華々しく舞う狂気

 忠興と珠の関係は、読んでいて胃が痛くなる。他人よりの承認なくば満たされない凡人からすれば、その拒絶にこそ美を見出すかの超人に感嘆し……まぁ、ああはなれないし、なりたくもないよなあ、とも思うのだけれども。

 体は許しても、一切忠興に心開くことがかなった珠。乱世で女性の「個」が認められなかったその時代に、あまりにも高く聳え立つ矜持にのみ従い、己を貫き通している。その強さは、しかし、あまりにも悲しい。

 息が詰まるほどの誇り、むせ返らんほどの狂気。信長と光秀という、大いなる「安土桃山」を失ったその先の世に取り残された二人は、共に身の置きどころを見失ってしまったようにも映った。

 ほとばしる情念。その激しく生きる様には、ある種の憧れを抱く。心に抱いたものに対し、もっと夢中にならねば。そう思った。

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