12
「ある晴れた 昼さがり 市場へ 続く道 荷馬車が ゴトゴト 子牛を 乗せてゆく」ドナドナの歌詞より。
ゴトゴト。
頭をスコップで殴られたせいで今ひとつはっきりしない。これが、
後頭部からの出血はまだとまっていない。荷台を汚すことになるが、一向にかまわないらしい。
向かっている方角でスキー場へ、山下家にむかっているのはすぐにわかった。
あんなに車を求め乗りたかったのに、車に載って山下家に向かうとは。
ゴトゴト。『ドナドナ・ドーナ』の歌が思い出された。
運転席には、熊が乗っていた。違う。
別の橋があるのか。
ゴトゴト。
白い軽トラは屋敷の裏の薪置き場に到着した。
そこには、
そして屋敷の奥から、寒いのは苦手なのか、揉み手をしながら
良枝が言った。
「なにしに、集落の方へ行きよったんじゃ、ほんまにアホな客じゃ」
相変わらず、喋るのは良枝ただ一人、子どもたちは誰一人喋らない。喋れないのか。
薪置き場には、雪が積もった白い薪がたくさん置いてあった。
あれなら湿気て薪として使えないのでは、と巧は思ったが、
使えなくても良かった。
白い薪ではなくて、白い人骨だった。
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