第9話 普通の第3部「最後の選択」2

もう、今で4万字か・・・無名素人は、これで10万字で終わることができるのか、不安である。丁寧に? カット的にスムーズに書くだけにして、話を膨らませるのはやめよう!


一般成人男子が「魔族」「魔物」でもいい訳だ。あ、ちょっと書いたら電車が線路から脱線するようにアナザーストーリーが・・・。



ハチハチ対ポンジャ3世の戦いの回想のつづき。


「私がいるぞ!」

「誰だ!?」


辺りを見渡すが誰もいない。それどころか、どこかで聞いたことのある、嫌な声だ。ハチハチは嫌な予感しかしない。


「ワッハッハ!」


小さな闇が1カ所に集まり、大きな闇が生まれる。その闇は次第に人間の顔を描くようになる。ハチハチが見た大きな闇の顔の正体に見覚えがあった。


「ポンジャ3世!?」


現れたのは朽ち果てたはずのポンジャ3世だった。ハチハチと暗黒の騎士たちが力を合わせて倒したはずであった。


「私の肉体は滅んでも、私の精神まで滅びることは無いのだ!」


邪念体。ポンジャ3世の魔族としての肉体は確かに倒した。しかし、ポンジャ3世は闇の邪念体として、生き残っていたのだった。


「なぜだ!? 肉体も無くなり、この世に未練などないだろうに!? 僕に対する恨みか!? 復讐でもする気か!?」 

「ワッハッハ! 崇高なる私を人の愚かさで邪悪なる者になった人間と一緒にするな。」

「おまえが崇高だと!?」

「そうだ。これまでのポンジャ王たちのように魔族や魔物のことだけを、この世界を征服することだけを考えている訳ではない。」

「なんだと!?」


ポンジャ3世。確かに彼は歴代のポンジャ王たちと何かが違っていた。つまらない事ばかり考え実行してきた、ポンジャ1世と2世とは違い。ポンジャ3世は、人間らしかった。形だけの指示ではなく、正々堂々と王として指揮する姿は、ポンジャ国民から愛されていた。


「私は、人間が好きだ。」

「なんだと!?」


彼は人間を好きになったことがあるのだろう。彼は人間に関心を持ち、彼は人間のことを勉強した。どうすれば人間と共存できるのか? どうすれば魔族である自分を人間が受け入れてくれるのか?


「魔物のおまえが、人間を好きだと!?」

「おまえも、魔者が人間を好きになってはいけないというのか?」

「なに!? なにを言っている!?」


いったい誰に、人間を好きになってはいけないと言われたのだろうか? この話は、コウの生い立ちの過去の話なので、ポンジャ3世の生い立ちの話は、またの機会にしよう。


「私の願いも、人間と変わらない。」

「人間と!?」

「おまえが自分の子供に生きていてほしいと異世界に逃がしたように、私の願いも、私の子供が生まれ育つことだ。」


魔族であっても、人間と深く関わり過ぎたポンジャ3世は、人間に感化されているのかもの知れない。自分の血を継ぐ者、自分の意志を継いでくれる者を求め望んでいた。


「そんな感情が魔物にあるのか!?」

「私にはある。この世界を人間と魔物が共に手と手を取り合い、共存共栄していける道を築いていける後継者が欲しいという気持ちが。」


ハチハチの想像を超える、ポンジャ3世の壮大なスケールの構想であった。人間であるハチハチは、人間のことだけを考えていた。魔物は全て駆逐しなければいけないと思っていた。


「人間と魔物が一緒に暮らす!?」

「そうだ。」


まさか魔物であるポンジャ3世の方が、人間に手を差し伸べ、人間と魔物が共に暮らしていける道を模索していたのだった。


「人間と魔物が互いを意味もなく、姿が違うと忌み嫌うのではなく、人間と魔物が互いを理解し認め合い、共に生きていく世界のために!」

「そんな世界が可能なのか!?」


この世界は人間が住んでいた世界だったが、邪悪なる者ヨヨヨヨヨンが闇の蔦で世界を覆いつくし、太陽の光が必要な人間や動物生物は、生命の危機を迎えている。人間の数が減り、魔物の数が増えればバランスが良いのだが・・・。


「私は人間を救うために暗黒のモヤイ像を破壊しようと試みた。邪魔をしたのは、おまえたちだ!」

「僕たちも普通に世界を救おうとしただけだ!」


確かにポンジャ3世の行動に裏表はない。世界のために、人間のために、暗黒のモヤイ像を破壊しようとはした。結果的に邪悪なる者が復活してしまった。ポンジャ3世とハチハチ、人間と魔物は立場が違うので、分かり合うことは難しいのであった。


「今となっては、そんなことはどうでもいい。私の肉体はおまえの性で、この世の中から滅してしまった。責任を取ってもらうぞ。」

「なに!?」

「おまえの肉体は私がもらった!!!」


ポンジャ3世の闇の邪念体が、ハチハチの体に侵入する。疲れ切っているハチハチには邪念体に対し、抵抗することができなかった。


「うわあ!?」


ハチハチは苦しんだ後、気を失って、その場に倒れ込んだ。こうしてハチハチの体に2人の人格をもった、ポンジャ4世が誕生したのだった。


ハチハチ対ポンジャ3世の戦いの回想のつづき 終わり。



ポンジャ城のバルコニーの王の戴冠式の回想。


「ポンジャ4世、万歳! ポンジャ4世、万歳!」


ハチハチは、ポンジャ3世の妹ポン姫と結婚した。そして、ポンジャ国民の英雄ポンジャ3世の後を継ぎ、ポンジャ4世となり国王になった。これはハチハチが望んだことではなく、ポンジャ3世の邪念体がハチハチの肉体を陽が経つにつれて、支配していく時間が伸びていったからかもしれない。


「おめでとうございます!」

「ありがとう!」


お祝いに集まった国民たちに笑顔でお妃と共に手を振る姿は、ポンジャ3世の姿とそっくりであった。


ポンジャ城のバルコニーの王の戴冠式の回想 終わる。



コウ、成人を迎えた回想。


「殺せ! 僕を殺せ!」


ここはポンジャ城。


「父上!? 何をおっしゃるっているのですか!?」


ポンジャ4世とコウがいる。父親が息子に、自分を殺せと迫っている。必死の形相で息子に迫る父親。その光景に戸惑う息子。訳が分からないのである。


「殺せ! 殺すのだ! 僕が普通に、僕である間に!」

「き、気でも狂われたのですか!? 父上!?」


自分を殺せなどと狂気の沙汰としか思えなかった。いったい父に何が起こったというのだ!?


「もうすぐ僕は消えてしまう。」

「消える!?」

「この体は、闇の者にのっとられてしまう!」

「闇の者!?」

「さあ! 僕の意識がある間に普通に殺すのだ!」


コウには理解できなかった。いきなり消えてしまう? 闇の者に体をのっとられてしまう? だから殺せと言われたからと言って、素直に父親を殺せるものではない。


「父上、おやめください!? 何かのご冗談ですよね!?」

「冗談ではない! 僕がおまえに教えたのは、普通に聖なる力だけだ!」

「え!?」


父上からは聖なる力を教わった。しかし、教わったのは聖なる力だけではなく、闇の力の使い方も教わったのだ。


「何を言っているのですか!?」

「僕の精神が闇に呑み込まれ消えてしまう前に、私を殺せ!」


まだ理解でいない。闇に呑み込まれるとはどういうことなのだろうか。コウには、父上が乱心したようにしか見えない。


「そうはさせんぞ!」


部屋の明かりが一瞬で消えた。暗闇に包まれる。そして、暗闇の中に邪念体の顔が浮かび上がってくる。


「ば、化け物!?」


初めて見る暗闇に浮かぶ顔に恐怖を感じる。この化け物はいったい何なのだ!? と戸惑うしかなかった。


「化け物? 父親である私のことを化け物と呼ぶのか!」

「父親!?」


父親。化け物は言った。確かに父親と言ったのだ。コウの父親はポンジャ4世だけである。


「僕の父親は、父上だけだ!」

「私が教えてやっただろう? 闇の力の使い方を。」

「なんだと!?」

「私がおまえの父親だ!」


暗闇に浮かぶ顔が自分に闇の使い方を教えたと言う。確かに子供の頃から、聖なる力を教える父上と、闇の力を教える父上は、まるで別人の様で、父親が2人いるような不思議な感覚であった。


「闇の邪念体・・・そいつの正体は、ポンジャ3世だ!」

「ポンジャ3世!? おじい様は魔王モヤイとの戦いで戦死したはず!?」


世間には、ポンジャ3世は世界を救った英雄だった。魔王モヤイと壮絶な戦いの末、自らの命と引き換えに命を落としたとされている。


「ち、違うんだ・・・真実は違うんだ!」

「真実!?」

「ポンジャ一族は、魔物の一族なんだ!」

「なんだって!?」


初めて明かされる歴史の真実。人間が暮らす平和な国、ポンジャ国を建国したのは、魔物だったのか!? とコウは思った。


「な、なぜ魔物が人間の国を!?」

「全てを語っている時間はない! 早く私を殺すんだ!」

「父上を殺すだなんて・・・そんなこと、そんなことできる訳がないじゃないですか!?」


ただ震えていた。一度にたくさんの情報を得て、頭の整理が追い付かないのである。ポンジャが魔物なら、僕も普通に魔物だというのか!? 息子が父親を殺すなどあって良いはずがない!? 成人男子でも津波のように押し寄せる真実に押し潰されそうだった。


「おまえしかいないのだ。この世界を託せる者は、おまえだけなのだ!」


ポンジャ4世は剣を抜き、そのままコウの元に歩いて近づいていく。剣をコウに渡そうと手を伸ばす。


「僕の体がポンジャ3世の邪念体に完全に支配される前に、僕を殺せ!」

「できません!? そんなことできる訳がない!?」


向かい合う父と子。殺せと迫る父親。拒絶する息子。緊迫している場面なのに、どこかで自分は何をしているんだ? 冷静で他人事のように見ている自分もいた。


「もう長い付き合いだというのに、魔物というだけで体の持ち主が私を嫌うか・・・。」


既に肉体は滅び、闇の邪念体として、ハチハチの体の中で生き続け、ハチハチの精神よりも強い精神力で体の主導権を奪い、コウの父親として暮らしてきた。厳しさはあったが、まるで人間の父親のように。


「これも人間か・・・。」

「うわあ!? コウ!? 僕の息子よ!?」

「父上!? 父上!」


闇の邪念体が、ポンジャ4世の体に入って行く。あっという間にポンジャ4世から聖なる光が消え、闇のオーラに包まれる。


「いいだろう。私の願いも、我が子が生きることなのだから。」


ポンジャ4世は無理やり剣をコウに握らせる。コウは逃げることも、動くこともできずに、ただただ剣を握らされる。その手にポンジャ4世も手を添える。


「聖なる五芒星と闇の五芒星を1つに合わせろ。そうすれば聖闇の相反する属性は互いを拒絶し爆発的なエネルギーを発する。」

「父上!?」

「そうだ。おまえは私の息子だ。子に生きてほしいと願うのは、人間も魔物も一緒なのだから。」


グサ! 剣がポンジャ4世の体を貫いた。形はコウが剣を刺したように見えたが、ポンジャ4世が自ら体に剣を突き刺した。コウの手には、赤い色の血と闇色の血が滴り流れている。


「さあ、私を殺せ。おまえが私の意志を継いで、この世界を、この世界の人々を守るんだ。」

「父上!? できません!? 僕には普通にできません!? 父上を殺すなど!?」

「バカ者! 聖なる父親が消えてしまえば、私は人の心を保てなくなる! 私が魔物になってしまう前に、息子である、おまえの手で殺してくれ!」

「父上・・・。」


コウは泣いている。まだ今起きている出来事は理解できていない。それでもコウは父の頼みに答えるしか選択肢はなかった。大好きな父親が魔物になってしまう前に、自分の手で殺すしかないのだ。


「いでよ。聖なる五芒星と闇の五芒星よ。」

「そうだそれでいい。」

「聖闇1つになりて、僕の父上の魂を滅せよ。」

「立派な息子に育ったな。」

「父上!」


ホーリー&ダーク!!!を放つ。ポンジャ4世の肉体が滅んでいく。もうハチハチの魂もいないだろう。そして、ポンジャ3世の魂も消えていく。


(私は長く生き過ぎたようだ・・・これで君の元へ・・・。)


完全にポンジャ4世の肉体が無くなった。闇に覆われていた部屋に明かりが戻ってくる。もしも鏡があったら、きっとコウは酷い顔をしているだろう。


「父上・・・。」


それは父親が人間であろうが、魔物であろうが関係なかった。息子が父親を殺したという事実。コウは父親を殺した。


コウ、成人を迎えた回想 終わる。


つづく。


あとがきなどいらないのだが、投稿すると4800字・・・惜しい! 1話5000字以上で考えると200字足らない。ので、あとがき。


続きを書いても、ダラダラ文字数を増やすだけ。それなら、もう急いで書く必要もないので、ゆっくり話を進めていけばいい。


忙しすぎて、時間がかかり過ぎだな。本来なら、もう書き終わっていてもいいのに・・・。新しいアイデアが思いついても、この話に無理やり追加するか、第5部にしてしまうか? 


やっと5万字が見えてきた。さっさと10万字を終えたいものである。


あとがき、終わる。





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