第16話 名門会議2

私がそこに入ると、今まで騒がしかった場内が一気に静まり返る。

辺りを見渡すともう全員揃っているようだ。今日は前回の反省を含め、これからの方針を決めようかな。席に着くと、少し緊張して口を固く結んでいる樹里の顔が横目で見えた。


「今回の会議のテーマは『ロザ・ムーナ』について今後の方針を決めたいと思います。」


響き渡る声、全員の視線が集まる。樹里は私が凄いというが、実は緊張しているのを隠すのが上手いだけであって緊張していないわけではない。今だって顔には出していないが、見てわかるのではないかと思うほど心臓がなっている。

どんだけ血を送ってるんだよ。私は貧血ではないぞって何回心臓に向かって行ったことか。


そこに、一人が手を挙げて立った。その人は海道家の長女だった。

名前は「海道 水華」(かいどう すいか)

初めて会った時はまだ私も6歳くらいでなんて美味しそうな名前だろうと思ったのではっきりと覚えていた。

彼女の淡い水色の髪がなびく。天然パーマがかかったミディアムの髪は

ふわふわしていて、かわいい。目線も同じで小さい頃からよくしゃべっていた。

しかし、中学で別になってしまい会うのは3年ぶりだ。


「私はこの集団のロザ・ムーナについて、わかったことがあるので報告したいと思います」


彼女は今回の会議が初で、前回までは彼女の父が出席していたが世代交代で出してきたらしい。初めてで先陣を切るのかと感心した。しかし、まだ緊張しているらしく、声が単調で文法がところどころおかしい。


「うちの使用人から聞いたことでロザ・ムーナは10年前にもこの町を襲っていたそうです。でもその時は目的のものがなかったのかすぐに撤収していきました」


「それは何月頃の話だ。その当時はまだ私も幼かったけどいたはず」


「そこまではわかりません。すみません」


「そうかありがとう」


10年前か。嫌なことを思い出させるなあ。

でもそんな大きい集団が襲ってきたとなると私の家に情報が入ってこないのがおかしい。あとで調べる必要があるな。


「いいですか、俺はロザ・ムーナについては世間には公表しないで、こちらからも何も仕掛けない方がいいと思います。世間はこのことを知らない人が多く、知らされてパニックになる可能性があります。また、相手の情報がわからない今は下手に手出しはせず、情報を集めた方がいいと思います」


彼は日道家の長男、日道 茶紅(にちどう さく)

彼は18歳だ。私と3つしか変わらないので親しみやすい。

少しツンツンした

しっかりしていて、小さい頃は兄のように慕っていた。


「えっと、ぼ、僕も茶紅君の意見に賛成です。

でも、相手が何かをしてくる前に、こちらから仕掛けるのもアリだと思います。」


おどどしているがしゃべりだすと背筋が伸びるんだよなあ。

昔っから変わんない。

扇道家の次男で扇道 風裕貴(せんどう ふゆき)

私と同い年だ。


「そうですね、ではこの二人の意見をまとめて世間には公表せず、情報を簡単に集めてから殺すというより追い出す方式でいいですか」


はっきりと言い、凛とした声で言ったのは妖道家の長女

妖道 那響(ようどう なきょう)

19歳にしてはとてもしっかりしていて頼れるお姉さんだ。

紫色の長いポニーテールに凛としたつり目、そして、そして、何より

背がタカーーーイ!!

いーな、いーな。私は158しかないのだよ。まだまだ伸びるのだよ。


まあ、今までの4人と私と樹里とあと2人が10代組であとはみんな成人しちゃってる。大体はこの8人が中心なんだよね。


「では今日の会議を終了します。各家で今後の方針についての報告と、領地内の人々の安全確保を進めてください」


そう言って私はせきをたつ。

そうすると樹里、那響、茶紅、水華、風裕貴の順でついてくる。

私たちが出ると他の人も出てくる。

特に優秀な名家はなぜか全員10代という事実。

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