4話 激闘メデューサ戦

 無事にヴァゼラ城にたどり着いたバリー。だが馬と思っていた男、オルフェがメデューサと言い残し力尽きてしまった。さあどうするバリー!


「メデューサだと!?」


 バリーの戸惑う声を聞いて中の魔物が中に優しく誘う様に言葉をかける


「あの人間め最後に余計な事を・・・・。そこにまだおるのだろう?さっさと中に入ったらどうじゃ」


「くっ!ヤツの言う通りだ。メデューサの伝承は知っているが、この磨き抜かれ黒光りした艶のあるロッドをもってしても鏡の代わりは出来ない。どうしたら・・・・」


 バリーが迷っているとメデューサがさらに挑発をつづけた


「ほらほらどうした!ここを通らねばヴァゼラ様の所までたどり着けぬぞ」


「調子に乗っているなぁ。一日中交尾する蛇団子みたいな頭をした、脳天痴女の分際で!・・・・不本意だがアレを使うしかないか」


 バリーは顔を隠し中に入った


「ふっ、ようやく中に入って来たか。さあ、覚悟し・・・」

 

「フッー!フッー!フッー!」


 中に入って来たバリーの頭部はラバーマスクで覆われていた。空気穴は空いているが、空気が完全に循環していないようで、呼吸に合わせて膨らんだり萎んだりしている。それを見てメデューサは驚きの声を上げた


「何じゃその頭は!?」


「ラバーマスクだ!錬金術師がある木の樹液から作った最新素材で出来た傑作よ!本当ならハネムーンでマリアンヌに試すつもりだったが・・・」


「そんな事を聞いてるのではない!なぜ今それを付けた!」


「決っている!貴様の目を見ないようにする為よ!」


「だからと言ってそんな苦しそうな物をつける必要は無いじゃろ!もっとこう目だけ塞ぐ手段があるじゃろうに…。と言うかキサマは視力を封じたまま私と戦う気か?」


「当然だ!貴様は目隠しプレイを知らんのか?」


「目隠しプレイ!?」


「そうだ!相手に目隠しさせ、状況の分からぬその相手をゆっくりいたぶる遊戯だ」


「それではキサマは私にいたぶられたいのか?」


 バリーはマスクごしにも分かる笑みを浮かべて笑った


「ふ、浅はかな考えだな。伝説の魔人がウブな事よ」


「なんじゃと?」


「熟練のMは目隠しをさせても攻め手の動きを察して姿勢を微妙に変えてくるのだ!だが目隠しプレイの醍醐味は相手がナニをしてくるか分からないスリルにある!つまり!攻め手は視力に頼らずの気配を察して相手の動きを読む受け手の不意を突かなければならないのだ!」


「知らぬわそんな事!」


 怒るメデューサを無視して話を続けるバリー


「熟練のSとMの目隠しプレイは五感を全て使った意識の探り合いに発展する・・・。そして攻め手である俺もその戦いで身につけたのだ!視力に頼らず相手の動きを察する方法を!」


 メデューサは怒りを通り越して呆れた


「戯言を」


「それはどうかな・・・」


「ブンッ…ブン・・・シュルン」


 バリーは鞭を鳴らさずに静かにゆっくりと振り回す


「もうよい、ひと思いに引き裂いてくれッ…」


「パン!」


 不意に空気が破裂しメデューサの頬から血が滴る


「これはッ!」


「どうした、そんな大人しくして…私にいたぶられたいのか?」


 動揺しているメデューサにバリーは言葉攻めをしながら鞭を静かに振るう


「シュルン・・・シュルン…ブン、シュルン」


「一発偶然当てた程度で調子に乗るな!」


 メデューサは怒りの任せ尻尾で薙ぎ払おうとしたが


「パン!」


 その初動を鞭の一撃で潰された


「キサマッ!」


「足をモジモジさせて・・・はしたない子だ」


「いかに自在に扱えようと・・・しょせんはムチ!ただの調教道具よ!私を倒す事は出来ぬわぁぁ」


 激怒したメデューサはがむしゃらに尻尾を振るう


「ブゥン!」


 直撃すれば確実に死ぬであろう必殺の一撃をバリーは軽々と躱すだけでなく、その尻尾を指先で撫でてみせた


「鱗でガサガサしていると思ったが。艶のある良い肌じゃないか」


「黙れ!!」


 次々と振るわれる尻尾をバリーは次々とか躱し、逆にメデューサに次々と鞭を入れる


「パシン!!」


 鞭はヘソの下へ強く


「あつッ…」


 「パン!」


 胸の先端を撫でる様に振るわれ


「あふぅ!」


「パチン」


 さらに鞭は器用に回り込み、うなじをはじいた


「あく♡・・・おのれ!うぐッッ…」


 言葉を発しようとしたようとした途端、鞭はメデューサ首に巻き付いた


「誰が鳴いていいと言った駄犬!」


 バリーはメデューサの首を前に強く引っ張った。体格で勝っているメデューサは逆に引っ張り込もうと鞭を掴もうとするが


「シュルン…」


 掴む前に鞭はほどけて、メデューサの首から離れてしまった


「あ・・・」


「パシン!」


 そしてガラ空きになった脇の下をバリーの鞭が襲う


「あぐうん♡」


「まったく・・・ここは貴様の主人の庭先だろう?なのにこんな滅茶苦茶に暴れて・・・全く躾けのなってないペットだ」


「グッ」


 バリーは注意がおろそかになったメデューサの尻尾の先を踏みつけた


「ぐわあ!」


 メデューサは急いで尻尾を引き、バリーを睨みつけながら激しく動揺している


「読めん・・・動きが全く読めん。しっかりと鞭は見えているはずなのに動きがつかめん・・・・何故だ!?」


 バリーは嘲笑う様に言葉を続けた


「これは・・・俺が代わりに躾けておかないとな」


「くっ!」


 この時、メデューサは気づいていなかった。この戦いは目が見えるにもかかわらず、相手の動きも見えぬ盲目な者と――――――


「さあ、お仕置きに時間だ・・・跪け!」


――――――視力を封じてるにもかかわらず、相手の動き全てを見据える者の一方的な戦いであると

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