第18話 普通の第3部「最後の選択」11

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ここはポンジャ城。


「ようこそ、我が城へ。」


100年の眠りから目覚めた邪悪なる闇の王ポンジャ。姿は闇に覆われ闇が人間の形を成している。王の玉座に座り、まるで自分が王であるかのような振る舞っている。


「お父様!?」


そこに魔王モヤイ城から必死の形相で邪悪なる闇の娘ポンジャ姫がやって来る。どうして愛しい魔王モヤイが甦らないのかを聞きに。


「おお! 我が娘よ!」


久々の再会に父ポンジャ王は喜ぶ。まさか自分の復活を娘が出迎えてくれるとは思わなかったのだ。


「はあ・・・はあ・・・あれが邪悪なる闇!?」

「ポンジャ王とポンジャ姫の時を超えた親子の再会というのか!?」


ポンジャ姫と同じく魔王モヤイ城から駆け付けたハチハチとコウ。闇の親子は再会を喜ぶわけでもなく、お互いに様子を伺っているようだ。


「お父様、モヤイ様はどこですか?」

「モヤイ? ああ、私を封印した忌々しいヤツか? ・・・ヤツなら食べた。」

「え!?」


ポンジャ姫は身を闇に落としてでも、愛しい魔王モヤイに会いたかった。もう一度、もう一度モヤイに会うために100年もの歳月を費やしたのに、モヤイの代わりに現れた父親が食べたというのだ。


「封印されている間に退屈だったので、モヤイを少しづつ吸収してやった。今では私の体の一部だ! 甦る時にもヤツの力を利用してやったわ! ワッハッハー!」

「そんな・・・モヤイ様が・・・もう、いないなんて。」


悲しみに打ちのめされるポンジャ姫は力なく膝から崩れ手の平を地面に着きなんとか持ちこたえるが表情は下を向いていて分からない。


「どうやら、この父を出迎えに来てくれたのではないようだな。悲しいな、100年ぶりの再会だと言うのに。ワッハッハー!」

「・・・モヤイ様。」


邪悪なる闇のポンジャ王は封印が解け、よっぽど現実世界に戻ってこられたのがうれしかったのか、それとももう人ではないからなのか、実の娘の心を苦しめても何も感じない化け物になっていた。


「ポンジャ王!」

「に、人間!?」

「ポンジャ国を建設した偉大なポンジャ王だというのなら馬鹿な真似はやめて、世界を平和に導いてください!」

「そう、私がこの国を作った。それなのに忌々しい魔物に私は殺されてしまった。愛する王妃も目の前で殺された・・・。」


ハチハチとコウが堂々とポンジャ王の前に姿を現す。ポンジャ王は自分が死んだ時のことを話しだす。やはり王妃も魔物に殺されていたのだ。


「しかし、私の肉体は殺されても精神はこの世界に留まった。そして、どこかからか声が聞こえた。「闇を受け入れるなら、おまえに力を与えよう。」っと。もちろん私は闇を受け入れたさ。自分と王妃を殺した魔物への復讐。娘も心配だったし、それに私はこの国の王なのだから。」

「復讐心が闇を呼び寄せたのか!?」

「王座への未練!?」

「そして私の魂は闇へと姿を変えた、までは良かったが、私を邪魔する者が多く現れた。おかげで100年も封印されてしまった。」


ポンジャ王は自分が邪悪なる闇になった経緯を話す。人間の欲望や罪に値する醜い感情の塊であった。


「私だ! 私がこの国を作ったんだ! この国を支配する権利があるのは、私だけなのだ!」


ポンジャ王の闇が増大していく。もう人ではない完全に闇となってしまったのだ。


「こんな化け物とどう戦えばいいんだ!?」

「どうすることもできないのか!?」


ハチハチとコウも人智を越えたポンジャ王の闇の深さに希望を失う。これが闇に呑み込まれた人間男の末路だというのか。


「諦めるな!」

「!?」


その時、伝説の勇者ハチの声が聞こえる。ハチとナナナナが駆け付けた。


「ハチハチ!」

「ナナナナ!」


ハチハチとナナナナは久しぶりの再会である。少しの間しか離れていなかったのに、何年も何十年も会っていなかった恋人のように抱きしめ合う。


「久しぶりだな、ヨン。」

「なんだ? おまえは?」

「わしはおまえと同じ勇者候補生だったハチだ。下流の洞窟でも会ったじゃろ?」

「な!? あの時の私の邪魔をしてくれた連中か!? 許さんぞ! おまえたちも皆殺しにしてくれる!」


もうヨンの意識は邪悪なる闇となったポンジャ王に吸収されてない。それでもハチはあえてヨンと呼んだ。ハチたち勇者候補生は邪悪なる闇を倒すために暗黒の騎士として100年間生き続けることを選んだのだから。


「ポンジャ姫!? どうされたんじゃ!?」

「姫はモヤイが邪悪なる闇に吸収されてしまったことを知ってしまったんです。」

「なんと!? それはお辛いじゃろう・・・。」


魔王モヤイと会うためだけに闇の世界を統治して生きたポンジャ姫の姿を見てきただけに、ポンジャ姫の気持ちが分かるハチであった。


「死ね! 人間共!」

「くるぞ!?」

「ナヨン、下がっていろ!」


邪悪なる闇ポンジャ王とハチ、ハチハチ、コウの戦いが始まった。ポンジャ王の闇がハチたちに襲い掛かる。ハチたちは剣で斬ろうとする。


「斬れない!?」

「攻撃ができない!? どうすればいいんだ!?」


闇を剣で斬ることができない。ハチハチとコウにはどうすることもできない。しかし、歴戦の勇者ハチは良いアイデアが思い浮かんだ。


「本体だ! ポンジャ王を攻撃するんじゃ!」

「そうか!? 本体なら攻撃が当たるかもしれない!」

「僕に普通に任せてください!」


ハチのアイデアにコウが邪悪なる闇の本体であるポンジャ王に飛び掛かり会心の一撃を放つ。


「ホーリー&ダーク!!!」


コウの必殺技がポンジャ王を切り裂く。ポンジャ王の闇の一部が消えて、中からどこかで見た顔が現れる。


「ヨン!?」


闇の中から現れたのは邪悪なる闇に吸収されたはずのヨンだった。ヨンは邪悪なる闇から分離していく。


「ありがとう。今度、生まれ変わったら一緒に冒険しようね。がんばって。」

「ヨン・・・ヨン!?」


そう言うとヨンは浄化されたかのように天に召されていった。ヨン自体は100年前に溺れてしまった時に亡くなっていたのかもしれない。ヨンの魂が安らかに成仏していく。


「効くぞ! コウの攻撃ならポンジャ王にダメージを与えることができるぞ!」

「僕が闇を倒します!」

「ちょこざいな!? 人間ごときにやられはせんぞ!」


コウと邪悪なる闇の戦いが激しさを増していく。そしてコウの攻撃が当たる度にポンジャ王の闇が剝がされていく。


「ポンジャ姫。」


そして100年前にポンジャ姫を魔物から救い、邪悪なる闇を封印した魔王モヤイの声が聞こえる。


「も、モヤイ様?」


悲しみのあまり身動きできなかったポンジャ姫だったが、愛しのモヤイの声を聞いて体が自然と反応する。


「バカな!? 確かに吸収したはずなのに!?」


邪悪なる闇のポンジャ王は驚いた。確かに自分の闇の中に取り込んだ魔王モヤイの意志が生きているというのだ。


「そうだ。私だ。」

「モヤイ様!?」

「私は邪悪なる闇に呑み込まれてしまいました。もう肉体は滅び、精神だけが邪悪なる闇の中で存在しています。」

「そんな・・・。」

「ポンジャ姫。もしも100年経った今でも、まだ私のことを好きでいてくれたのなら、私と一緒にこの邪悪なる闇を倒し、1つになってずっと側にいてくれないか?」

「私は今もモヤイ様を愛しています! モヤイ様の元へ参ります!」

「ポンジャ姫!?」


ポンジャ姫はモヤイの存在している邪悪なる闇のポンジャ王に飛び込む。ポンジャ姫は闇の中に消えてしまう。


「お、驚かせおって!? なにも怒らないではないか・・・。」


ポンジャ王の闇が闇の蔦に変わっていく。そして闇の蔦はポンジャ城から飛び出して世界中を覆っていく。


「闇が蔦に変わっていく!?」

「見ろ!? ポンジャ王の闇が消えていくぞ!?」


ポンジャ王から闇が消えていく。中から現れたのはガイコツのような骸とポンジャ王の邪念だけであった。精神的にダメージを負ったポンジャ王の邪念体はまったく動かなかった。


「ポンジャ姫。」

「モヤイ様。」


魔王モヤイとポンジャ姫は邪悪なる闇のポンジャ王の暴走を止め、清々しい表情で2人仲良く手を取り合って天に召されていく。


「良かったですね、ポンジャ姫。これからは愛しい人と一緒ですな。」


ハチはポンジャ姫と魔王モヤイがあの世でずっと仲良く幸せに過ごせることを願った。


「ポンジャ姫はきっと幸せですよ。女の私には分かるわ。」

「そういうものか?」

「これだから男って・・・。」


ナナナナは同じ女なので好きな人と一緒にいたい、引き離されたくはないというポンジャ姫の気持ちに共感していた。


「おまえたちは何者だ!?」


そこに現在の国王のポンジャ3世が暗黒のモヤイ像から戻ってくる。変わり果てた城の中には、ハチ、ハチハチ、コウ、ナナナナと邪悪なる闇のポンジャ王の邪念体がいた。それと魔王モヤイとポンジャ姫の100年愛の力で闇から変換された闇の蔦が至る所に伸びていた。


「ポンジャ3世!?」


ハチハチとナナナナは目の前に王様が現れたことに驚く。あまりにも出来事が多すぎて、ここがポンジャ城であるということを忘れていた。


「おまえたちは・・・。」

「ん?」

「いや、何でもない。」


ポンジャ3世はコウとナナナナを見て一瞬で気づく。一度会ったことのある人間だと。そしてその人間からこれから自分がどういう運命を辿るのかも知っている。


「わしは伝説の勇者ハチ。これは孫のハチハチとガールフレンドのナナナナ。と・・・。」

「コウです。」

「私はポンジャ3世だ。ここで何があったか聞かせてもらおうか。」


ポンジャ3世はハチたちから今までの経緯を聞いた。邪悪なる闇の正体がポンジャ王であったこと。信じがたかったが歴史上の人物である魔王モヤイとポンジャ姫が邪悪なる闇を闇の蔦に変えて、邪悪なる闇が邪念体だけの存在になったことを聞いた。


「信じられないが、目の前に聞いた通りの状況がある。信じない訳にはいかないな。」


ポンジャ3世はハチたちの話を信じた。これもポンジャ3世が人に感化され過ぎたからだろうか、人間を信じることを知っている。


「あれをどうしよう?」

「なんとか封印する方法はないのか?」


邪悪なる闇が消されショックで活動を停止しているポンジャ王の邪念体を指す。しかし封印してもまた闇は甦る。


「倒すんだ。我々の手で。」


ポンジャ3世は邪悪なる闇であったポンジャ王を倒すというのだ。元を言えばポンジャ王を魔物が殺しすり替わったのが全ての始まりであった。ポンジャ3世は自分のおじい様が元凶であると知っている。


「でもどうやって? あの邪念体を倒すんだ?」

「私の体に邪念体を取り込む。」

「何だって!?」

「そんなことをして王はどうするのですか!?」

「邪悪なる闇を生み出してしまったのは私のおじい様だ。その責任は私が取る。ただ、私の姿は魔物になってしまう。どうなるのかは分からないから、コウ。」

「はい。」

「おまえは次元の扉を開いて、そこの女生と逃げろ。」

「え!? なぜそれを!?」

「それからハチハチは剣をコウに託せ。」

「は、はい。」

「ハチ、邪悪なる闇はもう滅びる力をハチハチに託して楽になれ。仲間が待っている。」

「なんか未来でも見てきたような言い方じゃな。」

「その通り私は未来から来た者たちから、全てを聞いている。相手の意志が分からないから妬みや誤解を生み、未来は苦しみに満ちている。私は自分の息子の苦しみが減ることを願って未来を伝えると言う禁忌を犯している。」


そう、ポンジャ3世は未来から来たコウとナーから今後どうなるのかを知っている。そして未来が自分の息子が少しは苦しまないように指示を出す。


「ハチハチはハチの力を受け継いだらホーリー&ダークを撃て、魔物になった私を倒せるはずだ。」

「はい。」

「しかし今度は私が邪念体になって、ハチハチに憑りつくことになる。」

「ええ!?」

「そして私はコウに闇の力を、ハチハチはコウに聖なる力を教えることになる。」

「はあ!?」

「まったく意味が分からないじゃが!?」

「・・・。」

「コウはハチハチの子供であり、私が育てる子ということになる。」

「ええ!?」


一同は饒舌に話すポンジャ3世の話に驚く。当の本人のコウだけは何と言っていいのか分からずの沈黙している。


「ちょっと待った! ハチハチと結婚するのは、私よ! そうか! コウは私が生んだのね! ワッハッハー!」


ナナナナ1人だけは運命を未来を受け入れられない。好きな人の子供が分かり動揺するナナナナ。


「これだけ細かく言っておけば誤解を招くことはないだろう。」

「どうして王は未来を伝えたんですか?」

「運命を変えたいと思った。誰も自分の子供が苦しむ未来を望んでいないだけのことだ。」

「運命を変えられるのでしょうか?」

「運命を変えることができるのは、おまえだ。コウ。我が息子よ。」

「ち、父上。」


コウはこの世界に来るまでに苦しんで成長してきた。2人の人格を持つ父親。相談できる母親もいない。苦しんで苦しんで、この世界にやって来ていた。


「邪悪なる闇の正体を知ったもう1つの未来のおまえとそこの女は全ての始まり、邪悪なる闇が生まれるのを阻止しに過去に行っているはずだ。」


ポンジャ3世に未来を伝えたのはコウとナー。2人はポンジャ3世の予想通り過去に行き邪悪なる闇の正体を知り、邪悪なる闇が生まれないようにさらに過去に向かった。


「ヤツが動き出す前に勝負を着けるんだ。」

「おお!」


ハチたちのこの世界での最後の戦いが始まる。


ポンジャ王を受け入れたポンジャ3世だったが邪悪なるポンジャ王の邪念に逆に意識を支配されてしまい、魔物となったポンジャ3世は暴れて、ハチたちは徐々に追い込まれていくのであった。


つづく。

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