新月には 願い事をしましょう。

 そう思っていると、いきなり 妹のチドリが、部屋に飛び込んで来た。

「お姉ちゃん!婚約破棄されたって ホント?!」

『えぇ そうみたい…』

「何て ヒドい奴なの!!」

『けど どういう人なのかも知らないし…』

「だったら 向こうも、お姉ちゃんの事も知らないって事でしょ!なのに 一方的に破棄なんて、あり得ない!こんなに 素敵なお姉ちゃんなのにぃ 信じらんない!一発引っ叩いてやりたいくらいだわ!」

『けど、もう下界に送られてしまったそうよ』

「そうなの?でも それは当然だわ」

 妹は 当の私よりもプンプンに怒っている、そんな妹をよそに 私は、昔を偲んで お顔くらいは見ておきたかったなぁ~と思って

『だけど 本当に、ヒドい方なのかしら…』

「そうよ! そうに決まってる!」

『そうかしらねぇ… …』

「えっ? まさか お姉ちゃん??」

『いえ…何だか、ずっとあの人の所へ行くもんだと思っていたから、そんなすぐには 気持ちが切り替わらないと言うか、実感が無いのよ』

「… お姉ちゃん …」



 それからは ぼんやりと過ごしました。1週間程経った ある日、チドリ が部屋へやって来て

「お姉ちゃん?王子の事 まだ忘れられない?」

と 神妙な顔で尋ねてきた。

『忘れられないと言うか、自分がどう思ってたいたかも 良くわからないから、忘れるも何も…』

「王子に会ってみたい?」

『会えるなら ちゃんと会って、どうしてなのか 理由を聞いてはみたいわね、だけど そんなの今更言ったってねぇい…』

「会えるって言ったら?」

『えっ?!』

妹は 後ろ手に隠していた古い地図を出して

「これはね、ちっちゃい頃 書庫で遊んでいる時に見つけた本に付いてた地図なの。題名は【下界への行き方】って書いてあって、その時は 誰が下界なんか! って思ったんだけど。お姉ちゃんが 悲しそうだったから、改めて 探してみたら、1週間もかかっちゃたw」


 地図に依ると 魔界の外れから延びるロード・エレクチオンの突き当りに、魔法使いのキャノンさんの家があり。そこから 下界への裏通路が繋がっているとの事。それが 唯一、魔王に知られずに 下界へ降りれる方法だと言う事だ。

 魔王の許可無く 下界へ行く事も出来なければ、戻る事も許されない この世界。

 それを聞いて 半信半疑だったけれど、ひょっとすると 本当なのかもしれないと思い。両親へは 妹が上手く言っておいてくれると言うので、一人で 地図を持って尋ねてみる事にした。


 新月の暗闇に こっそり、裏口から出ようとすると 

「マーレッ」(小声)

と 声を掛けられた。振り向くと、兄嫁のヒーノお姉さまでした。

「マーレ行くのね、チドリから聞いたわ。魔界の果ては もの凄く遠いのよ? あなた わかってるの?」

『えぇ かなりの距離があるとは思っているんですけど……』

「女の子一人で行くには 危険な所が沢山あるのよ? 戻って来れないかもしれない、それでも?」

『何もしないで居るより 自分が納得したいから』

「そぉ……」

力無く 肩を落とす姿を見て、少し 気持ちが揺らぎました。それでも

『お姉さま ごめんなさい』

と 踵を返そうとすると

「じゃぁ 城の外へ出たら、まず リサイクルショップ〖さがら〗へ行きなさい、きっと役に立つ物を授けてくれるはずよ」

『わかりました お姉さま、ありがとう』

お姉さまは 両手で、私の 手を力強く握って

「気を付けてね」

私も 応える様に

『はい!』


 こうして 私は、城を出ました。







《魔界の外れまでたどり着く 2ヶ月間の冒険の旅の話は、別の話で 綴らせてもらうかもしれません。ぃや…書かないかも、、、》





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