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 すると


「ねぇねぇ、君、見たことないんだけどどこの小隊?」

「まつ毛バサバサ! 超綺麗!」

「肌つるつるだね、何の化粧水使ってるの?」


 それまで黙っていた霜月たちが、わぁっと司を取り囲み姦しくお喋りを始めた。

 余りの勢いに、少しだけ身を引く。


「あの、僕は……」

「やまちゃんとは何で知り合ったの? やっぱ合コン?」

「やまちゃん合コンマスターだもんねぇ」

「この間の合コン、イケメンぞろいでちょー良かったよ」

「マジ? プロウス小隊とのやつ?」

「そうそう、副隊長の山岸くんがマジかっこよくてやばかった!」


 口を挟もうにも、彼女たちの勢いに押されて上手く話が出来ない。どうやら自分は女生とあまり話さなかったようだ。知識は沈黙している。

 どうしようかと思考を巡らせていると、目の前に朝食の乗ったおぼんが乗せられた。視線を上げると、微苦笑を浮かべた悠太が向かいの席に腰掛けるところだった。


「あんま質問攻めにして司っち困らせないでくださいっす」


 悠太の苦言に、霜月はグロスの乗った唇を小さく尖らせる。


「困らせてなんかないわよ。ねー、みぃ」

「そーだよ~。そんな綺麗な子連れてるやまちゃんが悪いんじゃない」

「また真菜ちゃん先輩に怒られるよ~?」


 からかう口調で笑われ、悠太が軽くむせた。まな、という女生徒と何かあるのだろうか。昨日の話から考えるに、悠太の想い人と考えるのが妥当な気がする。けれど確証がないのでただ悠太を見つめると、彼は頬を赤らめ軽くこちらを睨んでいた。


「悠太くんの好きな人ですか?」


 他意なく尋ねる。

 気持ちを落ち着かせるためにかお茶を飲もうとしていた悠太が、軽くお茶を噴き出した。


「司っち!」


 可哀そうに、顔を真っ赤にした悠太は、焦ったように司の口を塞ぐ。しかし時すでに遅し。霜月たちは嬉々とした表情でずいっと身を乗り出す。


「そーなのよ。一個上の先輩でね、ちょーかわいいの!」

「霜月!」

「そうなんですか。その方は合コンなどなさるんですか?」

「司っち!」

「しないしない。誰かさんと違って一途でね、合コンとか軟派な真似しないの」

「硬派でカッコいいよねぇ」

「頭撫でたくなる~」


 話を総合して考えるに、硬派で可愛く、頭を撫でたくなるということはおそらく背も小さいのだろう。一途というからには、誰か好きな人でもいるのだろうか。

 しかし、昨日の話を聞く限り、悠太も合コンが好きと言うより、そのまなという先輩の気を引きたいだけのように思える。悠太は悠太で一途なのだ。

 素敵な組み合わせだ。きっと両想いになったらとてもいいカップルになるに違いない。まな先輩の想い人が悠太であるようにと、そう願う。


「一途な悠太くんに、お似合いの方ですね」


 だから、思ったままを口にした。本当に、心からそう思う。お似合いの二人だ。

 けれど何故か、霜月たちも悠太も目を丸くして固まった。何かおかしなことを言っただろうかと、首を傾げる。

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