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「随分美人さんつれてんじゃん、合コン相手?」


 美人と言われ、頬を撫でる。自分の顔を、そういえばよく見ていない。評されている限り顔立ちは整っているようだが、女性に間違えられるとは複雑な心境だ。

 寺島と呼ばれた少年の言葉に、悠太は笑いながら手を横に振った。


「今日からウチの部隊に配属になった、司っちっす。ちなみに男の子っすよ」


 その言葉に、少年たちは首を傾げる。


「司っち?」


 紹介してくれた手前自己紹介しないわけにもいかず、司はおずおずと一歩踏み出し、小さく一礼した。


「……神宮寺、司……です。本日付けで、ベクター小隊配属となりました。よろしくお願い致します」

「配属って……この時期に?」


 不信がる少年に、悠太が快活に笑う。


「転入ってやつっすよ」

「あ、そうなのか」


 転入自体はさほど珍しくないのか、不明瞭な説明でありながら少年たちは納得したようだった。


「オレ、寺島 祐樹。ブリッツ小隊四番機だ、よろしく」

「竹川 智也。ガット小隊五番機。これからよろしく頼む、神宮寺少年」

「ヴィント小隊三番機、稲葉 冬治。仲良くやろうや、兄弟」


 少年たちの挨拶にひとつひとつ礼をし、その名前を覚えていく。悠太のように全員と親しくなることは出来ずとも、せめて廊下で会った時に会釈できる程度にはしておきたかった。


「で、何で商店街に来たんだ?」


 竹川の問いかけに、悠太は肩を竦める。


「司っちの私服買いに来たんっす」


 その答えに、三人は目を丸くした。寺島がずいっと膝を乗り出し、その勢いに司はまた悠太の影に隠れた。三人の視線が肌に痛い。司の不安に気付いたのか、悠太が庇うように一歩前に出て明るく笑った。


「こっち来たばっかで私物がないっていうから、買いに来たんっす。おススメの店があったら教えてくれないっすか?」


 人懐っこい笑みに、納得したのか三人は「んー……」と考え込んだ。


「本なら月見堂書店があるよな」

「服ならあっちのブティックに安くていいの揃ってんぞ」

「文具なら月見堂書店の隣に文具屋がある。本を見がてら探すのが良いのではないか?」


 それぞれが薦めるものを教えてくれ、ひとつひとつ覚えていく。正直な話欲しいものなどなかったが、それではせっかく時間を割いてくれた悠太に申し訳ない。とりあえず何点か、高くないものを頼むとしよう。

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