕まったままなのである。更に時間すら凍りつく。

 この事から、確かに重力だけでも、圧縮する事は出来るだろうが、重力の影響範囲や制御に失敗すると、惑星が持たないと思われるので、超重力単体の運用は危険だ。

 圧縮して固める、いや、分子間運動を停止させ、分子と分子の隙間を詰めるだけなら、氷属性での凍結もある。氷は水という液体が固体となったモノだ。

 水は水素と酸素の化合物なので、熱を加え続けると水や氷は燃え始める。水や氷の状態を維持し続けたら、という前提が付くものの、溶けない氷とかはありそうなので、科学的ごり押しだって出来そうだ。


 砂鉄を鉄塊にして、各属性の基本となる紋章を象る。そして、そのスタンプをある程度量産しておく。

 紋章だけでは、魔法陣として機能しないただのマークだが、根っこで術式を追加すれば、各属性の魔法陣が出来上がる。

 紋章型魔法陣の、基本部分を至るところに設置しておけば、即席の魔法陣や罠として使えるのだ。

 これは魔法陣のストックをそのまま持つと、いつ敵対する者に利用されたり、奪われたりするか分からないので、リスク分散と自衛の保険を兼ねている。

 紋章だけでは、どのような魔法陣なのか全貌が見えず、利用しようにもその紋章が根底にある以上、あからさまにあるので、罠ともとれる。

 仮に利用されたとしても、魔法陣は描くのに時間が掛かるし、発動するまでのタイム・ラグもある。

 実戦では、あまり実用的とは言えない魔法技術だろう。

 俺でも一から根っこで描くとなると、多少なりとも時間をとられる。詠唱式の魔法の方が、魔法陣よりも早いのだ。

 まぁ、無詠唱魔法の方がもっと早いのだが、威力は詠唱魔法と比べると弱い上に、失敗する確率も上がる。


 おっと、蜘蛛型モンスターが現れた。

 コイツは糸に注意しなければならない。尻から出す糸は粘着力が強く、口から出す糸は強靭だ。

 火の玉を貫通するので、耐熱性が高い。尻から出す糸は簡単に燃えたが。

 いや、マジでちょっとびっくりした。

 火属性魔法が効かない虫かよって、思ってしまうくらいには、狼狽えてしまったのだよ。

 火ではないが、毒が効かない虫がいる。芋虫だ。

 ほとんどの虫の幼虫でもある芋虫には、生物由来の毒が効かない。

 さそりの神経毒すら効かないが、細菌やウイルスには弱いらしい。

 戦った事はまだ無いが、俺と芋虫との相性は悪いだろう。伊達に草はやってないという事だ。

 バッタや芋虫等、草や葉を食べる虫には、めっぽう弱いと思われる。

 そもそも、肉食の虫は草や花に擬態する事はあっても、その花弁や葉を食べる事はない。

 寄ってくる草食の虫を捕食するのが目的なので、擬態する相手にケンカを売る事自体が、ちょっとあり得ないのだ。

 今はエルフに冬虫夏草しているので、その肉目当てに蜘蛛とかにも狙われているだけだ。

 本来なら相手にもされない。それが自然で、俺が不自然なのだろう。


 蜘蛛の口から出す糸を避け、外れた糸を木の棒にて巻き上げようと、クルクルと回して絡め取っていく。

 蚕の吐き出す糸と、蜘蛛の糸は、俺にとっては同等だ。便利な天然素材でしかない。

 回収していると、尻から出された糸で作った蜘蛛の巣を、蜘蛛が器用に振り回して、直接捕縛してきやがった。

 範囲が大きく、遠心力による速度も結構あるし、何より相対する距離が近い。それを全力で避けながら巣の端を腕で受け止め、こちらも腕を回しつつ回収する。

 効果が薄いと蜘蛛は思ったのだろう。糸を切って、牙で仕留めようと動く。

 だが、俺は棒を放してスタンプを握りしめ、そのデカイ腹部へと突きを入れる。と同時に手から生えた根っこが、紋章を囲むように術式を描き、蜘蛛は自らに刻みこまれた魔法陣によって吹き飛ぶ。

 風属性の魔法陣で、空気の塊を至近距離でぶっぱなしたのだ。

 焼くと臭うし、凍らせると溶けるまでに時間が要る。その臭いに寄ってくるモンスターがいるかもしれないし、凍りついたままの蜘蛛を発見されると、戦闘があったという事が丸分かりだ。

 なら、遠くに飛ばしてしまえばいい。飛ばした方向に誰か居ても、飛んで来た方向へと向かっている間に、別のモンスターと遭遇するだろう。

 あるいは、蜘蛛が戦って負けたのだとか、追われていると予想するかも知れない。


 吹き飛ばすだけなので、おそらく魔法によるダメージは低いだろう。落下した後、受身を取れば、地面を転がる事もない。木にぶつかれば痛いだろうが、ソコまでは知らない。


 蜘蛛の糸はそのままだと剥がすのが難しい。ただし、俺は消化液で接している部分を溶かせるので、腕の糸は簡単に取れる。棒に絡めた糸もなんとかなる。

 新しいスライム・ボックスに仕舞っておこう。


 木を調べていると、鳥の巣を発見した。

 巣には親鳥と卵がある。

 ヤバい、天敵だ。草に飛行はアカンてっ!

 目と目が合い、俺が身構えると、鳥も身構えた。


 ん? ……あぁ、見た目がエルフだから、警戒しているのか。

 鳥の敵は人間っていうね。植物は共生相対だし。

 まぁ、確かに、植物と敵対する鳥の方が少ないのだが、ゲーム脳だと相性が云々となるのだよ。

 葉っぱのカッターが当たらない! 種のマシンガンがジャムった!

 それはさておき、別の木に向かおう。


 猿型モンスターと狼型モンスターが現れた。

 コイツ等たまに共闘というか、猿が狼に跨がっている時があるんだよね。

 狼の機動力に、猿の頭脳。更には武装している奴も見掛けた。

 普通に戦うと動きに着いていけず、翻弄されてしまうだろう。

 まぁ、俺はただのエルフじゃないので、接触したら先手を譲る様にしている。

 近付いて飛び掛かって来る事が多いし、個別だと狼が最初に仕掛けたりする。ちょっと頭が良いと、猿の間合いまで、狼が先行して待機し、同時攻撃をしてくる事も。

 しかし、そんな知恵がある猿でも、魔法陣や魔法を使う事はない。

 故に、飛び掛かって来るまで待ち、相手の攻撃に合わせて、魔法陣で土の壁を作り出す。

 壁の強度は脆い。空中では方向転換が効かないものの、飛び掛かった後で壁を蹴られると、回り込まれる可能性がある。

 それを防ぐために、わざと脆くしてあるのだ。

 壁に激突しても貫通はせず、足や鼻先が埋まる程度。だが、壁の前に足を着ければ、ソコで戦闘は終わる。

 壁の前に落とし穴を作り出す、というか、壁の質量分、落とし穴が出来上がるようにしているのだ。

 後は壁を前に倒して、猿と狼を生き埋めにするだけ。

 生き埋めの状態で、地面を元通りの固さにすると、抵抗すら出来なくなる。柔らかいままなら這い上がれるだろうが、その猶予を与えてやる事はない。

 存在ごと地中に消すだけだ。

 簡易的にだが、周りの地面と同じようにカモフラージュもしておく。戦闘の痕跡すら残さない。


 問題は弓矢持ちの猿だ。

 飛び道具そのものがズルい。魔法よりも早く、遠距離攻撃出来るって、無視出来ない脅威だ。

 矢を避けるのが、狼のせいでかなり難しい。

 単体なら大丈夫。命中率が低いようなので、当たらないように動けるため、弓矢持ちの猿は魔法陣で叩ける。

 しかしコンビは別だ。

 狼を先に潰すにも、矢が鬱陶しい。当たらなくとも、猿が弓に集中すれば、命中率は良くなってくる。

 狼も自分の間合いで立ち回り、中々飛び掛かって来たりはしない。

 かといって、魔法陣は細かい微調整が難しいので、咄嗟の方向修正が上手くいかず、魔法が外れてしまう。

 ここで、身体強化魔法の出番となる。

 木の棒で狼を殴る、飛んで来た矢を打つ、猿に近付いて叩く。

 このように三拍子揃った武器は、使い勝手がとても良い。

 え? 今までのモンスターもそれで良かった?

 脳筋プレイと、理詰めのごり押しは違うのだよ!


 弓矢は使えないが、火を起こす道具にはなる。魔力を使わないので、摩擦熱による着火は魔法の痕跡も残らない。まったく、道具は最高だぜ!


 しかしながら、俺は火に弱い。それに煙が立ち上ると、そこに人がいるという事を教えているようなものだ。

 長時間の使用は、なるべく避けなければならない。


 冬虫夏草ライフを始めて、数日が経ったある日、他のエルフを集団で見掛けた。

 夜間は木に登り、雑草然とした感じに、肉体を木に固定している。それが功を奏したのだろう。

 木と同化しているように、カモフラージュのためにギリー・スーツまで作った上で、気配は雑草。

 木を隠すなら森の中も同然なので、そう簡単には見つからない。

 この集団は捜索隊と思われる。子供の安否確認が主な目的で、そのついでに狩猟や採取をしているようだ。

 今日はこのまま動かないでおこうか。

 それとも、捜索隊を追尾し、エルフが使う森の出入口まで行くか。

 ……着かず離れずで動くと、発見されやすくなる。視線だけは遮れない。オーラではそれこそ逆探知されかねないだろう。

 かといって別行動して、肉体をこのままにしておくと、モンスターに喰われるかも。

 捜索隊を相手に立ち回ると、負けが濃厚だ。情報があまりにも足りない。


 ……よし、居なくなるまで、しばらくの間はここに留まっておこう。

 連中は子供の安否に繋がるモノがあれば、そこに少しだけ留まるかもしれないが、あの場所はグリーン・ドラゴンのテリトリー内だ。

 勝手にドラゴンが追い払うか、ドラゴンから何か聞き出すかもしれない。

 問い詰められたとしても、ドラゴンは死体の行方までは知らないし、俺の存在すら忘れているかも。

 というか、俺は認識すらされていないだろう。


 ただ、これにも問題点はある。

 精霊や妖精に頼る方法があるのだ。異世界ファンタジーでは、使えればチート並みの情報網と運用方法がある。舐めて掛かると墓穴を掘るだろう。

 対策としては事前に、妖精や精霊と、仲良くなっておくしかない。

 精霊を敵に回すと、ドラゴン並みに何も出来ないだろう。

 手立ては、ある。あるのだ。

 精霊だろうが妖精だろうが、魔力がなければ顕現出来ない。また、大気中の魔力を辿ったり、それで回復したりするのであれば、大気から魔力を無くしてしまえばいい。

 大気中に魔力が無いと、継続戦闘も回復もままならないのだ。

 受肉していれば話は変わるが、そう簡単に受肉するための器は用意出来ない。

 チート並みという事は、それだけ代償も高くつく。大魔法の行使に、魔法使いが何人も必要となるように。

 常に見合うだけの代償や対価がいる。それが等価交換なら、用意出来ても等価とは限らない。多く用意しても費用対効果が釣り合わない。だから、手足を持っていかれる。

 詰まる所、エルフの捜索隊に、精霊や悪魔を差し向けるだけの余裕はない。

 それでも他の可能性は残るので、魔力的に寄せ付けず、かつ、物理的にエルフを欺く準備をしておこう。

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