初恋の人

雨宮先輩は、私の初恋の人。

中学1年生の時、雨宮先輩は中学2年生だった。

イケメンだったのもあり、雨宮先輩は凄く人気だった。

私は、そういう人がニガテだった。

でも、ある日、私が廊下でこけてしまったとき、雨宮先輩は助けてくれた。

こんな暗い私に話しかけてくれた。

笑うんじゃなくて。

その時、雨宮先輩は、私の顔を覗き込んで、言ったんだ。

「雪城って、意外と可愛いよな。」

そんなこと言われたの、初めてだった。

私はその時、雨宮先輩を好きになった。

バレンタインの時、チョコレートを渡した。

笑顔で、受け取ってくれた。

翌日、感想を言ってくれた。

すごくうれしかったんだ。

でも、先輩はそういう人。

特別じゃないって、言い聞かせてた。

先輩が卒業するまで、ずっと好きだった。


そして、今日、再会した。


「えっと…、もしかして、雪城?」

先輩はわたしを遠くから覗くように見た。

「はい!そうです!」

私は元気よく言った。

もしかしたら、今でも、まだ好きなのかもしれない。

だって、先輩を見た時、胸がきゅんと高鳴った。

こんな気持ち、いつぶりだろう。

先輩が私に近づいてくる。

先輩は私より背が高くて、髪はクッキーのように茶色で。

「美人になったなー。」

先輩はあの時と同じように顔を覗き込んで、言う。

私は、顔を赤くする。

「そ、そんなことないです。」

私は視線を逸らす。

「でも性格は変わってなさそうだな。」

先輩は私に後ろから声をかけた。

「えへへ、自分でもそう思います。」

私はゆっくり後ろを振り返る。

先輩は笑顔。

わたしも笑ってしまう。

「なになに、元カレ?」

東郷が私を突きながら聞いてくる。

思わず「へ?」という変な声が出てしまう。

「そ、そんなんじゃない!中学時代の先輩」

私は顔を赤くして下を向いた。

「ふーん。」

東郷はいたずらっぽく笑って見せた。

「では、失礼しましたー。」

私はそういって、東郷を押しながら、厨房から出て行った。




「もう!何であんなこと言うの?」

私はほおを膨らませて東郷に言った。

「別に?気になっただけだし。」

東郷が笑って言う。

私は黙って東郷を睨む。

「お前、雨宮さんの事好きなんじゃねーの。」

図星。

私はプッと吹き出してしまった。

「まさか、図星?」

東郷は笑って言った。

私は黙ってうなずく。

東郷は、「ふーん」と言った。

一瞬、顔ひきつった?

ま、いいか。

私は散歩に出かけた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る