第21話永の都から……



 乙女が永の都から地獄を覗いたとき。

 彼女は、悲しみのあまり石像になり、血の涙を流した。


 地獄ではクラインたちがピンチに陥っている。


 乙女はいく筋もの涙を流した、暖かく。

 その涙が地獄まで届いたろうか?

 それはわからない……。


 地獄の一丁目では、雨が降ったと言って、騒ぎになっていた。今までにないことだったからだ。

 霧がたちこめようが、その影にまぎれて住民がいなくなろうが、特に気にもとめない連中だ。

 むしろ白い闇に乗じて何事かせんと企むような奴らである。

 しかし、そのとき。

 暖かな女神の祝福に、地獄の住人は涙した。

 自分以外の誰かが、救われたことを確信し、涙を流す。

 うれしかったからか、悔しかったからか。

 こんな地獄にも救いの手が差し伸べられることを知って、むせび泣く姿に、邪悪は寄りつかず、清められていった。

(クライン……)

 乙女の像は、今も泣いている。

 誰も彼もが、泣いている……。

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