第3話 盗賊退治開始!

「さぁーて、んじゃ大人しく投降しろ」


イオルは30人ほどいる盗賊に対して投降しろと言ったが盗賊たちは、当然素直に言うことを聞くわけはなく、自分たちが数的優位に立っていることから戦闘態勢に入っていた。


「あ〜らら。なあ、ミレイアどうやら投降してくれるやつは1人もいないみたいだぜ。」


「当然でしょう。今まで犯罪を犯してきた連中が素直に言う事を聞くわけないじゃないですか」


イオルの発言に呆れたようにミレイアが言う

そんな緊張感のないやり取りに苛立ったのか盗賊は


「おい!テメェら!たった2人で俺たちに勝てると思っているのか?あぁん⁉︎こっちにも魔導士はいるんだぜ!」


やたらと大声の盗賊の声を鬱陶しそうに聞きながらイオルは


「いや、2人で充分だからここに来てんだろうが。うだうだ言ってないでさっさと終わらせようぜ、もう帰りたいんだよ。」


「ふざけやがって!ぶっ殺してやる!」


大声の盗賊がそう言ってこちらに走りだすとと他の盗賊たちも続いてこちらに走ってきた。


ヒャッハー!


行くゼェ!


うおおぉ!



やたらとテンションの高い盗賊たちが剣やナイフを片手に攻めてくる


「よし!ミレイアなんとかするんだ」


「先輩が焚き付けたんだから何とかしてください。」


盗賊が走ってきているにも関わらず二人の間に緊張感などまるでない。


「はぁ〜あ。じゃあいつも通りやるか〜。俺がこいつらの攻撃を防ぐからミレイアが殺さない程度の攻撃魔法で倒していく」


「魔導士がでてきたらどうしますか?」


そういえば魔導士が居たんだっけなとミレイアの言葉で思い出したイオルは


「ふむ。魔導士の実力しだいだがミレイアでもやれそうだったらミレイアがやってくれ。」


「わかりました。」


ミレイアは一瞬「イオル様がやって下さい」と言おうと考えたが、イオルが自分より魔導士を相手にした戦闘経験の少ないミレイアに場数を踏ませてあげようという考えに気づき素直にイオルの案に賛成した。


「ごちゃごちゃ言ってんなぁ!」


大声盗賊は右手に持った剣をイオルに向かって斜めに斬り降ろしたがイオルは右手に持った杖を少し上に上げてから軽く地面におろした、それだけで盗賊の攻撃は、イオルの目の前を剣が滑るように通過していった。


イオルが使った魔法はシールド魔法に摩擦低下をエンチャントした二つの魔法を重ねがけした盾である。イオルは軽く杖をついただけで二重詠唱ダブル・キャストを行なったがこれはかなり技術を必要とする。


もちろん大声盗賊はそんな高度なことが行われているとは分からずただ自分の攻撃が全く通じていない事実に驚いていた


「くそっ!なんで攻撃があたらねぇ⁉︎」


他の盗賊たちも


「なんでだ⁉︎」 「どうなってやがる⁉︎」


と、戸惑いの声を上げていた。そんな隙をミレイアは見逃さず


「吹き飛びなさい 〈エア・ブロウ〉」


ミレイアがそう唱えると右手に集めていた魔力が風に変化して4人の盗賊を吹き飛ばした


「がああっ!」 「ぐへぇ!」


情けない声をだして魔法をくらった盗賊は気絶していく


その後もミレイアは


「エア・ブロウ」 「エア・ブロウ」


冷静に盗賊を仕留めていったが盗賊の残りが10人くらいになったところでイオルは突然、表情を歪ませたあと呟いた


「はぁ〜、こりゃ失敗したな。」


ミレイアもそんなイオルの様子をおかしいと思ったのか


「イオル様、何かあったのですか?」


突然、攻撃が止んだのに戸惑ったのか盗賊たちも動かない。


「ああ、最初から魔導士らしきやつが居ないとは思っていたんだがまさか逃げたんじゃなくて結界張って魔法を準備していたとは予想外だったぜ」


「えっ⁉︎それって…」


イオルの言葉を聞きミレイアも辺りの気配を探ったが何もわからなかった。

そんなミレイアに気づいたのかイオルが


「まあ、結界で魔力を隠してるんだから相当見つけにくいのはしょうがないとして、今はその結界から僅かに魔力が漏れ出してやがる。」


「漏れ出している?」


「ああ、つまり奴は中で何かしらの大量に魔力を込めた魔法を準備させてるってことだ、場合によっちゃこの森ごと吹き飛びかねない威力の魔法をな」


「そ、そんな⁉︎」


情報では敵は上級魔法の使い手と言われていたが普通の上級魔法では森一つ吹き飛ばすことなど出来ない。しかし、通常時に込める魔力より多くの魔力を込めれば当然威力は上がる、つまり今敵がしようとしているのはそういうことなのだ。そんな状況に気づいたミレイアはイオルに慌てて聞いた


「ど、どうするんですか⁉︎このままじゃ私たちもろとも消し飛ばされてしまいます!」


「ああ、だから失敗したって言ったろ。いま、下手に奴を攻撃したら集めた魔力が暴発するかもしれねぇから迂闊に手を出せねぇしな。」


そんな2人の深刻そうな状態に気づいたのか盗賊たちは


「ははははぁ!どうだ内の魔導士様には敵わねぇだろ!」


自分たちも魔法に巻き込まれるとは考えていない盗賊たちは調子のいい事を言っていたが、イオルとミレイアの耳には全く届いていなかった。


マジでマズイな。このままじゃこの森は吹き飛ぶ。俺とミレイアは逃げようと思えば何とかなるが逃げたとしても森が吹っ飛んでたら後で絶対国王様に怒られるよなぁ。どうすっかなぁ?


若干、緊張感が足りない感じだがイオルにしては真面目にこの事態を何とかしようとしていた。


「よし!ミレイア、こうなったらもう方法は一つしかない。」


「聞くのがすごく怖いんですがその方法って何ですか?」


「うん。もう魔法の発動は止められないから魔法は撃たせて正面からそれを防ぐしかないと思うんだ」


「そんな事できるんですか⁉︎話によると相当魔力を込めているそうですけど」


「大丈夫、大丈夫。防ぐの疲れそうだからホントはやりたくないんだけど、このまま森が無くなると後で国王様に怒られるしなそっちの方がよっぽど怠いしな。まあ、伊達に《絶対防御》なんて呼ばれてる訳じゃねーから心配すんな」


イオルが《絶対防御》と呼ばれていることは知っているし、今までの戦いからその凄さも知っているミレイアだがここまでの魔法を受けるという状態ははじめてだったため動揺してしまったが、イオルのいつも通りさに落ち着きを取り戻した。


「そうですか、でしたらお願いしますイオル様

。」


「りょーかい。じゃあ俺の背後にに下がってろ

よ」


「わかりました。」


そう言うとミレイアはイオルの背後に移動した。


その直後


パリン!


突然、何かが割れるような音がしたあとイオル達を魔力の奔流が襲ってきた


「こ、こんなに魔力を込めていたなんて…」


思わずミレイアの口から不安が溢れでる


「おーおー。大した魔力だなあ」


対して、イオルは予想していたのか感心の声を上げている


そんな魔力の奔流の中心から一人の男が出てきた。

その男は30を少し過ぎたくらいで格好は盗賊達と同じ汚い格好ではなく魔導士のローブを羽織っていた。


「あんたが、噂の魔導士さんか?」


「どんな噂を立てられているのか知らないがおそらく私がその魔導士だ。」


「上級魔法を使える魔導士がなんで盗賊なんかやってる?」


「ふん!そんなものこの腐った世界がいけないのだ!私は別の国で魔導士をしていた。そこら辺の魔導士と比べれば優秀だった。しかし!私より弱いくせに貴族だからというだけで私よりも劣っている連中が次々、私の上をいくそんな生活に耐えられなくなったのだ!」


「あっ、そうなの」


イオルは、それなりの理由が出てくるのかと思っていたのだが予想していたのよりしょうもない理由だった為返しが適当になってしまった。


「貴様舐めているのか!私がこの魔法を放てばここら一帯は吹き飛ぶぞ!」


「うるせぇな。そんな事はわかってるんだよ。これ以上お前の話に付き合うつもりはねぇ。さっさと撃ってこい」


そんな2人の尋常ではない雰囲気を感じたのか周りにいた盗賊たちは一目散にこの場から逃げ出していた。


ミレイアはイオルを信じているのか全く動揺した様子はなくただイオルの背中をみつめていた。





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