第11話 アイドルは誰のものか

 私の中学生の時代は、携帯電話が主流だった。アイフォーンとアンドロイドが出た頃だったと思う。今ほど使いみちは少なく、電話をするとか、メールの送受信とか、写メを撮るぐらいだったと思う。NGYのオーディションに合格したときから使い始めたので、仕事の連絡用ぐらいに使う程度だ。今時の中学生は教室に持ち込めるのか、”授業中だろう”と思うような中途半端な時刻にLINEのメッセージが入ってくる。”先生から小説の原稿をゲットしました。これから、宅急便で◯川出版に送ります。”とか、”学校前のコンビニで勇菜さんが出る映画のポスターもらいました。教室に貼ります。”などのどうでもいい連絡まで入ってくる。松野先生が緩い担任なのか、なめられているとしか思えない。それでも、松野先生の授業風景とか、部活の様子とかの動画を送ってくれるかわいい生徒たちだ。私のプライベートがSNSに拡散することもなく、彼女たちとやり取りできるのは、松野先生が生徒たちに人気があるのか、芸能人である私に興味があって応援をしてくれているからなのだろう。ついつい私もメッセージの返信をしてしまう。クイズ番組の収録があったとか、CMの撮影が始まったことなどスケージュール的なことからドラマの撮影の様子まで教えてしまうようになった。私の卒業した中学校にはなかった気がするが、”生活ノート”なるものがあって、1ページが1日分で家庭学習の記録から日記、翌日の時間割を生徒全員が書くらしい。LINEでやりとりしてくれる女子3人は、さり気なく日記に私のことを書いてくれているらしい。

 先生の携帯電話の番号を調べて教えてくれたのだけど、私はまだ受話器のアイコンをタップするほど勇気がない。だけど、突然現れた不思議な応援団が、私と先生を繋いでくれている気がする。修学旅行まであと1週間だ。


 繋がりといえばうんざりする繋がりもある。NGY48の一員としてデビューしてまもなくのことだった。私は名古屋から、関西の子たちと東京の劇場に合流して

 

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二人の軌跡 近藤 虎徹 @yamakote2

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