第16話霧の大橋(その三)
管理棟は大橋の頂点にある。
クラインはバルダーナにそこへ登れというのだ。
「足がないったって、宙に浮けるわけじゃないんだぜ? 人使いの荒いやつ」
しかも疑わしい目玉はあと三つもある。
「ウーン……」
支柱の一つから降りてきたバルダーナにクラインは言う。
「今更だが、この霧で確かめられたことが一つある」
「それは?」
「この目ん玉が向いてる方向が悪霊の目印になっているということさ。とりあえずこの柱は違うようだ。もう一方におまえが登るとき、できる限り目玉の向きを確認してほしい」
「残るは二つか……」
クラインが、悪霊を退けながら言う。
「頼んだぞ」
「しかしほんとーに、人使いが荒いよなー……」
× × ×
「あれっ?」
管理棟の上で、バルダーナがすっとんきょうな声を出したのを、クラインは聞き逃さずに問い返す。
「どうした?」
「こ、この目玉……」
そのとき黒い影が、クラインの背中に刃を突き立てようと、大きく膨れ上がった。
「あー!」
そちらへ気をとられたバルダーナは、のけぞり、手は宙をかく。
思わず目をきつく閉じるバルダーナだったが、案外すぐそばでぐしゃりとした物音が聞こえた。
「え?」
「油断するな」
クラインが投げた二本の
「あ、あんたこそ……」
悪態をつきながら、ほっとした表情のバルダーナ。
気を取り直して支柱にはりつく。
「わかったぞ」
二つの管理棟を昇り降りしてきてバルダーナは言う。
「一方は霧の中を示してた。ぼうっとだけど。もう一方はあんたの方をむいてた」
「そうか、オレもそんな気はしていた。おそらくその光めがけて悪霊が来てるんだ。ご苦労だった」
「ふん、オレはあんたの部下じゃない」
バルダーナは言って、クラインの背に上った。
「へへん、もちつもたれつってやつさ」
二人は迷わず、霧の中へと進んでゆく。
後には破壊された偽の管理棟が三つ、道標のように佇んでいた。
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