第16話〜第20話 た行

第16話 たすけられた  たましいは  たくましい



火星は すでにチーナ族の  支配下となり  

住民たちは 言語翻訳の不適合で モジバケ化している


急がなくては


エナから  準備が整ったと 連絡が入った


「すぐに やってくれ!」



ピピッ!



各惑星をつなぐ 衛星領域は 電子的相互融合現象により

モジバケ感染を  まぬがれた これで 拡散の心配はない

もう本は安全だ だが 各星の住人たちを 救ってあげなければ


トモダチウィルス融合の スペクトルエナジーは完成し

あとは 発射するだけだ


その時  基地に  言語爆弾が 投下された


「うわー!ジジイが やられた」


ジジイは 手と足が バラバラになり

ニンジンビーム砲の横で  倒れている


ビームは無事だ  ぼくは  発射を急いだ


「発射するぞ!」


「サン」


「ニー」


「イチ」


「発射!」



次の瞬間宇宙は 真っ白に染まり やがて 月から見下ろした 

地球にも  大きな雲が できはじめた


静けさが ただよい ポツポツと 雨が降り始めた


「成功だ!」


雨雲の隙間から 地球が見える エナは 雨が 大好きで 

トモダチウィルスの混じった 白い雨の中で 転げまわって 

走り回って 大喜びで 踊っていた


「これで みーーーんな  ともだちだ!」


だが  ジジイは倒れたまま 動かない  みんな 悲しくて  泣いていた


エナが  地球からもどり 無残な  ジジイを見て・・・





ゲラゲラと  笑い出した





次の瞬間  ジジイのからだから 手と足が  ニョキニョキ  生えてきた


ジジイは何事もなかったように むっくり起きて  腰を3回

トントントンと  叩いた


「そっか  ジジイは  無限になったんだっけ」


窓の外の空を見ると  綺麗な虹が かかっていたのですよ






次の日 顔だけくんは からだを連れて 地球にやってきた


「顏だけくん 無事だったんだね」


顏だけくんは うれしそうに言った



「○×P▽※■   △$~&6 ---- G-●▽F※&  ○◼︎!!!」




「あら モジバケ化  直さなきゃね」



おしまい




第17話 ちくおんは ちきゅうの ちから



公園を散歩していた時のこと


「ねぇ それ もしかして ギターかい?」


金髪の青年が ギターを持っていた。


「でも ここには オトがない どうする気だい?」


エンタルネットの世界には クウキがなく オトが伝わらない

この世界には オンガクが 存在しないのだ

会話は ダイレクトデジタル通信で お互いにコトバを伝えている


すると 彼は カバンの中から つまみのたくさんついた

黒くて四角い箱を   取り出した そして もうひとつを ぼくにわたした


「これ ヘッドホンかい?」


ぼくは それを耳にあてた


「こんにちは ぼくは ヴァナビー ミュージシャンさ」


と口の動きとピッタリの声が ヘッドホンから聞こえてきた


「君はニンゲンかい?」


「そうだよ ぼくのヌシは 音楽家さ」


と言って ギターを弾き 歌を歌った


「ポロ~ン ラララー リ~~」


ぼくは ずいぶん 久しぶりに聞いた  オトとオンガクに おどろいた

エナに 聞かせなきゃ


「ねぇ ヴァナビー 一緒に来てくれないかい?」


「どこに行くんだい?」


「エナのところさ」


ヴァナビーを連れて うちに帰った


「エナ! これを聞いて!」


嫌がるエナに 無理やり ヘッドフォンをつけて

ヴァナビーのギターで ぼくも歌った


「ララリー リーリー ララールー」


エナは目を真んまるにして おどろき 楽しそうに おどりだした


エナは この感動を エンタル地球の みんなに伝えたい と言い出した


「ヴァナビー この箱は どういう仕組みなんだい?」


これは  チクオンといって アンプの役割をするのだそうだ

仕組みは ギターの弦から   ボディーに伝わる アナログ信号の波形を

デジタルNQ4信号に変換し NQ4信号からエンタルネットの

サーバー熱源を利用して 熱の微妙な変化を 波動に変換し  

ヒートヘッドフォンを通して プログラムに伝えているらしい


この感動を  みんなにつたえる いい方法はないか 

脳博士の研究所で ぼくとヴァナビー エナ ジジイ 

脳博士の5人で  会議を開いた


「オンガクを 世界の財産として   みんなに伝えようじゃないか」



つづく




第18話 つたえたいこと つなげたいもの



サーバー熱には  限界がある もっと大きな熱源が必要だ


脳博士の電極を ジジイの脳につなげ 2人の天才が 

何か話し合っていたのだが ようやくジジイが電極を外した


ジジイによると 大きな熱源の供給は このエンタル地球の核から 

発生している 地熱エナジーを 利用できるのだと 

つまり この地球自体が 大きなアンプになるわけだ

地球にいる  すべての人が 地球の熱エナジーの波動から

オンガクを感じ取ることができるのですよ


まずは チクオン装置を作ろう


ヴァナビーが設計図を書き ジジイがそれをもとに  チクオン装置を

作成した  ヴォリュームやゲインは 自動制御出来るよう 

エナがプログラムを加えた


チクオンの電極を ぐるぐる公園に 設置されている  地球の核につながる 

ヒートサプライシステムにつなげ チクオンのスイッチを入れた


ウォーン ウォン ウォーン ウォン


地面から 今まで感じたことのない 波動力を感じる


「成功だ! やったー ララリー ルルルー」

 

ヴァナビーも ギターを持って 歌い出した


「ララリー ルルルー ララー」


するとエナが


「う ああ あ う うう」


「エナ 口を開けて のどをふるわせるんだよ」


「らら りー あ あ るる うー」


「その調子だ!」


エナは 数分で 声の出し方をマスターした


「オンガク すごーーーーーい!」


ぼくは はじめて エナの声を聞いた


「エナ ぼくの声が 聞こえるかい?」



町中の人が 公園に集まってきた 奇妙な うなり声が しばらく公園に

ひびいていたが  やがてそれは 歌にかわり みんなの大合唱がはじまった


「ララリー ルルルー オンガクは すばらーしいー」


ヴァナビーが 即興で曲をつくった


「ララリー ルルルー みんなー ともーだちさー」


朝まで 町のみんなの 大合唱がひびていた

そして チクオンを作った ぼくたち  5人に感謝の言葉をくれた


「4人とも  ありがとう」


ってね。


「え? 4人?」



おしまい




第19話 てをひろげて てをつなごう



ぼくとエナが 手をつないで 歩いていたら


小さな男の子が ぼくの手をひいた


エナは すれ違った女の子を呼んで 手をつないだ


おかあさんが  子どもの手をひいて 歩いていたら


エナの隣の女の子が 子どもの手を つないだ


無限ジジイと なみだババアも 手をつないで歩いてる


そして ぼくの隣の男の子の 手をとった


三色ウシを連れた 宇宙ウサギも 加わった


ぐるぐる公園の  はしからはしまで 人々が手をつないで


公園の向こうから 長い列も加わった


いつのまには このエンタル地球を ぐるっと一周


手をつないだ 人の大きな輪ができた


今日は 平和記念日

エナが 平和の願いを込めて エンタルネットから 

この地球を 独立させた日


ずっといつまでも この平和が つづきますように

世界の争いが なくなりますように



おしまい




第20話 とけいを  とめて



「おきて!」 エナの声で 目覚めた


「トキオが 行方不明なの」


「トキオって?」


エナの話では・・・

このエンタル世界は 常に一定の間隔を保った デジタル時間によって 

制御されているのだが それと並列して アナログ時間が流れている

そのアナログ時間の  プログラムがトキオ

トキオは リアル世界のアナログ時間を元に プログラミングされており 

デジタル世界でも ゆったりした 時間感覚を生み出す


忙しい時や 夢中になっている時は あっと言う間に  時間がすぎて

退屈な時や 嫌な作業中は なかなか時間が  すぎない

これがアナログ時間なのである このとき 視覚的には見えないが 

トキオがやってきて  時間を操作するそうだ


ぼくのような アナログなアバターニンゲンが 

デジタル世界に存在できるのも トキオのおかげであるらしい

しかし デジタル時間と アナログ時間を 融合することは 

エナや脳博士でも むずかしく デジタル時間が流れている間は

トキオは 視覚存在が 不可能なのだ

エナは 30日に1度 デジタル時間を止め アナログ時間との 

時間調節のため1日を トキオと過しているのだそうだ


早朝 デジタル時間の不具合が起こり 時間を停止させ 

エナが トキオに会いにいったのだが どこにもいない

トキオの時間が止まると デジタル時間も 止まってしまうかもしれない


「トキオを 探して!」



つづく

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