第6話 吹き荒れる憤怒の風


ドサッ!


「っつつ!」


 高い位置から叩きつけられるも幸い地面の雪がクッションとなり怪我はなかった。見上げると崖の切り立った場所に洞窟はあったらしい。辺りは岩の壁に挟まれ上には晴れた夕焼けが覗いていた。


「一体何が……あっ!」


 立ち上がり再び洞窟を見上げるとあの春華がこっちを見下ろしている。


「……わかったぞ。お前本当は優衣じゃないんだろ! 私の知らない間にすり替わったんだろ!」


「な、なに勝手言ってんのよ! 馬鹿じゃないの!」

「うるさい……うるさいうるさいっ!!」


ビョォォォ──────!


「きゃーっ!!」


 再び突風が吹き、優衣の体を地面に叩きつけた。

 と、その時、聞きなれた声!


『山ノ瀬っ!!』


「き、北上!」


 京が向こうから走ってくるではないか!

 思わず優衣も我を忘れ駆け寄る。


「一体どうしたんだ?」

「あ、あいつが!! あいつおかしいの! 気を付けて!」


 言われて春華を見る京、それに応えるように春華はこっちを睨み返した。


「お前……お前か餓鬼! 優衣をこんな風にしたのはお前なんだろ!!」


「何だこいつ……山の妖怪かなんかか? わけわかんねぇこと言ってるが」

「うるさい! お前なんかっ!!」


 その瞬間、京の足元からつむじ風が巻き起こった。黒いつむじ風は京を高く巻き上げると地に叩きつける。


「ぐあーっ!?」

「北上ー!!!」


 慌てて京の落ちた場所へ駆け寄る。あの高さだ、もしかすると死んでしまったかもしれない! だが幸い本人はむくりと起き上がる。


「……やっろう」

「逃げよう北上! あんなわけわかんない奴、このままいたら殺されちゃう!」


 優衣の言葉とは逆に、京は石を拾うと春華に向かって走り出す。そして思い切りこぶし大の石をぶん投げた!


 だが命中すると思われた石は風華の目前で軌道を変える。

 逆に北上目掛けて飛んできた!


「がっ……」


 反応よくこれを避けようとするが頭をかすめ血が流れた。


「ふん! 馬鹿め」


「もうやめてっ!!!」


 京を庇うように風華の前に立ちはだかる優衣。


「なんでこんな真似するのよ! もう私達なんてほっといてよ!!」


  泣きそうになるのを堪え、必死に訴える姿に春華の動きが一瞬止まった。


「……嫌いだ」


「……やっぱり人間なんか嫌いだ!!!」


「みんなみんな……みーんな大っ嫌いだ────っ!!!!!」



「きゃぁぁ!!」

「うおぉっ!!」


 辺りに強風が吹き荒れ、優衣と京は瞬く間に地面から引き剥がされる!

 その後はめちゃくちゃだった。

 上へ下へと吹き飛ばされ体が引きちぎれそうになる!


「嫌ぁぁー! 死んじゃうっ!!」


 天高く舞い上がった二人の体はどこかへと吹き飛ばされていった……。

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