第17話 普通の第3部「最後の選択」10

第2回コン。3部門大賞無しの英断。今までの書籍化作品が売れなさ過ぎるのが悪い。エンターテイメント性がなかったのだろう。まあ、0コンも応募作品が多すぎてコネ無しは埋もれるのが確定。


ここで話の流れで、コウとナーが過去の世界に行くと思わせて、確実に腐女子人気の出るポンジャ3世の世界を全部書いて終わらせよう。



ここはポンジャ城。


「私が魔物であり、人として生きてきたことに意味があったようだ。」


ポンジャ3世はこれから自分が死ぬというのに喜んでいる。自分が間接的にでも息子の役に立てるのがうれしいらしい。それが邪念体になるとしても。


「もうすぐ会えるな。アルテ。」


ポンジャ3世は鎧を着て腰に剣を携えマントを翻し最後の一仕事に出かける。国王として、この世界を守るために。息子との約束を守るために。



ここは5つ目の暗黒のモヤイ像。


「全てのモヤイ像を守ることができたぞ。」

「やりましたね。」

「これで邪悪なる者ヨヨヨヨヨンの復活を阻止できたんだな。」

「はい。これで未来の世界も救われます。」


ハチハチとコウの活躍で暗黒のモヤイ像を5体とも壊されずに済んだのだ。あとは分からないのはナナナナの居場所だけである。


「ナヨンはどこに行ったんだ?」

「きっと大丈夫ですよ。ハチさんとナーは一緒にいます。」

「あの暗黒の騎士が僕のおじいちゃんだって言うのか?」

「はい。邪悪なる者と戦うために100年の眠りから目覚めて、この世にあらわれたんですよ。」


暗黒の騎士の5人の内、ハチを除く4人はモヤイ像を守るために死んでしまった。希望をハチハチに託して。ハチハチがおじいちゃんのいそうな場所を思いつく。


「ああ!? おじいちゃんのいそうな場所が分かったぞ!」

「本当ですか!?」

「魔王モヤイ城だ! あそこにはおじいちゃんの剣が突き刺さっていたはず!?」

「行ってみましょう!」


ハチハチとコウは、ハチとナナナナを探すために魔王モヤイ城に向かうことにした。暗黒のモヤイ像に目に見えない負荷がかかっているとも知れずに。



ここはハチハチの家の前。


「ここが私の家です。勇者候補生なのに敵前逃亡したナナおじいちゃんはもう死にました。・・・聞いてない。」


ハチはトボトボとナナナナの家の隣のハチハチの家に歩いていく。ハチにとってはジュウイチの家と言った方がいいだろう。ハチの表情は無表情で何と言ったらいいのか分からない顔をしている。ハチはトントンと扉を叩く。すると中から女性の声が聞こえ扉が開く。


「はあ~い。どなた?」

「ジュウイチ・・・ジュウイチなのか。」

「え? ・・・まさか!? ハチ!?」


ハチはジュウイチとナナナナに聞かされていたから分かる。何も聞かされていないのにジュウイチは目の前の老人がハチと分かったのだ。そして再開に2人とも涙が自然に流れてくる。そして抱きしめ合う。


「ジュウイチ!」

「ハチ!」


2人の再会に気を遣い正面玄関から裏手に回っていく。そして物置小屋からひよこの声が聞こえてくる。ナナナナは物置の扉を開けてみる。


「ピヨピヨ!? なんで、こんな所にいるの?」

「ピヨピヨ。」

「え? 私にこの剣を守るように言われた?」

「私そんなこと言ってないわよ?」

「ピヨピヨ。」


ピヨピヨは最後まで守り抜くと言っている。ピヨピヨに最強の剣を守るように言ったのは、ナーである。ナーも時かける予言の巫女に言われただけで真相は知らない。おそらくだが最強の剣は、もうこの世界にこの1本しか残っていないだろう。


「ああ~、私も早くハチハチに会いたいな。」


いつも一緒にいたのに、ハチにさらわれて離れ離れになってしまい寂しくなってきた。ナナナナは悲し気な表情を見せる。



ここは暗黒のモヤイ像。


「どうだ? モヤイ像の様子は?」

「はい。異常ありません。」


ポンジャ3世は暗黒のモヤイ像が壊されると邪悪なる闇が復活するとコウとナーから聞き暗黒のモヤイ像の死守のために全兵力で守りを固めている。


「いいか! 暗黒のモヤイ像が破壊されれば、邪悪なる闇が復活してしまう! 世界の平和のために必ず守るのだ!」

「おお!」


国王自ら現地にやって来る。そして国王らしい堂々とした態度にその場にいる兵士たちの士気も充実している。ポンジャ3世自身も未来から来たという自分が育てたという息子の役に立てるのがうれしかった。



ここは魔王モヤイ城。


「ナナナナはどこにいるんだ?」

「あ、バルコニーに剣が刺さっていますよ。」


ハチハチとコウはハチとナナナナを探しに魔王モヤイ城にやって来た。しかし、ここにはハチとナナナナはいなかった。代わりに1本の剣を見つけた。世間では伝説の勇者ハチの剣と言われている、この世界の守り神であった。


「この剣・・・年代物のはずなのに、なんて神々しいんだ。」


ハチハチは剣を抜いた。剣は錆びてボロボロでも仕方がないはずなのに、人々から魔王モヤイを倒した勇者の剣として、平和の祈りを捧げられてきた剣は輝きを失っていなかった。


「ん!? 誰か城の中にいます!?」


コウはふと城の中に人影を見つけた。城の中に女性がいる。ハチハチとコウは面識が無いので分からないが、魔王モヤイ城にいたのは、闇の世界から舞い戻ってきたポンジャ姫だった。


「モヤイ様・・・やっと会えるのですね。」


ポンジャ姫は嬉しそうに高揚した表情を見せる。そこにハチハチとコウが戻ってくる。


「ここは危ないですよ? どうしてこのような場所に女性が1人で?」

「大丈夫です。ここは私のお城ですから。」

「あなたはいったい!?」

「私はポンジャ姫。魔王モヤイ様の妃です。」

「ええ!?」


ハチハチとコウは初めて魔王モヤイが結婚していることを知る。それよりもこんな廃城に1人女性が佇んでいることも不気味であった。


「それにしてもモヤイ様がなかなか甦らない? 誰かが魔王モヤイ様の復活を阻止しているのか? 私がなんとかしなければ!」


ポンジャ姫は長い間、闇の世界で蓄えた闇の力を解放する。ポンジャ姫から膨大な量の闇の力が放出される。


「うわあ!? なんだ!?」

「いけない!? 闇の力だ!? 」


ハチハチとコウはポンジャ姫の放った闇の力の波動に吹きとばされる。闇が世界に飛び散っていく。果たして放たれた闇はどこへ飛んで行くのだろうか。



ここはポンジャ3世のいる暗黒のモヤイ像の前。


「王様!? 何かが飛んできます!?」

「なんだ!? 何事だ!?」


兵士が騒いでいる。遠くの空から何かが飛んでくるのだ。しかし飛んでくるものは物体ではなく形の無いものだった。


「闇だ!? 闇が飛んでくる!?」


ポンジャ姫の放った闇が世界を覆う。ポンジャ姫は愛する魔王モヤイのためなら世界が滅びようが関係なかった。ポンジャ姫の闇に暗黒のモヤイ像がガタガタと音を出し震えだす。


「闇に暗黒のモヤイ像が共鳴しているだと!?」


誰にも分らない。邪悪なる闇に引き裂かれた、魔王モヤイとポンジャ姫の愛が2人を引き寄せる。



ここは過去の世界のポンジャ城。


「あれは、まだ小さいポンジャ3世!?」

「あとをついて行ってみましょう。」


コウとナーはポンジャ3世に言われた通り過去の世界にやって来た。邪悪なる者ヨヨヨヨヨンの正体を知るために。年老いたポンジャ王が死ぬ間際に闇の正体を知っているような話をしたというのだ。


「ここは誰の部屋かしら?」

「静かに、誰かいるぞ。」


コウとナーは部屋の隅に隠れる。部屋では子供のポンジャ3世とベットで年老いた老人が眠っていた。


「おじい様、お見舞いに参りました。」

「おまえは優しい子に育っているな。」

「アルテが優しいからです。」

「いい侍女をもったな。」

「はい。」


子供のポンジャ3世は自分が魔物ということも知らずに無邪気に純粋に育っていた。それだけにポンジャ1世は心が苦しかった。


「私はポンジャ王を殺した。」

「おじい様がおじい様を殺した?」

「私は人間の世界が欲しかった。手に入れてみたくなった。そしてポンジャ王を殺してしまった。人間の心は聖にもなり闇にもなる。私はとんでもない闇を生み出してしまったのかもしれない。


魔物のポンジャ1世は子供のポンジャ3世に独り言のように過去の自分の過ちを語る。ポンジャ3世は話の内容が分からないので、ただ聞いているだけだった。


「人間の生活は私には窮屈であったが、全てが新鮮で喜びに満ちていた。1番の喜びは息子と孫を手に入れることができた。人間の生活を十分に楽しむことができた。もう思い残すことはない。最後に孫に見守られながら眠れる。ありがとう。」

「おじい様。・・・!? おじい様!? おじい様!?」


ポンジャ1世は息を引き取った。その顔は優しい笑みを浮かべていた。皮肉にも魔物が人間の王を殺しすり替わったのに、その魔物の王は幸せな人生を最後まで送ることができた。


「まさか!? 邪悪なる闇の正体は!?」

「もしもそうなら、全てに辻褄が合うわ!?」


コウとナーは邪悪なる闇の正体に気がついた。会ったことはないので邪悪なる闇の正体がどういう者なのか知らないが、邪悪なる闇の名前は分かった。


「戻ろう! 父上の世界へ!」

「・・・違う。違うわ!」

「え!?」

「私たちが行くのはポンジャ王が殺された時よ!」

「そうか! その時にポンジャ王が魔物に殺されなければ邪悪なる闇は生まれない!」

「行きましょう! ポンジャ王が生きている世界へ!」


コウは第3の瞳を開き次元の入り口を開く。2人はポンジャ王の世界に急いで向かうことにした。



ここはポンジャ3世の世界。暗黒のモヤイ像の前。


「モヤイ像が壊れる!?」


ポンジャ姫の愛の闇に暗黒のモヤイ像が共鳴して、ポンジャ姫と魔王モヤイの100年の愛が強力な磁石となり暗黒のモヤイ像が大きな音を響かせ砕けていく。ポンジャ3世はただ眺めるしかできない。



ここは魔王モヤイ城。


「モヤイ様が復活されるんだわ!」


ポンジャ姫の愛の闇が世界を覆う。そして暗黒のモヤイ像と共鳴して、ついにポンジャ姫の愛の闇は暗黒のモヤイ像を壊し始めた。それほど魔王モヤイに会いたいという想いが強いかった。


「なんだって!? 魔王モヤイが復活する!?」

「やめるんだ! ポンジャ姫!」


ハチハチとコウは強力な闇を放ち続けるポンジャ姫を止めることができない。ポンジャ姫は愛しい人に会える喜びに歓喜の表情を見せる。



ここはポンジャ城。


「フフフ・・・。」


世界に聳え立っていた5体の暗黒のモヤイ像が崩れ去った。そして5体の暗黒のモヤイ像は闇の五芒星を描く。そして闇は五芒星の中心に集まる。そう、そこは邪悪なる闇になる者が殺されたポンジャ城だ。


「よくやった! 我が娘よ!」


ポンジャ城に邪悪なる闇が甦る。邪悪なる闇は封印された100年の間に魔王モヤイを吸収して自分の力の一部にしていた。暗黒のモヤイ像も魔王モヤイの意志ではなく、邪悪なる闇の意志であった。


「この世界は私が支配する! その権利が私にはある! ポンジャ王なのだから!!!」


ついに100年の眠りから邪悪なる闇ポンジャ王が甦った。世界は邪悪なる闇に包まれようとしていた。



ここはハチハチの家の前。


「いかねば! ポンジャ城へ!」


ハチはポンジャ城から放たれる邪悪なる闇を見つめている。邪悪なる闇が復活したとハチには分かるのだ。


「行ってしまうのね。ハチ・・・。」

「行かねばならん。もう一度、ジュウイチに会えてうれしかった。」

「がんばってね。伝説の勇者。」

「ジュウイチもな。わしは先にいって待ってる。」


ハチとジュウイチは最後の言葉をかわした。2人は寂しそうな表情ではなく笑顔で別れを告げた。そこにナナナナもやって来る。


「ハチさん、私もポンジャ城に連れて行ってください!」

「危険だぞ?」

「ハチハチもきっと来るはずです! 私はハチハチに会いたいんです!」

「分かった。では行くぞ! 邪悪なる闇と最終決戦だ!」


ハチとナナナナは邪悪なる闇がいるポンジャ城を目指すことになった。ナナナナはただハチハチに会いたいという想いだけだった。



ここは暗黒のモヤイ像のあった前。


「私の城に闇が集まっている!?」


暗黒のモヤイ像が壊れ闇が放出された。その闇が5体の暗黒のモヤイ像の中心であるポンジャ城に闇が集待っている。


「全軍! ポンジャ城に戻るぞ!」


ポンジャ3世は現国王として、この世界に生きる人々の笑顔を守り、平和を保つ責任がある。急ぎ自分の居城であるポンジャ城に戻るのであった。



ここは魔王モヤイ城。


「どうして!? どうしてモヤイ様が目覚めないの!? なぜお父様が!?」


魔王モヤイが甦る、愛しのモヤイ様に会えると思っていたポンジャ姫にはポンジャ城で起こっている出来事が理解できなかった。


「どういうことなのか、お父様に聞かなくては!?」


ポンジャ姫は魔王モヤイが甦らない代わりに復活したポンジャ王に事情を聞くためにポンジャ城を目指す。


「何が起きているというんだ!?」

「とにかくポンジャ姫の後を追いましょう!」


ハチハチとコウもポンジャ姫の後を追ってポンジャ城を目指す。こうして全員がポンジャ城に集まろうとしていた。


つづく。

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