第3話

ー『始まりの街』ー


「さて、装備を整えるには…っとごめんなさい」


 俺はぶつかってしまった男性プレイヤーに軽く頭を下げて謝罪する。やはりこのゲームは人気なのだろう、その証拠にこんなに人が多いのである。あちこちでパーティー勧誘の声が響き、とても活気がある。

 そんな人々の間を抜けて俺は目的の場所へ着く。看板を見ると『エーテルの武具店』となぜか漢字で書いてある。まあ、日本のゲームなので当たり前ではあるのだが。

 ドアを開けて店内に入るとプレイヤーの姿はなく、店員であろう少女のNPCしかいなかった。


「いらっしゃいませ!エーテル武具店へようこそ!」

「えっと、武器と防具が欲しいんだ。予算は3000Lくらいで、武器はショートソードで防具は軽装がいいな」

「3000Lで防具もつけるとなると青銅、銅、鉄ってところで、防具は鉄ですね」

「それじゃあ鉄の装備でよろしく」

「はい!それでは少しお待ちください」


 そう言うと少女は奥へと行ったがすぐに少女の腰ほどまである木箱を抱えて持ってきた。


「えっと、これが装備ですね」

「なるほど、それじゃあこれが代金な」

「はい!毎度ありがとうございました!今後ともご贔屓ひいきに!」


 そう言ってにっこりと笑って挨拶をするNPCに手を振って俺は店を出た。それにしても本当にすごいAIだな、まるで本物の人間を相手にしてるみたいだった。

 そして俺はステータス画面から装備を変更すると時間を見る。時間は14:00となっており、そろそろログアウトしなければならない時間だった。


「えーと、【ログアウト】」


 しかし何も起きなかった!

 おかしい、ログアウトの方法は間違えていないはずだ。どうなってるんだ?

 仕方がないのでメニューを開きログアウトボタンを押す。しかし、ログアウトができない。


「おいおい、バグかよ…勘弁してくれよ」


 俺がため息を吐いた瞬間パリーン、というガラスが割れたような音がして目の前に緑色のローブ姿の人物が現れる。そして、その人物が俺に手を向けると俺の体は硬直してしまう。その直後、足元が光り輝き目を閉じてしまう。

 目を開けるとそこはゲーム開始地点である教会の前だった。てか、他にどこかまともなところはなかったのか。人口密度高すぎんだろ。


「おい!あそこに人がいるぞ!」


 俺が人の多さにイライラしていると男性プレイヤーが教会の方を指差して言った。そちらを見てみると、間違いなく世界観を間違えたような白衣を着たザ・科学者といった風貌ふうぼうの男が2人いた。

 しかし片方は縛られており何かを必死に叫んでいた。

 俺たちが眺めていると、縛られていないメガネの神経質そうな男が叫んだ。


「聞け!プレイヤー諸君!君たちはログアウトができないと嘆いているだろう。今、この時よりCWOはデスゲームになった!」


 デスゲーム…?え?まって、ラノベとかのあれ?

 俺と同じように周囲のプレイヤーたちも事態を飲み込めていないようで頭にハテナマークを浮かべている。


「え?ああ、理解できないんだ。ぷーくすくすくす」


 メガネの男は俺たちを見るとそう言って笑う。

 あれ?なんだろう、すごくムカつく。


「まあまあ、君たちは僕みたいな天才とは違ってバカだからしかたな__ぶべらっ!!」


 よほどムカついたのだろう、1人の男性プレイヤーが土魔法の石の塊を飛ばすと、ドヤ顔で演説を行っていたメガネに直撃したのである。

 なるほど、魔法が効くのか…それなら!


「【ウインドカッター】」

「【ファイアボール】!」

「【アクアスラッシュ】!」

「【ストーンバレット】!」

「【ルナ・レイ】!」

「【シャドウボール】」


 俺のウインドカッターと同時に周りにいたプレイヤー達も攻撃を始める。魔法を取ってないプレイヤー達は弓矢などの遠距離武器で攻撃を行っている。

 しかし、それらの攻撃はメガネに当たることはなかった。なぜか、メガネの前で全て弾かれたのである。

 そんな俺たちを見てメガネは爆笑して言った。


「ぶははははっ!ねえ!ねえ!どんな気持ち?撃った魔法が届かずに嘲笑あざわらわれるのってどんな気持ち?」


 ここで俺たちプレイヤーの心は一つになった「こいつうぜえ…」と。

 メガネはひとしきり笑うと、スッとメガネをかけ直して言った。


「それじゃ、僕はログアウトしますね〜。あ、その前に室長さようなら」


 そう言うとメガネは縛られている男性の首目掛けて腕を振り下ろす。それだけで男性の首が飛び血液が飛び散る。しかし、数秒後には男性の姿は粒子になって消えていった。


「それじゃ、みんなファイト☆」


 メガネはそう言い残すと、その場から消え去った。後に残ったのはデスゲームへの不安感と、メガネへの殺意だった。


 こうして俺のデスゲーム生活が始まった。


◆◆◆◆◆◆◆


 さて、どうしたもんかな…


「きやっ!」

「おっと」


 俺がそんなことを考えていると女性プレイヤーとぶつかってしまう。


「すいません、大丈夫ですか?」

「いてて…あ、だ、だいじょうぶでしゅ!」


 あ、噛んだ。

 そう思うと彼女は噛んだことが恥ずかしかったのか顔を赤くしている。そうだな、こういう時は何か話しかけた方がいいだろう。

 その場をごまかすために俺は自己紹介をすることにした。


「なんかすいません。あ、俺シュウって言います」

「シュウさん、ですか。私はアンリって言います。よろしくお願いします」


 すると彼女、アンリさんは少し落ち着いたようで自己紹介をしてくれた。

 何を言おうかと迷って彼女をよく見てみる、茶色の肩まで伸ばした髪に黒い目そして青のローブにを羽織った美少女さんである。ドキドキしてきた。


「…」

「…」


 うーむ、会話が途切れてしまったぞ。可愛いですね、とか言っとくか?


「えっと__」

「あの!」


 俺が話しかけようとするとアンリさんが先制をとって話しかけてくる。おおう、びっくりした。


「はいはい、なんでしょう」

「私とパーティーを組みませんか?」


 …ん?ちょっと待て、お?どういうことだ?えっと、パーティーを組む?え?なんで?


「だめ…ですか?」


 俺がなぜなのかわからず首を傾げているとアンリさんは悲しそうな目で尋ねてくる。


「いや、別にダメではないんだけどね?この流れで__」

「それじゃあ決定ですね!」

「話聞こうぜ!?」


 あー、ダメだこの子話聞かないタイプだ。

 俺がそんな失礼なことを考えていると、アンリさんは恥ずかしそうにこう言った。


「実は私友達がいないんです」

「…お、おう。そうか」


 いきなりの友達いない宣言とかどう受け止めろと?なに?俺が友達になってやるよとか言えばいいの?馬鹿じゃないの?

 俺が脳内で1人ツッコミを繰り返している間もアンリさんの話は続く。


「だから、その…パーティーを組んで欲しくて…本当になにもいらないんです!私がんばりますし!雑用でもなんでもこなしますから、連れて行ってください!」


 え〜、なにこの子必死なんだけど!てか、思考回路がダメ男に貢ぐ女じゃん!この子の将来が心配だよ!

 そんな風にアンリさんの将来を心配しているとアンリさんが更に近づいてくる。


「お願いです!連れて行ってください!この通りです!」

「わかった!わかったから土下座はやめろ!」


 土下座をしそうになるアンリさんを止めパーティーを組むことにする。人前で土下座されるとか恥ずかしすぎるわ!


「本当ですか!?後で気が変わったりしませんよね!?」

「わ、わかってるって」

「本当ですね!?現地集合とか言っていつまでも来ないなんてことしませんね!?」

「しねーよ!人をなんだと思ってんだ!そして、例えがリアルすぎるんだよ!やられたことあるのかよ!」

「…ええ、ありますとも…!」

「そ、そうか。なんかごめん…」


 アンリさんの思わぬ古傷を抉ってしまったようだ。

 可哀想なのでさっさとパーティー申請を送る。そういえばアンリさんの職業ってどんなのだろう?


「なあ、アンリさん。職業ってどんなかんじ?」

「えっと、私はメインジョブが【ウィザード】サブジョブが【魔導士】です。シュウさんは?」

「俺はメインが【錬金術士】サブが【盗賊】だ」

「なるほど、見事に後衛よりですね。バランス悪いです」


 アンリさんの言う通り確かにバランスが悪い。まあ、大丈夫だろう。

 その時「ぐ〜」とどこからかお腹が鳴る音が聞こえる。その音の主を探すと__


「すいません…あの、私です。お腹すきました…」


 仕方がないので俺たちは近くのレストランへと足を運ぶのであった。


◆◆◆◆◆◆◆


「ほひひひほひひひ!ひゅーふぁんふぉふぁふぇふぁふょーふょ!」

「汚い汚い、口閉じろ。てか、なに言ってるかわかんねーよ」


 そう言うとアンリさんは口を閉じてモグモグとしばらく噛んだ後飲み込む。


「いやー!シュウさん流石です!奢ってくれるなんて!よっ!男前!」

「褒めてもなんもでねえよ。てか、金使いすぎだろ…」

「仕方ありません、お金がかかるんです!」


 なんとレストランに入ってわかった驚愕の事実だが彼女の所持金は1桁台だった。実際に確認したのだから間違いがない。

 なぜそんなにお金がないのかというと全てMPポーションと装備につぎ込んだそうだ。

 ちなみに彼女のステータスはこうだ。


◇◇◇◇◇◇

名前:アンリ

性別:女

レベル:6

職業:メインジョブ【ウィザードLv.3】

  サブジョブ 【魔導士Lv.2】


HP:20

MP:320(+50)

STR:10(+8)

DEF:18(+12)

INT:65(+80)

MEN:95

VIT:10

SPD:30


〈技能〉

固有技能:【爆発系魔術Lv.4】


通常技能:【魔術の真髄しんずいLv.3】【術式強化Lv.2】【魔力増加[大]】【結界術Lv.1】【付与術エンチャントLv.1】【魔力回復速度上昇[小]】【無属性魔法Lv.1】【土魔法Lv.1】【火魔法Lv.1】【魔術の心得Lv.2】


〈装備〉

武器 :銀の杖

頭  :魔導士の帽子(青)

防具 :魔導士のローブ(青)

   :魔導士のズボン(短)

靴  :魔導士の靴

装飾品:魔術の指輪

   :魔術のネックレス


【所持金:8L】


◇◇◇◇◇◇


 とまあ、このように所持金は絶望的だが攻撃はおそらく期待できるのだろう。

 そうこうしている内にアンリさんは食事を終えたようで「ごちそうさまでした」と手を合わせている。


「それじゃあ、アンリさん行こうか」

「アンリでいいですよ。ところでどこ行くのですか?」

「ああ、アンリの強さを見たくてね」


 そう言って俺たちは街の外へと向かった。


◆◆◆◆◆◆


ー『ミノー平原』ー


 ここに出現するモブはオーク、オーガ、そしてフィールドボスのミノタウルルスである。どれもこれも脳筋で倒しやすかったりする。

 そして、そんな俺たちの目の前には__


「ガァアアアアア!」

「ブヒィイイイ!」


 オークとオーガがいた。2体ともなかなかの大きさで大体2mくらいはあるんじゃないだろうか。

 オーガは筋骨隆々きんこつりゅうりゅうの鬼といった感じで、とても強そうである。

 オークは全体的に脂がのっていて、腹をたぷんたぷんと揺らしながら動いている。近接戦はしたくない。

 そんな化物の前に立つのは全身を青系の装備で固めた美少女、我らがアンリである。

 アンリはオークとオーガを見ると一言。


「汚い死ね【プロージョン】!」


 たったそれだけでオークとオーガは爆発四散し、光の粒子となって消える。

 え、なに爆発系魔術ってこんなに強いの?まだレベル4なのだが?

 俺が震え上がっているとアンリが近づいてきて笑顔でこう言った。


「どうですか?私、役に立つでしょ!?」

「お、おおおおう!す、すごいな!」

「なんで震えてるんですか?」

「武者震いだよ!バカ!」


 言えない、ビビってましたなんて言えるわけがない。

 そんな俺の態度を別に怪しまずにアンリは笑いながら続ける。


「ところでシュウくんのスキルってどんなんですか?」

「俺のスキルは…【法則介入】っていうんだけど使い方がよくわからないんだよな…」


 そう、俺の固有技能は使い方がわからず宝の持ち腐れ状態なのであった。

 そんな俺にキョトンとした顔でこう言った。


「技能をタッチしたら詳細情報を見ることができますよ?」

「…え?マジで?」


 試しに【法則介入】をタッチしてみると__


◇◇◇◇◇◇

【法則介入:ランクSSS】

 世界の法則に介入する。【単語】【対象】【範囲/レベル】

 使用例:『【設置】【壁】【1 6 3】』これで1m先に横幅3メートル高さ6mの壁ができます。


◇◇◇◇◇◇


 なるほど…あれ?これ土魔法で出来そうな能力じゃね?

 しかも、及ぼす範囲などによってMP消費も変わるとか…


「最悪だ…」

「げ、元気出して!私の爆発系魔術がありますよ!」


 そうだ、俺は普通に戦えばいいんだ。ボス戦はこの子に任せよう。

 そんな風に情けない決意を固めた俺にアンリは恥ずかしそうに言った。


「まあ、技能の負効果デメリットで打った後しばらくの間魔法が一切使えなくなりますが…」

「ポンコツじゃねえか!!」

「いえ!魔法が使えなくとも私にはどんきがありますから!」

「怖えよ!撲殺魔導士ぼくさつまどうしとか勘弁してくれ!」

「撲殺魔導士…かっこいいですね!」

「気に入ってんじゃねーよ!バカ!」

「ば、バカとはなんですか!私は賢いです!」

「ほほーん?じゃあ6×4=?」

「32!」


 やっぱりバカじゃん。ドヤ顔のアンリを見て俺はそう思った。

 ん?まてよ?この問題が解けないなんてこいついくつなんだ?いや、そもそも見た目から中学生くらいだと思うけど…聞いてみるか。


「おい、バ…アンリ」

「今、バカって言いかけませんでしたか!?」

「言いかけてない、そんなことよりお前いくつだ?」

「そ、そんなことより…えっと、まあ私は18ですよ」

「…よく高校に入れたな」


 言うと本人アンリが可哀想なので言わないが正直成長が足りてないと思う。


「おい、今失礼なこと考えてただろ」

「いや、考えてない」

「嘘ですね!今間違いなく私の胸を見てましたよ!」


 胸を見る?俺が?アンリの?ないないないない。

 そう思いチラリとアンリのそれを見るとついつい鼻で笑ってしまった。


「笑った!今笑いやがりました!最低です!」

「いや、笑ってないぞ…っ!」

「声がすでに笑ってんですよおおお!!」


 そんな風にじゃれ合っていると平原に大きな叫び声がこだました。


「っ!なんだ!?」

「わかりません…シュウくん!あれ!」


 アンリが指を指した方向を見ると3人の男女のプレイヤーが森から出てくるところだった。すると、その後ろから巨大な牛頭の化物が飛び出してきた。

 あれはフィールドボスってやつか?


「シュウくんどうしますか?」

「どうするもこうするも決まってるだろ」


 そう、こんな時に使える名言があるのだ。


「三十六計逃げるに如かずゥ!」

「ちょっ!待ってください!置いていかないでください!」

「よぉし!作戦だ、自分でうまいこと逃げろ!これも特訓だ!」

「そんなこと言って、自分だけ助かりたいんでしょ!大体か弱い美少女を放っていくなんて男としてどうなんですか!」

「はっはっはっは!魔法が使えないのなら殴ればいいなんて、脳筋の極みみたいな発言してる癖にか弱いとは面白いやつだな!」

「どうやらぶん殴られたい様ですね!あの牛の前にミンチにしてくれましょうか!」

「グォアアアアアア!」

「「うるさい!」」


 そう言うと俺は【ウインドボム】をアンリは【プロージョン】をミノタウルルスに放つ。すると、フィールドボスであるミノタウルルスは風穴を開けた直後爆発四散して絶命するという、ボスにあるまじき最期を迎えることとなった。

 結果的に俺達が助けた、3人組のリーダーっぽい男がこちらに歩いてきて言った。


「ありがとう、助かったよ」

「ん?ああ、いいぜ。いくら払う?」


 スパァン!といい音を鳴らして俺の頭をアンリが叩く。

 その様子を3人組はポカンと見ていた。見せもんじゃないんだぞ、金とるぞ。

 するとショックから立ち直ったリーダーっぽい男がにこやかに言った。


「もちろんお礼はさせてもらうよ。僕の名前はショウヤ、このパーティーのリーダーをしている。で、後ろにいる男がガスト。そして女の方はバーミヤだ」


 なるほど、ファミレスみたいな名前だな。


「そうか、よろしくな。俺はシュウだ。よろしく」

「私はアンリです。よろしくお願いします」


 俺とアンリが自己紹介すると「そういえば」とショウヤが何かを思い出したように言った。


「君たちミッションボーナスは受け取ったかい?」

「ミッションボーナス?」


 ミッションボーナスってなんだ?

 俺がわからずに首を傾げているとショウヤが教えてくれた。こいつイケメンな上に優しいとかモテるんだろうな…羨ましいぜ。


「それじゃあメニューを開いてみて」


 メニュー…って、なんだこの宝箱のマーク。


「なあ、この宝箱のマークってなんだ?」

「それがミッションボーナスだよ。それをタップしてごらん」


 言われた通りにタップすると3つの白色のバーが現れた。

 むむ…ますますわからん。


「それじゃあその中のどれかをタップしてみて」

「こうか?えっとなになに…【風魔の指輪シルフリング】?装飾品か?」

風魔の指輪シルフリング!?」

「うおっ、びっくりしたー」


 今まで黙っていたバーミヤさんがいきなり大声をあげた。すごいびっくりした。

 え?なに、この指輪すごいレアなの?


「えっと、コレってすごいんですか…?」

「すごいなんてもんじゃないわ。βテストの時この指輪なんて呼ばれてたと思う?」


 なるほど、バーミヤさんはテスターだったのか。それにしてもこの指輪の呼び名か…


「うーん、わかんないです」

「【チート】」

「え?」

「だから【チート】よ」


 この指輪【チート】とか呼ばれるレベルですごいのか!?

 早速鑑定を使用してみると


◇◇◇◇◇◇

名称:風魔の指輪シルフリング【ランクSS】

効果:風系統攻撃の威力30%UP

  風系統耐性30%UP

  風系統攻撃の消費MP50%CUT


◇◇◇◇◇◇


「確かにチートだわこれは…」


 耐性と攻撃力が風系統限定とはいえ30%UPとか…しかも消費MPは50%カットときたもんだ。これをチートと呼ばずしてなんと呼ぶんだろう?バグ?

 俺が指輪の性能にびっくりしているとバーミヤさんが俺の肩を掴む。え?何この展開。は、初めてだから優しく…。


「ねえ、私にその指輪を売ってくれない?」


 はい、違いましたー、ですよねー。いや、期待なんてしてないよ?してないからね!だからそんな冷めた目で俺を見るのをやめてくださいアンリさん。


「うーん…でもなあ…」

「200万出すわ!」

「嘘だろ!? 」


 おいおい、開始数時間で200万って…あ、いやテスター時代のお金は残ってるのか?


「さあ、どう?」

「うーん、魅力的な話ですけどすいません。お断りします」


 そう言って俺は断った。

 バーミヤさんには悪いがこの世界で生き抜くにはやっぱり力が必要なのだ。だから、この力はお金は変えられない。俺はそう思うんだ。

 その旨をバーミヤさんに伝えると渋々ではあるが諦めたようで、若干拗ねていた。そんなバーミヤさんをみてショウヤとガストが謝ってきたが、気にするなと手を振って別れる。


「さて、お互いに能力の確認もできたし。街に戻るか?」

「そうですね!お腹すきました!」

「食いすぎると太るぞ?」

「ここはVRMMO。いくら食べても太らないんですよ!」


 なんとなくドヤ顔のアンリがウザかったので少し脅しをかけてみる。


「肉体は太らなくてもアバターは太るらしいぞ。肉まん魔導士…ぶはっ!」

「塵にして差し上げましょう!」

「わ!おい!まて!ちょっ__!」

「【プロージョン】!!」

「ぎゃああああ!!」


 その日、平原に爆発音と男の悲鳴が響き渡ったという…

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