第2話 いざ盗賊退治に出陣!


部屋をでて歩いているとミレイアが


「では、私は少し支度をしてくるのでイオル様は先に門のところまで行っていてください。」


「おい、ミレイア。こうゆうのは普通お前は準備してからくるものなんじゃないのか?」


おかしいと思いたまらずイオルが質問すると


「すみません。イオル様が動くかどうか分からなかったので準備をして無駄になったらいけないと思い…」


「思い…っじゃねーよぉ!それくらい準備しようぜぇ」


「男なんですからそれくらいのことでぐだぐだ言っていないではやく下に行っててください、私も直ぐに向かうので。」


これ以上は何も言い合うつもりは無いのかミレイアはスタスタと自室の方へ歩いていった。


「はぁ〜。しゃあねぇ向かうか」



門の前で少し待っていると先ほどまではピシッとした秘書スタイルだったミレイアが白いローブを羽織り右手に木製の杖を持っていた。


「お待たせしました。では、行きましょうか」


「行きましょうかって何処に行くんだよ?」


「王都を出て少し先にあるセウィンの森にその盗賊はいるそうです。」


「セウィンの森ならそんな遠くないからすぐ終わるな。」


盗賊に勝てないなど微塵も考えていないイオルだがそんなイオルを見てもミレイアは何も言おうとはしなかった。




王城をでて街を抜けて王都の外に出るとイオルが


「それじゃあ、翔ぶぞ」


当たり前のように言うイオルに少し呆れながら


「また、テレポートで行くんですか?相変わらずデタラメな魔力ですね。」


「別に良いだろう。なんでわざわざ森まで歩いて行かなきゃいけないんだ、めんどくさい。」


心底嫌そうな顔でそう言うイオルだが普通の魔導士ではそんな芸当は出来ない。

イオルのテレポートは視界に映る範囲内なら詠唱も必要とせず瞬時に移動出来るが通常より遙かに多くの魔力を必要とする。

普通のテレポートは前もって転移先に魔法陣を張りそこに翔ぶというもので魔法陣に魔力を注ぎ込むことで使えるようになるのでそんな瞬時にポンポン移動できるような魔法ではない。


「何を言っても無駄でしょうから行きましょうか。」


「普段もそうやって簡単に引き下がってくれるとありがたいんだけどなぁ…」


「それは出来ません。私がいないとイオル様は何もしませんから」


「ぐ……。あ〜はいはい、じゃあ行くぞ〜。ちゃんと捕まれよな」


イオルがそう言うとミレイアはイオルの服の裾を掴んだ


「大丈夫です。」


「んじゃ、テレポ〜ト」


気の抜けた声でイオルが言うと目の前の景色が一瞬で変わっていた。

先ほどまでかなりの距離があった森の入り口が目の前にきていた。


「うっへぇ〜。あいかわらずだなこの森は、虫とか多くてホント嫌なんだよなぁ」


イオルの発言にミレイアも若干顔を顰めた。


「イオル様、結界を張ってください。」


ミレイアは何事もないかのように言った。


「う〜ん?結界って何の結界だ?」


イオルはミレイアの言っていることの意味を分かっているのか口元をニヤニヤさせながらミレイアに聞いた


「そ、それは… あ、あれですよ…も、もし盗賊から奇襲を掛けられたら危ないのでそのための防御の結界を…」


少し慌てた様子で言い訳をするように言葉を紡ぐミレイアに気を良くしたのかイオルは


「ほほう?しょうがないなぁ。じゃあ、攻撃されたら当たる直前で発動する防御結界の魔法を張っとくよ。それでいいだろ?まあ、俺の周りには虫除けの結界も張っとくけど〜」


「くっ…」


今日一番の笑顔でそう言うイオルに腹立たしさと恥ずかしさが入り混じった顔でミレイアは


「わ、私にも虫除けの結界を張ってください。お願いします」


取り繕うことを諦めたのかミレイアは素直にイオルに頼んだ。当然ミレイアも虫除けの結界くらい張ることは出来るがそれを維持し続けていると盗賊と戦闘になったとき魔力が足りなくなってしまうかもしれないのだ。それをイオルも分かっているからニヤニヤ顔でミレイアに意地悪をしているのだ


「ふむ。そこまで言うんならしょうがない!ほれ」


イオルが気の抜けた声を放つとイオルとミレイアを囲うように一瞬青いドーム状の魔力が形成されたがすぐに見えなくなった。


「んじゃあ進むぞ。さっさと盗賊見つけて帰るぞ〜」


「あ、ありがとうございます。」


少し釈然としないながらもお礼をいい森の中に進んでいくイオルの後を追った。





「ふーむ、いないな。もう魔力探知使うか〜」


見つからない盗賊に嫌気がさしたのかイオルがそんな事を言う


「ですがイオル様、敵に魔導士がいる以上魔力探知を使ったら此方の存在に気づかれるのでは?」


ミレイアの言うことは正しいがイオルは


「そんなもん知るかぁ〜、俺はさっさと帰りたいんだよ。魔力探知で見つけたら短距離ワープを繰り返して一気に盗賊の所に行くそして全員倒しておしまいだ」


何も考えて無さそうで意外とマトモな作戦にミレイアも納得したのか


「確かにこのまま森を探しても拉致があきませんしその作戦で行きましょう。イオル様お願いします。」


「おーけー。それじゃあ行くぜ」


「サーチ」


イオルはそう言うと目を閉じ魔力の気配を探っている。


少しするとイオルは目を開き口元をニヤケさせながら


「みつけた」


と呟いた。


「行くぞ、ミレイア捕まれ」


イオルがそう言う時にはもう服の裾を掴んでいたミレイアに少し驚いた顔を見せつつイオルは


「テレポート」


「テレポート」


「テレポート」


「テレポート」


「テレポート」





そうしてしばらくテレポートしているとようやく人影が視界に入った。


「見つけたぜ、盗賊」


盗賊たちは魔力探知されたことに気づき逃げようとしていたのか目の前にいきなり現れたイオルとミレイアに驚いていた。


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