第15話 名門会議

張り詰めた空気の中二人の男の声がずっと響いている。ここにはその音と時計の針がティク...タク...ティク...タクとなる音しかなっていない。他の者たちは皆音も立てずに考え事をしている。まるで形の違うネジと機会を無理やり組み合わせたような感覚だ。


「しかしそれでは民衆の安全が保障されません」


一人がまた同じことを言い反論した。それしか頭に浮かばないのか。


「それは重々承知している。その被害を抑えるための努力はしていくつもりだ。

もう時間がないのだ」


お前もこいつを納得させるための言い訳を考えろよ。


「しかし...」


ずっとこれの繰り返しだ。そろそろ私も飽きてきた。隣で聞いている樹里もさすがに飽きてきたようで他のことを考え始めている。他の人たちも同じだろう。

もうこれ以上は会議をする価値がない。

会議場に私の声が響き渡る。


「終わりだ。今日の会議はこれで終わりのする。」


「しかし舞夢様、まだ決まっていないことが」


まだ話そうとしていたところにさっきの男が割り込んでくる。確か家の下についている天道家だったか。


「まだそのくだらない言い争いをするつもりかこれ以上話しても時間の無駄だ。次回までに各自案を考えて来い。日程は後日また連絡する。」


シンとした空気の中、私はそこを出た。それに便乗して樹里も付いてくる。

少しの時間そのままだったが、私と樹里がいなくなったのでこれ以上何をしても変わらないと諦めたのだろう。ちらほら片付け始めたものいる。まあ、このあとどうなろうと御構い無しだから私たち二人は瞬間移動魔法で家へと帰った。


____________________________________


『舞夢様、どうかお許しください。このような事態になったのは全て私の責任です。しかし、樹里様たちの援護もあり、被害は最小で済みました。このようなことを言ってもいい身分ではないことはわかっています。しかし、命だけはどうかお願いいたします。』


『わかった。しかし、この落とし前はちゃんとつけてもらう。これの被害総額をすべて負担し、復旧工事に全面的に協力し、お前自身も働け』


『ああ、ありがとうございます。舞夢様にもらったこの命で働いてきます』


そう言って男はそそくさと帰っていった。そいつは約束通り一生懸命働いてくれた。働いているうちに一般人の気持ちがわかったのか瞳に優しがが出てきた。

私もそれをみて安心し、油断してしまった。


____________________________________


「舞夢ちゃん、どうしたの?怖い顔して」


樹里の言葉で我に返った。もうあのことは思い出さないって決めたのに。


「あっ樹里、ごめんごめんで、日程のことだけどどうする?」


「それはもう決まってでしょ。もう何とボケてるの。

.........もしかして、またあのこと思い出してたの。あれは舞夢ちゃんのせいじゃないって私もこの国の人たちも全員が言ってるよ。舞夢ちゃんは逆にいいことをしたんだよって」


電話越しでも樹里の優しい顔が手に取るようにわかる。この樹里の声は暖かくてほんわかした感じがあるけれど、どこか凛としていて説得力がある。樹里には昔から助けられてばかりだよ。


「でも...。

うん、そうだよね。ごめんね心配けけて」


「いえいえ、でもやっぱり舞夢ちゃんはすごいね。あの場を収める感じがもう威圧感ハンパないって。あれは炎道家ってのもあるけど、やっぱり舞夢ちゃんの声というかあの説得力だよね。だ〜れもあの舞夢様がこんな課題やり忘れて先生と追っかけっこしておまけに先生だしぬいちゃうなんて考えもしないだろうね〜」


「だからあれは、いきなり狭てこられてプリント燃やしちゃっただけで、決して忘れたなんてことは。それにああ言うことは小さい頃からやってるし慣れだよ慣れ。」


「そうかなあ、私はいろんな意味で舞夢ちゃんの実力だと思うんだけどなあ」


「さてこの話は置いといて、もう遅いしバイバーイ。また明日〜」


思いっきりわざとらしさ全開で電話を切ってしまった。また明日樹里に質問攻めにされるんだろうな。あの樹里の質問攻めはほんと警察の素質あるよってか警察超えてるよってくらいだから逃げるのにめちゃくちゃ苦労するんだよなあ。

よし、明日は樹里と追いかけっこだ。久しぶりに雪夜を身代わりにしてみようかな。雪夜といえば世翔夜くんについても調べなきゃいけなかったよね。それはまた今度でいっか。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る