職に貴賤はないというけれど、あなたはこの仕事どう思いますか?

本作はある一人のゲーマーの話だ。
ひきこもりだった彼は、ある日得意とするFPSの腕前を活かしたゲームの仕事を見つけてくる。
その内容は彼がログインしたゲームの中でテディベアを撃ち殺していくだけ。
たったそれだけで、彼の口座にかなりの金額が振り込まれるというものだ。

しかし、彼は気付いていなかったが、実は彼が本当に殺していたのは…………。

と、普通ならそういう展開になりそうなのだが、本作はそういった話運びはしない。

主人公は自分が殺している物の正体を最初から把握していて、それを労働と割り切っているのだ。
「神経コン」や「ポリアンナ」といった近未来技術のサポートを受けた彼がテディベアを殺していく様子は鬼気迫るといったものではない。むしろ、普段の生活と変わらぬ落ち着いた様子である。

その淡々とした語り口に、読者も「近い将来こんな世界が当たり前になってもおかしくない」と作中で書かれている様々な歪みをスルーしてしまいそうになる。

設定面だけではなく、異常な状況を日常の延長線上であるかのように見せかける筆力も含めて、実に面白いSFだ。

(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=柿崎 憲)

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