くまのプーさんVS三毛別羆事件の人食い熊

ロッキン神経痛

くまのプーさんVS三毛別羆事件の人食い熊

  ――ここは100エーカーの森。

 今日もプーはラビットの家に遊びに来ています。

 たくさんの蜂蜜をお腹いっぱい食べたプーはもうご機嫌。


「ねえラビット、もうどこにも蜂蜜がないよ」


「当たり前じゃないか、プー。お前がぜーんぶ食べてしまったんじゃから」


 そう言ってラビットは、空っぽの壺を指差しながらあきれ顔です。


「そうだよ、プー。もうお家に帰らないと」


 一緒に遊びに来ていたクリストファー・ロビンも、プーの手を引きました。


「おっと、あんなところにまだ開けてない蜂蜜があるよ」


 おやおや、部屋の隅に小さな壺がおいてあるのにプーが気づいたようです。


「いかん、プー。あれは今日、ぬかるみで拾った壺なんじゃ。きっと中身が腐ってしまっておるよ」


「大丈夫、ぼく、蜂蜜ならなぁんでも食べられるんだ」


「ねえ、プー。僕もあれは開けないほうがいいと思うなぁ」


「待っててクリストファー・ロビン。ぼく、あれを食べたら帰るからさ」


 プーは舌をぺろりと出すと、勢い良く壺を持ち上げました。

 

 ぬかるみの泥によごれた壺は、思ったより軽くて、プーは少し首をかしげます。


「プー!」


 クリストファー・ロビンが大きな声を声声声を出して、そしてそしてして、プープププププーはははははははははははははははははははは



 ――大正4年12月9日北海道苫前郡苫前村三毛別六線沢付近の森林にて。


 目を覚ましたプーが見たのは、見も知らぬ森林だった。

 いつも通りオーバーアクションな身体の動きと共にあくびをして眠りから覚めたプーは、周りに仲間達が見えない事に不安を覚えた。木々に囲まれた空は晴れていたが、森は雪深く、辺りには冷たい静寂が漂っている。


「あれれ、みんなどこ行っちゃったのかなぁ」


 特有ののんびりとした鼻声で一人呟くプーは、寝ぼけ眼のまま、この場所で目を覚ます前の記憶をたどった。すると彼の頭の中の綿は、ここに至るまでの不可思議な現象をすぐ忠実に再現してみせた。


『何かおかしいよ!すぐに手を離して!プー!』


 プーが開けた古い壺。その不気味なまでの不自然さと、それを感じ取ったクリストファー・ロビンの言葉の意味を理解する前に、プーは壺の中をのぞき込んだ。そう、のぞき込んでしまったのだ。


 そこにあったのは琥珀色の蜂蜜、ではなく真っ黒な闇だった。


 これまで見たどんなものよりも深い、星のない夜よりも暗い絶望の色。奥行きの無い塗りつぶしたような闇が、瓶の中からこちらを覗いていた。


 プーが驚き顔のまま瓶の中を注視していると、その闇の中からとっぷりと真っ黒な影が浮かび上がってきた。それは頭が大きく、何かを抱きしめているように縮こまった小さな影だった。


 それが人間の胎児である事を、100エーカーの森から来たプーに知る術があっただろうか。プーが眉をひそめると同時、黒い胎児はプーの顔にしがみつき、そのままプーを壺の中へ、どこまでも続く闇の中へと引きずり込んでしまった。


『プー!プー!』


 次の瞬間身体を包んだのは、ぬかるみの中をどこまでも沈没していくような感覚だった。自分の名前を呼ぶ親友の声は、すぐに聞こえなくなった。緊張と恐怖のあまり薄れゆく意識の中で、プーは胎児の叫びを聞いた。


『タスケテ、ボクタチヲ、タスケテ』


 それはあまりにも未熟でか弱い生き物の絶叫だった。声にならぬ声が頭に直接響き、無念と悲しみを乗せて小さなぬいぐるみである彼にのしかかってくる。そして、プーは意識を失った。


「ねえ、みんなどこだい!ぼくはここだよ!」


 ひとりぼっちのプーはそう叫んだが、その必死な呼びかけは、鬱蒼と茂る針葉樹に阻まれてしまい、彼の元居た世界に届くことはなかった。


 ぐるぐると、頼りなげに数歩歩いては戻り、思い出したようにみんなの名前を呼ぶプー。


 彼がついに疲れ果て、ため息をついた頃だ。

 山の麓の方から歩いてくる、大きな影が見えた。

 身体を左右に揺らし、強烈な獣臭を漂わせながら雪を踏みしめ歩いてくる。


 ――それは、大きな熊だった。


 これまでに見たどんな森の生き物よりも大きく、そして見るからに殺気だった大熊に恐れを抱く前に、人懐っこいプーは、初めて仲間を見つけた事を喜んだ。そして彼は腰を上げ、片手を振りながら大熊に歩み寄る。


「やあ、ぼくはプーだよ。きみの名前わあああッ!?!?」


 持ち前の素朴さから、気安く話しかけようとしたプーはそこで言葉を失った。

 無理もないことだろう。

 その大きな熊は、口元を赤く濡らしていたのだから。

 それは確認するまでもなく、血だった。

 それも人間の女の血だ。


 なぜそれが明らかであったかというと、他ならぬ熊の鋭い牙の生えた口には、当の女の身体が咥えられていたからである。


 目を丸くしたプーが大熊の背後に目をやると、大きな熊の力強い足跡に沿うように、血の道筋が出来ていた。

 この熊は人を襲い、ここまで運んできたのだ。


 足の震えから再び立ち上がれなくなったプーを横目に、巨大な体躯を持った熊は口に咥えた獲物を下ろした。


 どちゃり


 鈍い音がして、女の身体が雪の上に沈む。女は身体を弛緩させ、完全に絶命していた。見開かれ、光を失った両の目が、助けを求めるようにプーを睨んでいるようだった。


「オッ、オエエエエエエッッ!」


 プーは思わずその場に吐瀉した。

 それは、彼にとっては初めての行為だった。口からはぬいぐるみである彼を構成する綿と一緒に、ラビットの家で腹に入れた蜂蜜が吐き出た。それが白い雪に染み、死んだ女の血と混じり合って不思議なグラデーションを作り上げた。

 それを見て笑ったのは、他ならぬ大熊だった。


「お前、熊の癖に動物の死体が怖いのか」


 嘲りの含まれた声で、小さなプーを見下げてくる大熊。


「ぼ、ぼくはクマのぬいぐるみだ。それにこれは動物じゃないよ、人間じゃないか。」


 吐瀉物に濡れた口元を拭いながら、プーはどもりながらも必死に声を出した。何かしゃべっていなければ、また気を失ってしまうと考えたからだ。こんな恐ろしい存在の側で、己の肢体を広げる訳にはいかなかった。


「熊は熊だろう。それに人間だって動物だ。」


 子供にものを教えるように、大熊は低い声でそう言った。


「違う、ぼくは人なんて食べない。おいしい蜂蜜を食べるだけだよ」


「俺だって……人は食べてないさ」


 そう言って、大熊は血濡れた口を大きく広げて笑った。

 歯にこびりついた黄色い脂肪の欠片が、ぷるぷると口の中で揺れていた。タチの悪い冗談のつもりなのだろうが、当然、プーは笑えなかった。


「まあ、それも、今日までだがな」


 そう言って大熊は口角を上げると、地面に穴を掘り始めた。その穴はみるみるうちに深く、広くなり、すぐに大人の人間を納めるに足る穴になった。白い雪の上には、掘り返した真新しい土が撒かれた。


「おい、お前、プーと言ったな。お前も手伝えよ」


 地面に空いた大きな穴を前にして、大熊は震えるプーの方に向き直った。その言葉の意味を、プーはすぐには理解出来なかった。しかし、生命の危機を前にして彼の身体は勝手に立ち上がっていた。

 この恐ろしい大熊に逆らえば命はない。死んでしまえばクリストファー・ロビンにも、大好きな仲間達にも二度と会えなくなってしまうのだと。


 プーは既に肉の残骸と化している女の足を持ち上げ、吐き気を堪えながら大穴へと投げ込んだ。大熊は顔の肉を満足そうに一噛みして、プーにも肉を食べるよう促した。


「人間が、こんな弱くて美味い生き物だったとはな。今まで知らなかったのが馬鹿みたいだ。」


「ぼぼぼぼ、ぼくは遠慮しておくよ……」


 必死に首を横に振るプーの姿に笑った後、大熊は前足で長い髪のわずかに残った頭部を穴へと落とした。そして虚空を見つめる瞼のない女の顔に、雪の交じった土をかぶせていく。


 ――ああ、きっと保存食のつもりなんだ。

 プーは、大熊の行為にあらためて戦慄した。


「ど、どど、どどど」


 新しい土によって少し膨らんだ地面を見つめていたプーは、森の奥へと消えようとする大熊の背中に声をかけた。そんな言葉にならないプーの声を聞き、大熊は剣呑そうに振り向いた。


「どどど、どうして、きみは、人を殺すんだい?」


 そんなどこまでも気の抜けた優しげなプーの口調に、大熊はまた一笑いしてこう答えた。


「楽しいからだよ、プー。俺はな、これからまだまだ楽しむつもりさ」


 そうして大熊は森の中へ消えた。のしのしと歩く筋骨逞しい四つ足の殺戮者の背中を見つめたまま、プーは何も言う言葉がなかった。





『タスケ……テ……ボクタチ……ヲ……タスケテ』


 あの黒い胎児の声が、再びプーの耳元に囁いた。


 幻聴か、現実か。


 プーが再び我にかえったのは、それから数時間が経ってからの事だった。


 この数時間、プーは見知らぬ森に居ること自体が夢だったのではないかと、自分に言い聞かせようとした。

 しかし、彼の両手に染みついた赤黒い血の染みと臭いは、雪に擦り付けても取れる事はなかった。


「……た、助けなきゃ」


 再びしんと静まりかえった森の中、無意識にプーの口から出たのはそんな言葉だった。恐怖の渦中で混乱していた彼は、自身の口から発された勇気ある言葉に、自ら驚きを隠せていない様子だった。


「みんなを、守らなきゃ」


 今度は、彼の意志によって言葉は発された。

 プーが知らぬ内に飛ばされたこの世界、この国には、古くから言霊と呼ばれる概念がある。発した言葉には悪しき言葉にも良き言葉にも目には見えない力が宿るというものだ。

 それを異世界から来た彼が知っているはずはなかったが、このとき彼が発した言葉は、確かに彼の意識を大きく変革させた。


 両手の乾き始めた血の染みを眺めたプーは、次に地面に出来た粗末な墓の前でちょこんと両手を合わせて祈ると、力強く振り返った。

 プーの目線の先には、山の麓から続く大きな足跡と、雪と混じりピンク色になった女の血が点々と見える。


 プーは両足に力を込め、自らを励ましながらその足跡を反対にたどっていった。向かう先は山の麓だ。きっとそこには、土の下に眠っている彼女の家がある。彼女の死を受け入れられず、苦しんでいる家族が待っているだろう。


 そして、もしかしたら大好きな友達達もいるかもしれない。


「みんな……」


 ふと森の中でクリストファー・ロビンと楽しく遊ぶピグレットやティガーの姿がプーの脳裏に浮かぶ。


 それと同時に、血と綿を流し、無残な姿になったみんなの姿も。


「そうは、させないぞ」


 決心を胸に、小さな足跡をつけながら勇気ある異邦人は山を下った。





 ――太田家がヒグマに襲われたとの一報を受けて集まった村の男達は、現場のあまりの凄惨さに言葉を無くしていた。


「こりゃあ、ひでえ……」


 小さく漏れ出る声と共に冷汗を流した斎藤石五郎は、まっさきに家にいる妻と子ども達の顔を思い浮かべ、何の考えもなしに家に置いてきたことを後悔する。

 それほどまでに太田家は、徹底的に荒らし尽くされていた。板の間は踏み抜かれ、衣服はずたずたに引き裂かれ、穴の空いていない穀物袋は一つも無かった。


 囲炉裏の前では、太田家の主人があぐらを組んだまま息絶えている。うたた寝を襲われたのか、喉を噛み千切られ、肩の上にやっと首が乗っているような状態だった。

 主人のうつろな視線の先は台所に向けられており、そこにもおびただしい血の跡が残っていた。太田の奥さんの姿は見当たらなかったが、彼女も生きてはいないだろう事は、窓枠にこびりついた髪の残った頭皮と、血にまみれ柄の折れた鉈を見ても明らかだった。きっと殺される寸前まで抵抗を続けたのだろう。窓の外へ続く足跡を見て、皆が呆然としていた。


 この村の人間は皆、元々この蝦夷の地の人間ではない。

 遠く東北地方から土地を求めてやってきて、この過酷な大地を切り開いてきた開拓者達だ。斎藤は入植時から被害にあった太田夫妻とも親しくしており、ゆえに彼らの無念を思うと怒りのあまり涙も流す事さえ出来なかった。


 やがて、彼らを襲った熊は、冬眠に失敗し越冬穴を持たないいわゆる「穴持たず」の熊だろうという結論になった。


 冬眠をし損ねた熊は気が立っており、食べ物の無くなった山から人里へ降りてくる事が稀にある。ただ大抵の穴持たずは親から離れ、栄養不足でやせ細った小熊ばかりであったので、血の跡と共に山へと続いている大きな足跡は少なからず村の男達を動揺させた。


 ある者は、熊の体長を予想し7尺2mはくだらないだろうと言った。見上げるような大熊を想像し、皆が息を呑んだ。


 しかしどれだけ相手が巨大だろうと、人食い熊である以上、このまま安穏と過ごす訳にはいかない。人肉の味を覚えた熊は、必ずまた人里へと降りてくる。これ以上の犠牲を出す訳にはいかない。


 故に、彼らはただちに行動に出た。


 斎藤は村中の男を集め、マタギとアイヌまで引き連れて、総勢30名の捜索隊を結成して冬山へと入っていったのだ。

 普段は鍬やのこぎりを持つその手に慣れない猟銃を握りしめ、怒りと不安でごちゃまぜになった村の男達。彼らの焦りに答えるかのように、お目当ての敵はすぐに姿を現した。


「おったが!こっちや!」


「でけぇ、こりゃあ大物じゃ」


「マタギを呼べ、わしらじゃ敵わん!」


「阿呆、すぐに撃て。逃げられてしもうたらしまいじゃ!」


 熊を見つけたは良いものの、蜂の巣を突いたような有様になる村の男達。その間を掻き分けて斎藤は前に出た。もう毛の一本一本を数えられそうな距離。目の前にしてみると7尺どころか10尺3mにも手が届きそうな巨大なヒグマだった。あの太い前足で殴られては、どんな生き物であってもひとたまりも無いだろう。


「ええい、くらえ!」


 斎藤の狙いもつけずに放った弾は、大熊の右足を掠めた。同時に遠くから熊を視認したマタギが狙い、乾いた発砲音が山に響いた。


 急所を外れた弾は、血の線を空中に浮かび上がらせ、そして――熊は激昂した。


 男たちは致命傷を与える事が出来ず、悪戯に人食いの大熊を挑発してしまったのだ。まるで神輿のような巨大な熊が木々の合間を縫ってこちらに歩み寄り、先頭で慌てて背を向けて逃げようとする男の一人に飛びかかった。


 彦八は熊に臀部を噛まれ、木っ端のように放り投げられた。言葉にならない叫びが山に木霊する。周囲の男達も狼狽え、逃げ惑い、捜索隊は蜘蛛の子を散らすように瓦解してしまった。残ったマタギが弾を込め、アイヌが弓に毒矢をつがえているその間。瀕死の大怪我を負っている男の元へと熊は歩を進めていた。


「お、おっかぁ……おっかぁ……」


 彦八は涙に顔を濡らし、自身に覆いかぶさるように立つ大熊を見上げた。やけに大きな頭をした熊の胸には、弓状の白斑が見えた。

 熊は口を開き、上下に親指ほどに太い黄色い牙を見せつける。

 こうして彦八に唐突に訪れる最期。

 年老いた母と二人暮らし、気の優しい彦八はその瞬間まで母を呼び続けた。


 しかし恐怖で目を瞑った彦八は、強烈な獣臭の中にあって尚、いつまでも死の痛みが自身の身体を襲わないことに気づいた。恐る恐る目を開けて、刮目する。


「こ、こりゃ……!?」


「やあ、ぼくはプーだよ。今のうちに早く逃げて」


 彦八はただ驚愕した。彼の眼前には、相変わらず大口を開けた熊の姿があったが、そこには今や鋭い牙や真っ赤な舌は見えなかった。そこには代わりに、この見たことのない黄色い何かがすっぽりと収まっていたのであった。


 ぽかんと口を開けたまま、目の前の光景を咀嚼できずにいる彦八は銃声を聞いた。マタギが熊を狙ったのだ。口に異物のはまった大熊は激しく動いた為、弾は外れた。

 アイヌの放った毒矢も、熊が先ほどまで居た場所を通り抜けて傍らの樹木に突き刺さった。

 それに驚いた大熊は頭を強く振り、口にはまった何かを木の上へ吹き飛ばすと、凄まじい勢いで山奥へと去っていった。


 気が緩み、気絶する彦八とその側へと駆け寄る男達。マタギは構えた銃を降ろさず、そのまま木の上へと向けた。


「やあ、できたらぼくのことは撃たないでほしいなあ」


 その銃口は、人語を話す黄色い何かへと向けられていた。


「撃つな!メトトゥシ・カムイ子熊の神だ」


 マタギの後ろから、山中に響くような力強い声がした。それは、長い髭を蓄えた老齢のアイヌが発したものであった。





「では、あなたは別の世界から来られたのですか」


 真剣な表情で問いかけるアイヌの言葉を借りれば、カムイ、つまり神様だという自身をプーと名乗る何かを中心として、山を降りた村の男達は道の真ん中で車座になっていた。


「うん、クリストファー・ロビンも、みんなも、どこにもいないんだ」


 上半身に赤い着物を身に着け、西洋の人名を何度も口にする黄色いカムイは、どこか間の抜けたような、不思議な顔つきで村人たちを見渡している。


「わしゃあ、長年山に入っとるがこげな奴はついぞみたことがねぇ」


 マタギは、まるで夢でも見ているようだと何度も首を傾げていたが、それは一部始終を離れたところから見ていた斎藤自身にとっても同じ事だった。あの時、誰もが男の死を予感していた。


 しかし、その予感を霧散させたのは、突然熊の口に飛び込んできたこの黄色い不可思議な何かだったのだ。

 おかげで彦八は酷い怪我をしたものの一命を取り留め、すぐに村から離れた病院へと運ばれる事となった。信じられないが、事実大勢の前で起きた事なのだから認めざるを得まい。


「あの……プー、さま?」


 正座を直し、斎藤はこの黄色い何かに話しかけた。なんだかんだ言って敬語を使っている事に内心自分でも笑ってしまう。


 しかし、人間でない者が人語を話し、二足歩行で歩いているのだから、あらゆるカミを尊重する日本人としても、アイヌの神に敬意を払う事も当然だ。……そう彼は自身を納得させていた。


「ぼくはただのプーだからプーでいいよ。サイトー・イシゴロー」


「いや、それは流石に……ではさん付けで。プーさんと呼ばせて貰います」


 プーは鼻声に近いおっとりとした声で、斎藤にそれじゃあよろしくねと微笑みかけた。プーは、誰が見ても布地で作られている熊の人形であった。中に人が入っていないことは、あちこち大熊の牙にやられた穴と綿の詰めものが見える事から分かる。


 それを見る斎藤は、自身の常識と戦うように、何度も強いまばたきを繰り返したが、どうやら彼はその常識を変えるほかないようであった。


「プーさん、私達はどのように奴と戦うべきでしょうか」


 改めて真剣な表情になった斎藤は、プーに頭を下げて教えを請うた。彼はもはや神だろうが仏だろうが、どんなものにだって頼るつもりだった。


 やがて日が暮れれば、外は獣達の世界になる。

 あの体躯の大熊が相手では、木板で建てられた家屋など何の障害にもならないだろう。愛する妻と子どもたちが、今夜を無事に越せるかどうかも分からない。家族を失うかもしれないことは、斎藤にとって耐え難い苦痛だった。


「うーん、ぼくにも分からないなぁ」


 ゆえにプーのその言葉に、最初斎藤は暗い穴に落ちたような気にさえなった。しかし、プーは綿のはみ出た自身の身体を気にしながらも、こう続けたのだった。


「でも、きっとぼくが守ってみせるよ」


 きっと仏が居るとしたらこんな優しい声なのだろう。いや、もしかすると彼こそが仏なのかもしれない。斎藤は、涙ぐみながらも感謝の意を告げて頭を下げた。


「カムイ、では私達の手で、そのお身体を元ある形に直させて頂きたい」


 そう言ってアイヌは静かにプーの元へ歩み寄った。


「また、必要なものがあれば何なりとお申し付け下さい」


「それじゃあ……」


 プーは言葉を選ぶように空中に目を向けると、すぐに眉毛を上げてアイヌへこう告げた。


「蜂蜜がお腹いっぱい、食べたいなあ」





 その日の夜、太田家では二人の葬儀が営まれた。

 黄色いカムイ、プーさんの教えに従い山を行くと、少し盛り上がった土の下に変わり果てた太田の奥さんの遺体があった。


 ついに全身のパーツは揃わなかったが、男達はそれらを丁寧に運び、棺に納めた。


 通夜の間、屋外にはごうごうと火が焚かれていたが、太田家に弔問に来た村人はごく少数だった。熊には自身の獲物に執着する性質がある。

 それを皆知っている為、太田夫妻の遺体の側に居ることを恐れたのだろう。


「ふん、薄情なもんだな」


 そう言ってはみたが、斎藤も内心気が気ではなかった。

 万が一を考えて、身重の妻と子ども達は、親しくさせてもらっている明景家に預けてきた。あの家の主人は鉄砲撃ちが上手いと村でも有名だ。熊の臭いの付いた遺体の側にいるよりはよっぽど安全だろう。


 しかし、見上げるような巨大なヒグマを相手にしては、どんな場所でも安全とは言い切れない。早く奴を仕留めなくてはという思いばかりが募った。


「例のプーとかいう神様はどこにいらっしゃるんですか、私らを守ってくださると聞いてるのに」


 故人の弔いよりも、半ば自身の命の為に数珠を握っているような様子の女が、玄関口で外を見張っているマタギに問いかけていた。


「アイヌの奴が集落に連れて行った。何でも言うとおり蜂蜜を馳走したらしいんだが、それからずっと自分の身体の何倍もの量を食べ続けているらしい。アイヌの蓄えが全部なくなるんじゃねえかって勢いだそうだ。ありゃあ、やっぱりこの世のもんじゃねえよ」


 マタギは無精ひげを撫でながら、そう答えた。斎藤はマタギと共にアイヌの集落にまでプーを送って行き、その食事の様子も見てきたのだが、貯蔵用の壺に頭を突っ込み、ひたすら胃に流し込むようにしている様は確かに異様なものだった。


 いや、そもそも神様には胃なんてないのかもしれない。事実、蜂蜜を流し込む度に布地で出来た身体が下半身からそのまま膨れあがっていくのを斎藤は見たのだ。


「村は呪われちまってるんだ……」


 斎藤は小さなため息と共にそう呟いた。

 巨大な人食い熊に、小さく黄色いカムイ。

 片方は友好的ではあるものの、そもそもこの世の理から外れた非日常の存在、村が取り憑かれたという感は拭いきれなかった。


 皆が皆どこかに不安を抱えながらも、表面上は淡々と通夜は営まれた。

 しかしきっと、彼らのそんな不安はとうに見透かされていたのだろう。

 たとえ火を燃やそうが、銃を持った人間が控えていようが、気休めに過ぎなかったのだ。


 通夜も半ばに差し掛かった頃。

 最初に轟音がし、次に悲鳴が聞こえた。


 弔問客らが音のした方を振り向くと、そこには壁板を突き破って顔を出した巨大な熊の姿があった。

 表を見張っていたマタギは慌てて向き直って熊を撃つ。

 弾は外れたが、発砲音を聞いても尚、熊は怯える様子すら見せなかった。


 低いうなり声を上げながら家に上がり込む熊は、獲物となる人間を見定めるようにゆっくりと左右を見まわした。


「いかん、みな梁に上がれ!」


 マタギがそう促すよりも先、既に皆は柱に手を掛けて我先にと高所に登っていた。中には自分の女房を台にしてまで上を目指そうとする者も居る始末だ。


 熊はそんな慌てふためく人間達に見向きもせず、二つの棺をひっくり返して、遺体に鼻を近づけていた。やはり、取り返しに来たつもりらしい。


 外に応援を呼びに行ったマタギが村の男達を引き連れて帰ってくると、やっと熊は元来た壁の穴から外へと逃げていった。

 ぱちぱちと火の粉の上がる音を聞きながら、冬場にも関わらず礼服を汗で濡らす村人達。彼らはお互いに顔を見合わせて自分たちの無事を再確認した。





 太田家で起きた出来事の後、斎藤は礼服のままで夜の森をひた走った。向かう先は女子供の元ではない。否、初めはそのつもりであったが、あの恐れ知らずの熊を相手に自分一人でどうにか出来るとは斎藤は思わなかった。


 村は既に呪われている。

 人の手で対処の付かない事態は、早々に人ならざる者の手で終わらせてもらいたい。そんな思いから斎藤はプーの元へと走っていた。


 あの小さな布で出来たものが、どこまであてになるかは分からない。しかし、この超自然現象には、村にとっても何か重大な意味があるはずだ。

 そんな迷信じみた考えを元に走る斎藤は、自身が強固に持つ常識を必死に抑え込んでいた。馬鹿げているかもしれない。しかし、勘としかいいようのない感覚が、これこそが最善の道であると彼に告げていた。

 藁にもすがる思いで走り抜けた斎藤は、その勘が当たっていた事をアイヌの集落で確信する事になった。


「……分かった、まかせてサイトー・イシゴロー」


「よろしくお願いします、プーさん」


 息も絶え絶えに斎藤が村を再び襲った危機をプーに伝えると、プーは悩む様子もなく協力をしてくれた。

 戦いに備えるプーの横、万が一に備えた秘策の為、斎藤は礼服を脱ぎ捨てると裸一貫になってプーに頭を下げた。





「誰がなにしたぁ!」


 明景ヤヨは、地響きと共に窓を破って入り込んだ侵入者に対して声を上げた。内心分かってはいた事だが、当然のように返事はなかった。代わりに鼻をふさぎたくなるような強い異臭がした。


 太田家の周りを見張っている有志の討伐隊の為に夜食を用意している所であった為、ヤヨの手には包丁が握られていた。

 震えながらそれを握り直し、返事をしない黒い影と向き合う。

 背中におぶった子どもが、ぎゃあぎゃあと泣き出した。

 なぜ、どうしてと、思考が止めどなく溢れ出す。


 鉄砲を持った夫は、ちょうど家を留守にしていた。

 ついさっき、太田家にまた熊が顔を出したとの知らせを受けたからだ。

 熊が村の反対側に居る事に少し安心し、皆の応援に行くという夫を見送り、台所に立ったばかりだったのに。


 なぜ、どうして。

 黒い影はこちらを威嚇でもするようにゆっくりと立ち上がった。それは、天井に頭をこすりつける程に巨大な熊だった。


 とても、こんなものでは。

 包丁を持つ手が、風に揺れる草木のように上下左右に振れた。


 ヤヨは覚悟を決め、素早く後ろを向いて背中の我が子と共に急いで外へと駆け出した。当然それを逃がすはずもなく、大熊はヤヨを横に吹き飛ばした。


 薪の束に前のめりになってぶつかるヤヨ。必死に我が子の無事を確認し、前に抱きしめなおして熊と向き合った。


「あんた、こん子に手ぇ出したらただですまんよ!」


 まるで玩具を拾う子どものようにゆっくり歩み寄ってくる熊は、叫ぶヤヨの鼻先で動きを止めた。ヤヨの気迫によるものではない。背後にガシャンと物の落ちる音がしたからだ。


 熊が振り向いた先には、鉄砲撃ちの夫を頼って明景家に来ていた斎藤タケとその子ども達の姿が見えた。熊の襲来に気づき、とっさに野菜置き場に隠れていたのだろう。


 ひぃ、と短い悲鳴が上がる。

 熊と目の合ったタケの声だ。


 大きな身体をぐるりとタケの方に向ける熊。その瞬間、ヤヨは怯えるタケと玄関とを交互に見やった。そして、腰の砕けた四つ足のまま外の方へと走っていってしまった。無論、それは子をおぶった母であれば仕方の無い判断ではあった。


 熊に見つかり、逃げ場の無くなったタケは半ば過呼吸になりながら子どもを背中に寄せ、大きな腹を両手で抱えた。


「は、腹ぁ破らんでくれ!のど喰って殺してけれ!」


 言葉の通じるはずもない熊を相手にし、腹の子を守るためにタケは必死に懇願した。その時、屋外からヤヨのものと思われる悲鳴が聞こえた。


 熊は耳をぴくりと動かした後、胎児の命乞いをするタケを見て、確かに笑った。


 そして一瞬で距離を詰め、大きな爪の生えた右前足を上げると、熊は躊躇せずタケの膨らんだ腹へと振り下ろした。はずだった。





「やあ、また会ったね。間に合って良かったよ」


 後はこの鋭い爪を、爪を人間に振り下ろすだけで済んだはずだったのに。

間延びしたそんな声に、大熊は再び邪魔をされた。


 大熊が顔を横に向けると、自身の手首を掴む、黄色いふわふわとした何かが見えた。思い切り力を入れてみるが、それ以上びくともしない。顔だけ後を向くと、そこには継ぎ接ぎだらけの化け物が立っていたので、大熊は思わず全身の毛を逆立たせた。


 黄色く丸い身体に、人間のように赤い服を着た熊もどき。

 名前をプーと言っただろうか。確かに森で会った時の面影を残してはいるものの、身体のあちこちに縫い付けられたカラフルな布によって、その印象は変わっていた。


 ただ、なによりも大熊の目を引いたのは、その身体の大きさだった。

 一体、何をどうしたらこんな短期間で変化を遂げるものだろうか。今やプーの身体は大熊と並ぶ程にまで大きくなっていたのだ。


 いや、大きさだけでは無い。まるで倒木に挟まれた時のように大熊の手首を締め付けてくるプーの指の無い手は、少なくとも腕力についても大熊と対等かそれ以上である事を示していた。


「て、てめえ!また邪魔をしやがったな!」


 大熊が吠えると、足元で大きな腹をした人間がびくりと震えた。こいつらには熊の言葉が分からないのだ。子供と一緒に後ずさっていく女を見て、大熊は鼻で笑った。


「だって、きみが人を食べたがるのがいけないんだよ」


 一方プーは、緊張感に欠けた口調でそう言う。


「チッ、この手を離せ!」


 その口調に反して、ぎりぎりと手首に込められた力は強くなっていくようだった。


「うーん、人を襲わないって、約束したらはなしてあげるよ」


「……分かった、約束する」


 大熊の言葉は当然、嘘だった。

 火の出る筒にさえ気をつければ、人間はあまりにも弱くて脆い。それに気づいてしまった彼が、これから先そんな楽をしない手はないだろう。


「そっか、じゃあいいよ」


 大熊のついた安直な嘘に対して、プーは素直に手を離した。それは大熊にとっても意外なことだった。


「馬鹿な奴め」


 その気になればいつでも殺せる人間にはそっぽを向け、大熊は自由になった手をそのままプーに振り下ろした。


「うわあ!」


 そんなどこまでも間抜けな声を出して、クマもどきのプーは肩から腰にかけて鋭い爪によって切り裂かれた。爪に沿ってブチブチブチと、プーの皮膚を、(無論大熊は知る由もないが、布地を)切り裂く音が部屋中に響いた。


 よたよたと後ろに数歩下がり、プーは囲炉裏の側に尻餅をつく。身体が変形する程に大きな傷口から、綿と一緒に大量の琥珀色の液体が流れ出した。


 それと同時にぷんと甘い匂いが鼻につく。それはクマならば誰でも知っている蜂蜜の匂いだった。

 それきり張り詰めた糸が切れたようになったプーは、座ったまま身体を萎ませつつ、ぐったりとした様子になる。当然だろう、どんな動物だろうが大熊の爪をくらうと皆こうなるのだ。


 しかし、動物を殺した時に必ず流れる真っ赤な血が、プーからは全く流れない事に気づいた大熊は怪訝な表情になった。


 流れ出る液体は、甘い甘い琥珀色の蜂蜜ばかり。いや、ほんの少しだけ、生臭い血の臭いがする……?

 大熊が手にまとわりつく甘い蜂蜜を眺め、その中に赤い血のもやを見つけたその時だった。


「太田の仇じゃ!」


 破かれたプーのはらわたの中から、男が飛び出してきたのである。

 プーの中から全身を蜂蜜まみれにして現れた全裸の男は、手に持った大ぶりなナイフを、驚く大熊の首元へと突き立てた。


 男の腕には深い切り傷がついている。プーを切り裂いた時に、中に潜んでいた男に傷をつけたのだろう。

 不意を突かれた大熊の首元を、ぼたりぼたりと何かが伝っていく。

 それは傷口から彼自身の血が流れ落ちる不快な感触だった。

 撃たれた時とは違った、激しく鋭い痛みが首筋を襲う。


「火の出る筒を持たなければ何も出来ない、無力な人間の分際で!」


 そう吠えて怒る大熊は、目の前に立つ男を肉塊にしてやろうと、鋭い爪の生えた両手を伸ばした。しかし、大熊の両手は彼の意志に反して自由気ままな方向へと伸びて、虚空を掴むのみであった。


 ふらふらと何度も腕を振っていると、次に地面がぐらぐら揺れ出して、気づけば何故か大熊は人間に見下ろされていた。

 じんじんとした痺れが全身に広がり、そして強烈な眠気へと変化していく。

 大熊は死を経験した事がなかったが、沢山の死に触れてきた経験から、これが死ぬという事だと理解した。

 早足で死に向かうまどろみの中、大熊は人間の隣で力なく微笑んでいるプーを見て皮肉げに笑った。


「なんだい、みんなして弱いものいじめ、しやがって」


 囲炉裏の中に派手に倒れ、ガクリとうなだれた大熊の口からは白い泡が吹き出た。





「やった……やったぞ!」


 アイヌに預かった毒を塗ったナイフで熊を制した斎藤は、肩で息をしたまま興奮を露わにした。

 プーの中に潜り、絶好の機会を待つ。これは彼にとって大きな賭けだった。もし中に人が居る事に気づかれれば、警戒した熊はまた逃げ出したかもしれない。しかし、こうして斎藤は賭けに勝ったのだ。


「あんた、あんたぁぁぁ!!」


「お父ちゃん!」


 一部始終を見ていた妻と子達が、斎藤の元へと駆け寄ってくる。全身蜂蜜まみれなのも気にもせず、抱きついて離れないのだから困ってしまう。


 ふと斎藤が玄関口を見ると、地面に横になる明景ヤヨの姿が見えた。彼女は、家にやって来る巨大なプーを見てついに失神してしまったのだ。可哀想な事をしてしまったかもしれないが、命に別状はなさそうだ。後で介抱してやらなければなるまい。いや、今はそれよりも……。


「プーさん!!」


 村の恩人を思い出した斎藤は、勢い良く振り返った。すると、そこには優しげな顔で微笑む神の姿があった。


「みんな、無事みたいだね、よかった……」


「何もかもプーさんのおかげです!本当になんとお礼をすればいいか!」


「お礼だなんていいよ、それに……」


 プーは、そう言ってゆっくりと片手を持ち上げて見せた。腕はゆっくり途中まで上がるが、途中で中の綿を失ってぐにゃりと重力に引っ張られる。


「ぼくには時間がないみたいだしね」


「そ、そんな……!」


 大熊との戦いを見越し、自身の限界を超えて身体に蜂蜜を詰め込んだ反動だろう。


 もはや原型を留めない布きれとなりつつあるプーの綿を、斎藤は必死にかき集めて中に戻そうと試みたが、あらゆる穴からそれは漏れていき、プーの声はますます弱々しくなっていった。


「……ああ、そっか」


 萎れたプーは、斎藤の腕に抱かれたままやっと首を持ち上げると、そう言って彼の妻、タケの方を見つめた。


「ぼくを呼んだのは、キミだったんだね」


 果たして思い当たる節もなく、きょとんとした様子のタケ。しかし聞き返す間もなく、プーはこの世から去ってしまった。

 わずかに彼の魂を繋いでいた糸も全てほどけ、黄色い布が床板に広がる。


「プーさん……?」


 目を開いた斎藤は、消え去った異邦人の姿を探す。


「プーさん!?プウゥゥさぁぁあん!!!!」


 村を襲った人食い熊の側で、斎藤の慟哭が、村にいつまでも響き渡った。





『……プーサン……アリガトウ』


 プーの耳元で、そんな小さな声が聞こえました。

 だけどプーは全然気づいていないみたいです。


「ふぁああ、よく寝た」


「あれれ……なんの夢を見てたんだっけ」


 口元に手を当てて、プーは少し考えこんでいます。


「沢山蜂蜜を食べた夢だっけ。でも怖い夢だった気もするなあ」


 その時、外からプーを呼ぶ元気な声がしました。

 プーがベッドから降りて窓を開けると、

 そこには大好きな親友のクリストファー・ロビンと森の仲間たちの姿が。


「プー!早くおいでよ、今日はみんなでスケートをするんだ」


「わかったよ、サイトー……あれれ?クリストファー・ロビン!」


 プーは少し首をかしげた後で、すぐに笑顔になって外へと駈け出していきます。


 100エーカーの森は今日も良い天気。

 クリストファー・ロビンと小さなお友達たちはお歌を歌いながら池に向かいます。

 どうやら、今日も楽しい一日になりそうです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

くまのプーさんVS三毛別羆事件の人食い熊 ロッキン神経痛 @rockinsink2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ