OPトークと特別ゲストの紹介!



 混沌の大魔王、ロキトゥス=ヴィステ=サドゥプレゼンツ! 僕が協賛!


 DJマオウ!


「と助手ユミルの」


 ついに侵略者たちがやって来たけど撃退しましたよスペシャル!

 DJマオウのデッドオブナイトラジオ特別篇、始まります!


(なんかオーケストラによる管弦楽が流れ始める)


 はい。そういう訳で特別篇と銘打った第121回目のデッドオブナイトラジオですが、何が特別なのでしょうかユミルさん!


「はい。いつもは録音した番組を放送しているのですが、今回は初めての生放送となります。リアルタイムで皆様にお届けしております」


 いえーーーーーーー!!(どんどんパフパフ)

 初めての生放送! 初の生! 生絞りですよユミルさん!!


「マオウ様、表現が大変下品です」


 深夜番組なんだから多少下品でも何の問題も無い(キリッ)

 生放送、それは危険な響き。いつ何が起こるかわからないハラハラドキドキのアクシデントも楽しまなくちゃ損だよ損。


「それが致命的なアクシデントだったらどうするつもりなんですか」


 ユミルさんは心配性だなあ! そんなんじゃ冒険やチャレンジもできないでしょ!


「魔王城を円滑に動かし、マオウ様のお仕事を妨げるものが無いように準備するのが私の仕事ですからね。その対極にあるものを楽しむ発想はまずないですよ」


 スタンスの違いってやつだね。致し方ない。

 あ、そういえば今日はディレクターの宵闇の伯爵が居ません。諸事情、もとい僕の父親の相手をしていて現場に来れないからです。臨時代役として彼の息子のバティスタ君にディレクターをやってもらってるけど、実は開始直後からずっと父親と一緒にこのブースに来てるんだよね。仕事ぶりを見ているうちに仕事内容を覚えたのか、初めての仕事とは思えないくらい有能でびっくりしたよ。もし伯爵に何かがあっても安心だね。

 そしてずっと仕事をしていても一向に仕事ぶりが向上しないADの虚ろの騎士くん、君そろそろクビ待ったなしだよ。大丈夫かな?


「マオウ様、放送中にクビ宣言はおやめください」


 宣言じゃないよ、警告だよ。でもまあもうちょっとやる気見せるか、それともやめるかそろそろハッキリしてほしいかなっていう部分はある。

 さてそれは置いておくにしても。

 前回は色々と準備しなければいけない事が多く、ラジオをお休みせざるを得なかった事をまずはリスナーの皆様にお詫び申し上げます。


「大変申し訳ありません」


 その様々な準備ってのが、まあアレですよ。

 勇者様ご一行がこの裏世界に来て、わたくしマオウを倒さんとばかりに息まいてたんで少しお灸でもすえてやろうかなーという事で、魔王城全体がひっくり返る様などったんばったん大騒ぎだったわけだけど。

 実際ラジオ放送や城での振る舞いでは余裕ある風に見せてたけど、実際は結構カツカツだったんだよね。今だから言える事なんだけどね。

 

 実際の所、今回の勇者パーティは中々手ごわかった。

 裏世界のダンジョンや遺跡は次々に攻略されるわ、空を渡る気球とかいうとんでもないアイテムを作り出すわ、そして我が魔王城の最後の砦とも言える絶望の山岳や深淵の洞窟までも踏破するとは思いもよらなかったよ。


「実際、前に来たヴァルディア王国軍を引き連れた勇者たちはわが魔王城までは来れていませんからね」


 大軍勢の運用は難しいからね。いやいや前の勇者たちはどうでもいいんだ。

 いま来た勇者たちがやばかったって話なんだよ。

 

「なにより勇者のレベルがもう98になってたのがビックリしましたね。他のメンバーはまだ70くらいだと言うのに」


 やっぱり異世界から召喚されてきた勇者だからか、成長が著しく早いんだよね。

 そりゃ勇者候補を異世界からバンバン呼び出したくなるわな。しかも高レベルになればなるほどこの世界に居る人間よりも成長しやすくなるとか、なんですかそのチートは。

 僕もそんなゲームをプレイしたかった。


「大抵のRPG、レベルが上がれば上がる程経験値が指数関数的に必要になりますからね。MMO系なら尚更」


 流石に異世界から来た勇者とはいえ、99になるにはまだまだ経験値が必要っぽいけどね。そうそう、その勇者パーティなんだけども実は今日魔王城にやって来てたんですよ。

 番組冒頭でネタバレしちゃったけど。嬉しくて。

 本当なら魔王軍の総力を挙げて潰しても良かったんだけど、ちょっと勇者と一緒にやりたい事があったからね。

 魔王城の中を空にして、僕の所にまで呼び込んで、勇者以外のパーティメンバーは弱点を突いて戦闘不能にしたりね。


「私にはよく理解できないのですが、何故メンバーを殺さなかったんですか?」


 いやいや、これから勇者と協力してやりたい事があるのにパーティメンバー殺しちゃったらダメでしょ。勇者の機嫌損ねちゃうでしょ? ユミルさんはその辺りの機微がちょーっと鈍いよね。


「……はぁ」


 無闇に殺してヘイト稼いだら今までの準備や僕が掛けた手間が台無しだからね。

 んで折角殺さずに戦闘不能に出来るならそうした方がいいでしょ。

 なにより僕は平和を愛し、争いはなるだけ避けたいマオウですので?


「それはわかりましたからそろそろ本題に行きましょうか」


 あ、そうだね。

 今日番組に特別篇と銘打ったのは特別なゲストを呼んだからというのもあるんだよ。察しのいいリスナー諸君ならもう気づいてると思うけどね。

 ではお呼びしましょう。

 我が魔王城にやってきた勇者パーティのリーダー、勇者ハッシーさんです。どうぞ!


「ど、どうも。勇者ハッシーです。このラジオには自分の愚痴っぽい手紙を投稿させていただいてました」


 パチパチパチパチ。

 いやあ前から呼びたいと思ってたんですよ! 面白い投稿をしてくれるリスナーは実に貴重ですからね。お手紙を一回頂いた時から絶対にゲストに呼びたいって決めてたからね! このためだけにラジオを一回休んで準備したまである。

 なによりもマオウの敵の勇者ってところが良い! 本来なら敵対し憎み合う存在だと言うのにのんきに手紙を送ってくるこの図太い神経が凄いよね。彼はこの番組が本当の魔王によって製作されていると全く思っていなかったようだけど。

 

「魔王になりきってる誰かがやってるんだろうと思ってました。冷静に考えてみれば、ラジオという概念を知ってるのはこの世界では僕くらいしか居ないので、そもそもおかしいわけですが」


 そう、ラジオという概念は僕も知らなかった。

 12万年前に、この勇者ハッシー君に出会うまでは。


「はい、実は僕とマオウさんはこの世界に来る前に一度会っています」


 この話は込み入ったものになるんで、あとにとっときましょうか。

 まずは勇者ハッシー君のプロフィールというか自己紹介をお願いします。


「えー、と。何を言えばいいんですかね」


 じゃあフルネームからいこうか。


「はい。名前はハシモトユウスケと言います。なんかこの世界の人らからは言いづらいのかハッシーと呼ばれる事が多いのでハッシーって呼んでください」


 出身は何処かな? 一応異世界出身てのは知ってるけども。


「出身というか、この世界の国籍は一応ヴァルディア王国って事になってますね。戸籍も一応本籍そこになってます。で、本当の出身地はこの世界とは別の世界にある地球という星の、日本という国で生まれて15歳まで育ちました。今16歳です。帰りたい」


 早速ホームシックな気持ちが漏れ出てるよハッシー君。

 

「そろそろ日本が本当に懐かしいです」


 涙を流すのはまだ早い! 番組が終わるまで取っといて!

 で、その日本という国とか君が元居た世界ってのは一体どんな世界なのか、皆気にならないかな? 僕は非常に気になる。一度行った事はあるけど詳しくは知らないからね。


「私も気になりますね。全く未知の世界の文化や風俗は一体どんなものなんでしょうか。好奇心がうずうずして猫も殺しそうです」


 物騒だなユミルさん。猫は殺すのではなく愛でるものだよ。


「私は猫よりも犬の方が好きなので。猫も勿論愛すべき存在ですが」


 そっかー。僕とは逆だね。

 で、勇者君のいた世界は一体どんな世界なんだい?


「はい。この世界とは全く違って、まず魔術や奇蹟と言った物は存在しません。そういうものを吹聴する輩は大抵詐欺師か、或いは精神を病んだ異常者か宗教の教祖くらいのものです」


 マジで? 超びっくりなんだけど。

 じゃあ火おこしとか、氷作ったりとかどうしてるの?


「魔術が無い代わりにこちらには技術があります。つまり機械文明というものが発達しているんです。それによって火を点けたり、あるいは氷を作ったり、更には大きな建物を作ったりしてますね。人間の知識、知恵、叡智による素晴らしい積み重ねです」


 その技術や機械とやらによって、なんだかスゴイ超高層ビル? なんてものも建ってるのを見てマオウはぶったまげたよ。ヘンテコな鉄の塊が高速で移動してたりとか、あとは何だろう、自動で飲み物を売ってくれる機械があったりとかもうこっちの世界では見たことも無いものが一杯あって、なんとか再現できないかなって暫くうんうん唸ってたくらいだからね。

 僕でもなんとか作れそうかなって思ったのがラジオだったわけなんだけども。流石にビルとか、動く鉄の塊は仕組みや素材が未知過ぎて作れなかった。いくら神に近い僕でもわからない物は作り様がないからね。

 

「あの時の魔王さんは色んなモノを見ては驚くので、ついボクもはしゃいで外に連れ出したりなんかしちゃいましたね」


 いやああの世界はホント凄かった。昨日の事のように鮮明に思い出せるよ。


「でもこっちの世界もボクにとっては度肝抜かれましたよ。まさか僕たちが空想したファンタジー世界みたいなものが本当にあったなんて思わなかったです。妖精がふわふわ飛んでたり、エルフやドワーフみたいな亜人が居たり、何より魔術や奇蹟が使えるだなんて自分がまるで超人になったかのような錯覚すら覚えますよ。今のボクは実際人を超えてるかもしれませんが」


 こっちでは当たり前のことなんだけどね。

 

「来た当初はマジで興奮しましたね。ボクも魔術や奇蹟使う素養があると聞いて凄くワクワクしましたし、実際初級の魔術とはいえ照らす灯りを使ってみた時はもうボクも本当のファンタジー世界に来たんだなっていう実感が湧きましたよ」


 ハッシー君はいまどんな魔術、奇蹟が使えるのかな?


「えーと、僧侶と魔術師の中級くらいのものならまず大抵使えます。流石に核爆滅撃ニュークリアブラスト一度ワンタイムきりの生還リザレクション女神ディバイン祝福ブレスといった高等なものは無理ですが。それとボクだけが使える光属性の魔術ですか。ライトニードル雷撃ライトニングボルト閃光撃弾フラッシュボム光属性付与エンチャント:ライト、えーと後はなんだったかな。ああそうそう、なんだか神の禁術というものも授かりましたね。得体の知れない、生きるのを止めた大魔導士とかなんとかから」


 それは一体どんな魔術なのかな?


「大魔導士の名前がそのまま魔術名になってますね。イェラザゼルとか言う魔術です。詳しい事はわからないのですが、天から降り注ぐ極光によって全てを滅する魔術らしいです。というのも、使った事がないもので」


 御大層なものだけど何故今まで使った事がないんだい?


「まず僕のMPを全て使ってしまう事と、効果範囲がわからないからですかね。全てを滅するとか言われた日には怖くて使いたくないですよ。この世界すら滅ぼす魔術かもしれないかと思うと、使わずに封印しておいた方がいいでしょう」


 全くその通りだ。僕も実は禁術と呼ばれるものはいくつも持っているけど、この魔王人生において使った事はまだないんだよね。試しに使おうとして見たら父さんに止められたんだよ。それを使うのは地上を本格的に滅ぼして焦土にしたい時だけだ、とか何とか言われて。混沌カオス旋風ストームとか言う術がその一例なんだけども。


「曰く、その禁術は台風規模の火炎旋風を巻き起こすらしいです。その旋風が通った跡には雑草すら残らないとかなんとか」


「そんな危険な魔術があるんですね……」


 そうなんだよね。全く、大魔導士やら神やらは碌な術を考えないもんだよ。

 あ、そうだ。折角ハッシー君の使える魔術と奇蹟紹介したんだし、ついでにレベルとステータスも公開しちゃおっか。


「いいですよ」


「はい、ではこちらが勇者ハッシー君のステータスとなります」


----------


 レベル:98

 HP:1398

 MP:1024


 生命力:56

 精神力:43

 持久力:37

 体力:32+10

 筋力:40

 技量:53

 魔力:41+30

 信仰:36

 運:10+80


【固有スキル】

 経験値増加:通常よりも経験値を貰いやすい。レベルが上がる程伸び率も良くなる。

 神の加護:秩序神オーデムと地母神カルケドによる加護を受けており、神の導きによって運の巡り合わせが良くなる。

 大魔導士の導き:大魔導士イェラザゼルの力を受け継ぎ、魔力が増加。

 穏やかな風:勇者がその場にいる事により、場を落ち着かせ争いを収めさせる雰囲気をもたらす。


【特技】

 鼓舞:勇者が前に立ち、剣を構える事でパーティ全員の士気が高まり攻撃力/防御力が1.2倍増加する。

 雷の槍:手を天にかざして念じる事により雷の槍をその手に生じさせる。投げつけたり、あるいはそのまま武器として使用可能。

 光属性付与:光の力を武器または防具に付与する。

 光の刃:光の力を付与した剣を振る事で光の刃を飛ばす事が出来る。


 ----------

 

 これはすごい。かなり充実したステータスだね。

 しかも固有スキルと特技も中々良いものを持っているし種類も多い。普通の人々なら固有スキルなんて1つ持っていればいい方だからね。中には全く何もないどころか、マイナス効果のスキルを持ってる人もいるし。

 

「しかし勇者さんは運が低いですね。固有スキルで補っているみたいですが」


「運が悪いのは僕の特性みたいなものでしょうがないんですよね。こっちの世界に来るきっかけになったのも蓋が開いたマンホールに落ちちゃったからなんですが」


 それは運が悪いと言うよりも君の前方不注意が原因なのではないか……?

 

「というか、エンチャントは魔術じゃなくて僕の場合特技だったのか。知らなかった」


 そうなのか。まあ光属性扱えるのって本当にごくわずかな人しか居ないからね。

 闇属性も同じなんだけど。どちらも素養が本当にモノを言う属性。扱いづらいね。

 

「この他にも神聖属性や不死属性や毒属性なんてのもあります」


 あ、ちなみにステータスの事について簡単にお話しすると、生命力はHPを伸ばしてくれる奴で、精神力は魔術や奇蹟、あるいは特技を使う時に必要になるMPを伸ばしてくれるよ。戦士だからといって精神力を全く伸ばさないと特技があんまり使えないという事態にもなるから少しは伸ばそうね。

 

「持久力はスタミナです。武器を振ったり、魔術・奇蹟を使う時に必要となります。体力は装備できる重量を増やしたり、物理防御力を増加させます。筋力は重い武器や防具を不足なく扱う為に必要なものです。技量は曲刀やカタナと言った、繊細な技術を必要とする武器を扱うのに必要です。また術師が詠唱速度を短縮するのもこのステータスが必要となります。重視するかしないかはその術師次第ですが」


 そして魔力・信仰だけどこれはそれぞれ魔術と奇蹟を扱う為のステだね。このステータスが低いと高レベルの術や奇蹟を使いこなす事が出来ない。

 割り切ってここまでの魔術だけを覚えて、あとは別のステータスを伸ばそう、って考える人もいるみたいだけど。

 最後に運。これはそのままで高ければ高いほど運が良くなるよ。

 他のステとは違って、後から伸ばす事はほぼ不可能なステだよ。生まれつきの数値でやっていくしかないんだ。

 まあ、普通の人生を歩む程度なら運の数値はあまり考慮する必要はないんだけど、冒険者の場合は運が命を左右する場面もあるから、アクセサリや特別なアイテムで上げられるなら上げた方がいいかもね。


「具体例として、運命の木の実や幸せウサギの耳飾りなどがあります」


 たまに変わり者がいて、運だけ妙に高い奴も居たりするんだ。そういう奴は普段は役に立たない事が多いんだけど、ここ一番で妙にスゴイ事をやらかしたりもするから、そういう奴をパーティに入れてるのもあったりするね。


「戦闘中に転んで武器を手放したと思ったら、ボスの弱点に突き刺さって即死とかありましたからね」


 だから運というのも案外馬鹿にできないんだ。

 勇者君は運が低いけど神の加護によってそれをカバーしている。今までの冒険が奇蹟的に上手くいっているのもそのおかげだろうね。


「はあ、なんだかそう言われてみれば運がいい事ってのは結構あったような気もしなくもないですね」


 だろう?


 さて、勇者ハッシーの簡単な紹介はこの辺にして、次のコーナーに行こうか。

 その前に一曲行きましょう。


 アーティストはブラッディマーダーで、曲名は「血塗られた世界」です。どうぞ。

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