接続

[止血完了]


[神経結合開始]


[血液不足、追加五百]


[五百了解、順次供給開始]


[脳接続七割完了、意識テスト開始]


[1、2、3、反応鈍化、追加刺激、神経へ電流を]


[不要だ。脳の活性化が見える]


 ……なんだ、これは。


 頭の中に声、ではなくて意味が浮かび上がってくる。


 例えようのない感覚、夢の中、でもない。


[見当識障害、脳の再確認を]


[不要だ。現状把握は正常の脳でも困難だ]


 待て。これは俺の考えに反応してるのか


[反応を確認]


[あなたは、自分が何者か理解できるか? 現状どうなったか説明できるか?]


 何者か、現状は、儀式とかいう殺し合いの最後、あいつを落として、そうだどうなった? あいつは死んだのか?


[現在、全ての儀式は完了し、賢者が選出された。その事後処理としてあなたの再生を行なっているところだ」


 再生って、何を言っている? そもそも儀式とはなんだ?


[中央へ、コードアクセス確認]


[承認、開示せよ]


[儀式とは、我々とあなたたちが相互理解するため、あなたたちの代表を決めるために行われるテストである]


[我々には個の概念が無く、全てが統一された意識の中で思考している]


[なので思考パターンが一律になりやすい。これは一度間違った方向へ進んでしまった場合、軌道修正が困難となる]


[複数の思考パターンを得るには同等以上の知性を持つものとのコミュニケーションが必要と判断、あなたたちからも有益と判断され、契約がなされた]


[しかし我々はあなたたちの全てを必要としているわけではない。不要なもの。間違ったもの、狂ったものはむしろ悪疫である]


[なのであなたたち側の情報の質を保証するために行われるテストが、儀式である]


[我々の目的は生き残ること、なので儀式も生き残れるあなたたちを見つけるように設計されてきた]


[そして選ばれた賢者に次世代コアを接続し、共に行動する事で学習し、更なる能力強化を図る。その手助けを我々は全面的に行う]


[これは我々とあなたたちとの間で二百八年前より交わされた契約である]


 …………随分とスケールの大きなことを、俄かには信じられない。


 だが真実だとすれば、あれだけ大掛かりな会場も、開催側発表で六百六十六人の参加者となれば、ありえない話でもない。


 だが、そこまでして、俺から何を学びたいんだ?


 ❗️


 ッッッッッッッッ!!!


 激痛、痛み、ありったけの、これまでに感じた何よりも強烈な、全身駆け巡った、一瞬の激痛だった。


 しかも、そこには激痛しかなかった。


 熱いとか冷たいとか、刃の感触とか受けた衝撃とか、付随する感覚の一切ない、それだけを切り出したような、純粋な痛み、だからなんで痛んだのか理解できず、衝撃よりも恐怖が優った。


[過ちは正す]


[過ちは正す]


[過ちは正す]


[あなたは賢者ではない]


[あなたは儀式の最後の死亡者である]


[あなたは賢者の命により再生しているに過ぎない]


[賢者は幼体である。本人もまだ学ぶ時期、賢者の賢者が必要と判断された]


[そのための再生、これは賢者よりの最初の指示である]


[だが、賢者の賢者は誰であっても構わない]


[賢者に、そして我々に害をなすと判断した場合、排除する]


[拒否権はない]


 待て。幼体とは誰だ? 誰が生き残った?


 そもそもお前らは、何者だ?


[神経結合完了]


[脳接続完了]


[心拍数安定、全再生工程完了]


[これより覚醒させる]


 おい待て! 質問に答えろ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る