第21話永の都から……
乙女が永の都から地獄を覗いたとき。
彼女は、悲しみのあまり石像になり、血の涙を流した。
地獄ではクラインたちがピンチに陥っている。
乙女はいく筋もの涙を流した、暖かく。
その涙が地獄まで届いたろうか?
それはわからない……。
地獄の一丁目では、雨が降ったと言って、騒ぎになっていた。今までにないことだったからだ。
霧がたちこめようが、その影にまぎれて住民がいなくなろうが、特に気にもとめない連中だ。
むしろ白い闇に乗じて何事かせんと企むような奴らである。
しかし、そのとき。
暖かな女神の祝福に、地獄の住人は涙した。
自分以外の誰かが、救われたことを確信し、涙を流す。
うれしかったからか、悔しかったからか。
こんな地獄にも救いの手が差し伸べられることを知って、むせび泣く姿に、邪悪は寄りつかず、清められていった。
(クライン……)
乙女の像は、今も泣いている。
誰も彼もが、泣いている……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます