第9話 香港の夜景

 夜遊びは不完全燃焼に終わったがまだ一日残っている。気分を切り替えるしかない。香港も大都会だ。異国情緒に溢れているというかヨーロッパのような雰囲気の観光地が多く目を楽しませてくれる。


 ネイザンロード、男人街、女人街、聖ポール天主堂跡などの観光地も面白かったが特に良かったのはヴィクトリアピークだ。昼にも山頂に登った後に、夜にもタクシーで向かいピークトラムで山頂に登り百万ドルの夜景を満喫した。


 手元にその時撮った写真が残っているが、誰もがいい笑顔をしている。圧倒的な人工的な建造物とその細かい光の夜景に心を奪われた。


 帰りのタクシーでは運転手にボッタクリにあいそうになり、ホテルのコンシェルジュに助けを求めて和解した。日本人とわかると悪びれもせずにやってしまう文化があるらしい。皆さんも香港に行った時は気をつけてくださいね。


 そういえばフェリーに乗った時に乗務員の現地の若い女の子にお手紙を頂いた。内容は「貴方の事が気に入りました、愛してます」みたいなことが英語で書かれていた。


「凄いじゃん! お前のことチラチラ見て何か書いてるなとは思ってたけど、まさかラブレターとはな! 」


 同期は不審な行動をしているガイドをチェックしていたらしく私も驚いた。人生で初めて頂いたラブレターだった。メールアドレスも書いてある。ホテルに戻って試しにメールしてみたが宛先不明になり戻ってきた。間違えたのか、からかったのか、美人局だったのかは分からないが、マカオの夜の鬱屈した思いが晴れた気がした。この旅一番の思い出だ。


 最終日は五つ星の香港ペニンシュラホテルに宿泊した。コの字形の玄関で高くそびえる灰色の建物は重厚感に溢れている。内装もきらびやかで家具にもこだわり、一見して上品と分かる方々が宿泊していた。


 部屋はあいにく今まで泊まった部屋では一番狭かったが、アメニティグッズはブルガリで統一され、大理石の床が贅沢に使用されていて小市民の私は逆に恐縮してしまう。


「このシャワーどうやって使うの? 」


 初見のシャワー構造に四苦八苦したものだ。部屋が豪華すぎて逆に落ち着かない。


 最後の晩餐をホテルで楽しんだ後、同期で抜け出して屋台の麺を食べた。パクチーの香りが効きすぎてあまり好みとは言えなかったが、現地の味を堪能できて満足だった。最後の夜を名残惜しく遠回りして散歩しホテルに戻る、元気な者は男人街に繰り出していくが私にはそのパワーは残っていなかった。


 翌朝は空港の免税店でお土産を買い漁り私たちは日本に戻った。思い出深い初めての海外旅行になって良かった。また明日からは仕事だ。気合を入れ直さなければ。

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